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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月5日・足柄の庵

足柄山中の小さな庵、周囲は森と竹林で囲われた落ち着いた隠居所のような趣がある。因みに、この庵の裏手には洞窟があり、その先は風魔の里である。


この庵の主の名は北条幻庵という。北条氏の初代・早雲の息子であるが、本物の幻庵は当に没しており、現在は忍び働きを引退した歴代の風魔小太郎が幻庵と称している。だが、隠居の身であり表舞台に出ることは全くない。


今、虫除けの煙棚引く庵の一室で二人の男が向き合っていた。


幻庵が口を開く。


「(山上)宗二は猿に直ぐに殺されたようだな」


『そのようで御座いますな。耳と鼻を削がれてから首をはねるという惨い殺し方だったそうです。』


「猿と言われるだけあって野蛮な奴じゃ。尤も宗二も上手く取り入って、茶に毒でも混ぜてやればよかろうものを、使えん奴じゃ」


『良くも悪くも、融通の利かぬ男でしたからな。(茶の湯の)手前は見事なものでしたが』


「ほ、ほ、ほほ、その方に茶の湯が分かるとは、驚いたわ。妖の術にしか関心がないものと思っておったが」


『人を妖すには、何者にも化ける事が出来なければなりません。勿論、茶人にも』


『ところで毒と言えば、早雲寺の女衆は猿共に信用され、今では甘味を出しているそうです。ヒ素入りのね』


既に猿も何度も食しているようですし、猿の女の中には調子を崩して寝込んでいる者もいると聞きます。後一月も続ければ猿も仕留められるのではないですかね』


「小太郎の考案した菓子だったな。あ奴も南蛮と交渉したり中々の働きぶりじゃな」


『誠に。今は城内で見たこともない武器を秘密裏に作っていると聞きます。或いはこの戦勝てるかもしれません』


「うむ。農作業の始まる時期に日ノ本中から20万もの兵をかき集めて来たのじゃ、一月も籠城すれば諦めて帰るかと思うたが、猿には農業など分らぬのかの?しかし、こうなっては勝つか負けるかよの」


『確かに、昨日は奥州の伊達も猿の所に参陣したそうです。これで、猿の敵は小田原のみですからな。あんな大軍動員しておいて、今更和睦など受け入れてはくれんでしょうな』


「というわけでな、雄二から其方に仕事の依頼が来ておる。相手は伊賀の半蔵だそうじゃ。どうじゃ、恐ろしいか」


『御冗談を。ただ飯喰らいが長く続いて肩身が狭く思っておった所です。半蔵如き箱根の湯に変えてくれましょう』


「ふふふ、其方らしい物言いじゃの。では、早々に出立して重伍と合流してくれるか?」


『御意にございます』


(史実での小田原陥落まで、あと31日)

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