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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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幕間・現代での栄光

俺、風間孝太郎。中高進学校を首席で卒業、大学はノーベル賞受賞者教授がいる超一流大学の化学科に現役合格。院に進む者が多い同級生の中、自分は日本を代表する大手重化学工業メーカーに就職した。


ゼミの教授からは、院に進むようかなり勧められた。何しろ俺は、基礎化学は勿論、応用化学、無機有機化学、電気化学、生物化学、石油化学まで手を染めていて、ほぼ毎晩研究室に寝泊まりという生活だったのだ。


正に「化学の虫」のような存在だった。よく一般教養で留年しなかったものだと今でも思う。


しかし、院卒でなければ入社できないと噂の大手重化学工業メーカーに、学部卒で内定を貰えたというのが決め手になり就職を決めた。


さて、そんな俺の社会人生活だが、入社1、2年目は全国の支部支社で営業を担当した。これは例え院卒でも必ずやらされる。一人前の重工マンになるには、まずは一人前の社会人に、そのためには誰とでもコミュニケーションできる人間力の構築からというわけである。


実はこの営業、研究に明け暮れてきた理工系出身者には苦手にしている人も多かったのだが、自分はあまり苦にならなかった。


全国津々浦々で地元の先達の話など、研究室に籠っていては決して知ることのできない話を色々と聴くことができたからだ。


化学バカだった自分にとっては正に目から鱗のような貴重な体験だった。


そして、入社3年目、晴れて社内随一の俊英が揃う都内の研究所に配属された。


俺が配属されたのは横浜総合研究所。社内トップの研究機関だ。そこで所内でも最もベンチャーな気風の研究チームに加わることになった。


このチームの実質トップは一年先輩の藤堂香織。落雷エネルギーの蓄電を研究するチームのリーダーだった。脱炭素の世相を追って作られた全く新しいチームだったので入社4年目の香織でもリーダーになれたのである。


香織の専門は電磁気学だという。落雷によって物質が磁力を帯びる事はよく知られているが、磁力として蓄えられるエネルギーは雷一発のエネルギーの1%にも満たないという。


そこで、彼女は帯電性が高くなおかつ雷の高圧にも耐えうる物質の研究開発に没頭していた。自分も学生時代以来の研究室寝泊り生活をおくりながら開発に参画した。


当初二、三名で細々とやっていたこの研究だが思わぬ支援者が現れる。それは大手自動車メーカーだ。


EV研究を進めていた自動車メーカーにとって、超急速充電の開発は自動車業界でも激しく凌ぎを削っており、グループ内企業で高帯電物質の研究をしていた俺達のチームと共同研究することになったのだ。


この結果、落雷エネルギーの蓄電という当初の目的は外れ、蓄電充電に特化して研究を進めていくことになった。


この研究、結果的に大きな成功を収めることになる。従来のリチウムイオン電池に変え、より高容量低コストのナトリウム電池の開発実用化に成功したからだ。


共同研究になって以降、重工側からの主な研究メンバーは香織と俺だけだったので、社内でも注目度が高く、「将来、ノーベル賞とるんじゃないか?」などと大げさな噂になってしまう程だった。


ところで、研究中だが自動車メーカー側の研究員と徹夜することももちろんあったが、やはり多かったのは社内で香織と二人で深夜まで過ごす日々だった。


そして、男女が連夜二人で過ごしていたら、いくら二人とも研究ホリックとはいえ、男女の雰囲気にはなる。


やがて二人の仲は社内で公然の秘密となり、婚約、そして社の専務取締役の仲人で結婚という話になっていった。

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