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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月8日・箱根湯本の戦い4・半蔵参上part2

怪異二体はとうとう立ち上がり半蔵に向かってきた。その体躯は共に2メートルを超えており、二体とも片手には大きな棍を持っている。


棍の横凪!


いかに急所を痛めたとはいえ、こんな大降りにやられる半蔵ではない。上体を竦めてやり過ごし、横へ後ろへと距離を取ろうとする。


すると、怪異は今度は棍による突きを繰り出してきた。


下腹部を狙ってきたか?


さすがに二度も急所に喰らうのは拙い。

半蔵は鎧を脱ぎ捨ててきたことを少し後悔した。鎧があれば草摺という下腹部を防御する部位があるからだ。


その後も、二体による突き!横凪!の連撃に半蔵は防戦一方となってしまった。


が、実は半蔵はやられっぱなしではなかった。防戦と見せかけて周囲の音を探っていたのである。


そもそも半蔵は怪異など信じていない。幻術の知識もある半蔵は動き出した二体の仁王像を直ぐに傀儡使いの仕業だと看破していたのだ。しかもこの二体で一体かのような鮮やかな連携、傀儡使いは一人に違いない。


この近くに必ず操者がいる。こんな大きな木偶を緻密に操る以上、注意を逸らされないため傀儡使いは虫除けの類を使用している筈なのだ。


だが、先刻より虫の音のしない方角へ何か所か、逃げると見せかけて足を向けるが傀儡使いの気配すら見つけられない。


その結果、半蔵が得た結論は一つ!


墓石で出来た壁の向かって左側、早川への崖そばの草むらだ。


仁王像に押されてるように見せかけて、実は誘導していき、そして、ついにたどり着いた。


梅雨の虫の音の中で余程良く聴き分けないと分からないが、この場所だけ夏の虫エンマコオロギの鳴き声が混ざっていたのだ。


仁王像に背を向け、コオロギの鳴き声のした場所に右足でかかと落としを食らわせた。


『ぐえぇぇ・・・』


草むらから一人の男が姿を現した。踵は背中下を直撃したらしく腹下を地面に強打したのだろう、悶絶している。


そして男の手の指には10本とも夜間の保護色である黒い糸や縄が括り付けられていた。間違いない、こいつが傀儡使いだ。


「エンマコオロギにはちょっと季節が早かったな」


それにしても


「こんな位置から、あんな大きな木偶を操っていたのか。なんて凄腕の傀儡使いだ」


半蔵は思わずそう呟いた。その刹那!背中に極大の衝撃が走った。あまりの威力に吹き飛ばされながら振り向いたそこにいたのは、棍を横凪に払った二体の仁王像だった。


「馬鹿な?操者は倒した筈だ」


驚愕の眼差しを向けていると一体の仁王の顔がニヤリと揺れた。その口からは4本の牙がみえる。


「!!まさか、風魔の小太郎!?」


半蔵は信じていなかったが風魔小太郎には2メートルを超える巨躯と4本の牙が生えているという噂があったのだ。


崖から空中に放り出された半蔵は、小太郎と思われる化け物を睨みながら早川に転落していった。


(史実での小田原陥落まで、あと28日)

挿絵(By みてみん)

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