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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年5月10日・恐怖の報酬は勝利!

この日、二曲輪丁助は新型炮烙玉製作要員30名を作業場に集めていた。


氏照様から作業員を選出して貰って以降、作業工程を教えたり、相互に確認しあったりで、最早全員が顔見知りである。


そして、鋳物師・治郎右衛門達の奮闘でついに全作業場に蒸留器が揃ったのである。


今日は、作業中最も取り扱いに注意を要する硝酸エステルの恐ろしさを実際に見せ注意喚起するデモンストレーションを行う。


既に丁助の元にはガラス器に入った硝酸エステルがある。


ここにあるのは、孝太郎が指導員を育成する際に作成したものだ。丁助も最初にこの爆発を見たときは目を疑った。


『よく見てくれ、これが今回の作業の最終完成品だ!非常に危険な液体だ!今から、こいつの威力を見せる。とくと目に焼き付けておいてくれ』


丁助はそう言うと、一枚の小さな紙切れを取り出し、その下半分を硝酸エステルに浸した。


更にそれを慎重に運び屋外に設置されたの矢の的に留めた。


『今から、弓であの紙の湿った所を撃つ。物凄い音がするが決して驚くな』


弓に矢を番える。弓も矢も特に変わった所のない一般的な品物だ。


50メートル程先の的に狙いを定める。丁助は弓に関しては風魔一の使い手である。


発射!


直後、パン!!! およそこの世界では聞いたこともないような爆音が轟いた。


種子島や大筒の発砲音とも違う異質の音に、皆、耳目を塞いでいる。中には蹲っている者もいた。


やがて、音が収まり、落ち着きを取り戻した全員が見た的、いや元的だった場所は的が貼ってあった土壁が抉られた状態で残っていた。


『見たか!これがこの液体の力だ。あの少量でもこれだけの威力があるのだ。大変危険な代物だが、何度も教えた通り、作業を間違わなければ、強力な武器となる。


皆の力でこれを使いこなし、我らを勝利に導こう!』


最初は怯え気味だった皆だが、確かにこれを使用すれば例え何十万の大軍だろうと蹴散らせるのでは?と意気上がるのだった。


この日、城下の全四か所の作業場で同様のデモンストレーションが実施された。


あまりの轟音に領民からも不安の声が上がったが、風魔の者により『大筒の発砲に失敗した』という流布が流され、この偽情報は、城下に潜む敵の忍びを通じて包囲軍にももたらされた。


(史実での小田原陥落まで、あと57日)

諸般の事情で出番がなくなった丁助達ですが、せめてひと花咲かせてやろうよ、一話登場させました。

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