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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月8日・鬼煙作戦・想定シミュレーション

夕や果心居士が半蔵と戦っている頃、茶室上の丘では、重伍が指揮する作戦が最終局面を迎えていた。


幸いなことに、現在、雨は上がっている。


これまで、この作戦にあたっては情報収集と様々な想定戦シミュレーションを検討してきた。


まず、早雲寺に出入りする者が集めた情報によると、


1.茶室は二畳台目


2.水屋は存在せず、茶道口裏に寺から事前に道具を運び込んでおく


3.手前座横下に障子窓があるが格子で覆われており、小石程度の投入しか不可能


4.茅葺の天井の一角に灯り取りの天窓が存在する


以下、想定戦は、いずれも女衆の活躍で守備兵や近習を制圧できたと仮定しての行動についてである。


茶室内は皆丸腰なのだから、堂々と押し入って新型種子島で銃撃したらどうだろう?


ー>この案は茶室に入る躙り口が余りにも小さく一人ずつ這うように入るしかないこと。従って数の優位を確保できず、むしろ一人入ろうとしたところで制圧される可能性が高いとの結論になった。


では、躙り口や天井の明かり窓から銃撃したら?


ー>これも、どちらも小さすぎて射角を十分に取れず確実に仕留めるのは無理となった。


では銃撃ではなく雀蜂の巣を投下したら?


ー>雀蜂は夜行性ではないので効果は未知数。急に灯のある所に放り込まれたら暴れる蜂もいるだろうが、それだけで、確実に仕留めるられるかといえばやはり不確実となった。


そもそも茶道口から堂々と押し入って襲撃したら?


ー>躙り口よりは入りやすいが、やはり扉を開けただけで侵入を察知される上、一人ずつ入る程の間口しかないので、銃を発砲する前に制圧される可能性が高く、そもそも二畳台目の茶室であるから、侵入に成功したとしても二人が限度。歴戦の将相手では分が悪いとの結論になった。


天井から炮烙玉を投下したら?


ー>仕留める事は可能だろうが、遺体の損壊が激しくなり、首を取った証明にはならなくなる可能性がある。


銃の場合でも同様だが、このような密室での襲撃においては、敵将を打ち取ったという後々の証明(つまり首)こそが重要なのだ。


そんな訳で、使用する側にも危険な鬼煙(硫化水素)の採用が本決まりとなったのだが、次なる問題はどうやって投下するかである。


茶室の回りに甕毎投げ込んだら音で気付かれるだろう。


この場合は躙り口から顔を出した人間は確実に仕留められるだろうが室内に籠った相手にまで煙が届くかは賭けである。


その他いくつかのパターンを検討したが何れも一長一短あり、結局、天井の明かり窓に忍び寄り団扇で仰いで甕から鬼煙を室内に送り込む。


という何とも初歩的な作戦に落ち着いた。


鬼煙は空気より重いとはいえ自然落下に任せていたら落ちるまで長い時間が掛かってしまう。


茶室の天井上に降り、甕を下向きに支える役、くり抜いた甕の底から団扇で仰ぐ役、これを室内にいる百戦錬磨の武将たちに気付かれずに行うのである。


本当に成功するかやってみないとわからない。また、この時代の建物は密閉性が極めて低く、どれだけの鬼煙を送り込めば全員を仕留められるかも良くわからないという何とも頼りない作戦である。


しかし、敵の重臣が一同に会する機会はおそらくもうない。最悪、敵と相打ちでも今宵、全員を仕留める。という気持ちだけは皆一致していた。


最終的な作戦方針


1.全員が茶室に入ったのを確認


2.三つ者の施設部隊が大板を使って茶道口、下窓、躙り口を封鎖する


 (三つ者の毒部隊は旅籠に居る伊賀者の対処に向かっており本作戦には参加しない)


3.天窓から鬼煙の投下を開始


  甕支え役二名、団扇役一名


4.大甕三つ投下したら、壺に入れた鬼煙を壺に罅を入れ、直接室内に投げ込む


5.3の途中で気付かれた場合も4に移行する


なんともざっくりとした作戦だが、あとはその時その時の判断で臨機応変にやるしかない。


やがて、夜鷹が一羽、重伍の元に舞い降りた。


本堂の女衆から、任務完了の知らせだ。


(史実での小田原陥落まで、あと28日)

挿絵(By みてみん)

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