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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月5日・箱根湯本・外郎(ういろう)屋

ここは箱根街道裏道の外郎屋。本店は小田原にあるのだが、戦争の影響で本店は閉店、湯治客相手のここ湯本の支店も猿が早雲寺を本陣にした勢で全くお客は来なくなってしまった。


だが、この店にはもう一つ裏の顔がある。それは風魔の隠れ家という顔である。


店の主の名は鳶沢甚内。言うまでもなく風魔一族の者である。


今日はここに風魔のお頭の特命作戦・鬼煙作戦に現場指揮官である重伍が訪れていた。


「重伍、雄二様より指令が来た。茶会が開かれる場合は雨天でも決行だそうだ」


『やはり、そうなりましたか。もう準備は整ってます。天下人の猿の命を取れるんだ。日陰者の俺たち忍びには望むべくもない死に舞台でしょう』


早雲寺の兵が減り湯本自体の警戒も緩くなっていたので、重伍は鬼煙を弁天洞窟から湯本近郊の洞窟まで移送し終えていた。


「そう死に急ぐな。当日が雨でないことを祈ろう。さて、早雲寺の兵は女衆に任せるとして、問題は伊賀者だな」


『伊賀者のアジトは判明してるんですかい?」


「あぁ、全部で三か所ある。一つは、早雲寺の近くの旅籠だ。そこに5人ほど3日前から泊ってる。他は石垣神社に浮浪者を装って5人たむろしてる。あとは、街道沿いの民家を乗っ取って5人住んでいる。」


『全部で15人ですか。で半蔵は何処にいるんです?』


「奴は未だ尻尾を掴ませておらん。当日、狸の近習としてくるのかも知れんな。ただ藤林のほうは石垣神社におるのを確認している」


「それとな、近頃、湯本で世鬼を見たという報告があった」


『世鬼?毛利の?』


「だな。三つ巴が猿の相談役として以前呼ばれたという話があっただろう。それに付いてきたのではないか?」


『伊賀者に加えて世鬼ですか。厄介ですね』


「まあ、世鬼に関しては三つ星の人間に手を出さなければ、直接手を出してこないとは思うがな。伊賀に情報渡す位はやるかも知れん」


『我らは三つ者入れて30人です。なんとかなりそうですかね』


「三つ者が毒に長けていることは向こうもよく知っておろう。出来るだけ肌を出さない格好をしてくるだろうな。ただ、我らの狼使い、カラス使いは知られていまい」


『え?カラス使いも出すのですか?』


「うむ、本来夜行性ではないカラスだが相手を覚えさせれば夜でも襲撃可能だそうだ。すでに民家にいる奴らと、石垣神社の奴らはカラスに覚えさせようと動いてるぞ」


「カラスというのはな、一度覚えれば、どう人着を変えようが、変装しようが見間違えないんだとよ。そんなのに夜襲われたら伊賀者もたまったもんじゃないよな」


『なるほど、となると厄介なのはやはり半蔵!』


「それなんだが、雄二様の指示で強力な助っ人が来るそうだぞ。じきに重伍、お前の処に現れるかもしれん。驚くなよ」


『某も三つ者相手に舐められずに差配してきた身、どんな化け物でも驚きゃしませんよ』


「だと、良いがな」


その時、外から声が掛かった。


『もし!もし!夜分すいませんが、外郎を分けてくれませんかな?』


「なんだい、こんな夜中に?」


『それが、夫が咳が止まらなくなってしまって、かなり苦しそうなんです。お願いします。外郎を分けてください』


「咳か、痰は絡んでおるかな?」


『えぇ。痰も出ております』


「なら、こいつが良かろう。直ぐに飲ませてやりなさい。明日からは朝と晩に飲ませて」


『有難うございます。ではお題はこちらに』


「なんだ北条札かい。銭は持ってないの?」


『すみません。今はそれしか・・・』


「まあ仕様がない。今回だけだよ」


女は薬を受け取り帰っていった。


そして、彼女が渡した北条札の裏には暗号で、


茶会、8日 21時 猿、猿子、狸、藤


店を閉め奥に戻った鳶沢が雄二に告げる。


「日にちが決まったようだ。8日 21時。出るのは猿、猿子、狸、藤」


『瓜は来ないのですな。三つ巴もないとならば、世鬼は心配ないでしょうな』


「そうだな。だが油断はするなよ。藤と三つ巴は仲が良いと聞くからな」


「神社はカラス。民家は狼。旅籠は寺に近いから三つ者と考えとる。重伍の方でもよく検討し、次善の策があったら知らせてくれ」


『分かりました。3日後ですな。至急準備に入ります』


(史実での小田原陥落まで、あと31日)

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