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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第9章 旭日昇天・女直編
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1600年1月11日 統一フルン

羽黒党や真田衆が集めたワルカ部の様々な情報を元に、炭団やアイヌから伝来した軒下のないチセ式の住居で冬を過ごし、ワルカ攻略方法を検討していた時、羽黒党から連絡が入った。


『申し上げます。フルン3部連合軍がワルカを制圧しました』


大陸の冬の寒さもものともせず、ホイファ・ウラ・イェヘ連合軍はワルカを攻略、盗賊ことワルカ沿岸部の領主だったロトゥンなる者も捕らえ、朝鮮に引き渡したという。更に情報はもう一つ、


『マンジュが捕らえていたハダ首長メンゲブルをハダに帰しました。どうやら明国から抗議があったようです』


さすがのマンジュも明国の意向は無視出来なかったようだ。首長を帰したということはハダから連れ去った民衆も帰還させるのだろうが、それでも、ハダが以前の力を取り戻すには時間が掛かる事だろう。


そして、新年あけて11日、と言っても女直は旧暦を使用しているので彼らにとってはまだ12月だが、ホイファ首長バインダリ、ウラ首長ブジャンタイ、イェヘ首長ナリムブルが揃ってウェジを訪ねて来た。


イェヘとウラは当初、秋田実季のいるネン川の拠点に向かったが、ウェジが本拠だと教えられ、ホイファと合流しやって来たそうだ。


首長が3人も揃ってやって来たとあって、日ノ本側も征西将軍・伊勢直雷・甲斐姫夫妻、津軽為信と重臣総出で出迎えた。


3首長は平伏して待機し、歩き巫女の通訳で頭を上げた。


『此度は女神様に拝謁でき恐悦至極に御座います』


代表して一度、ウェジに使者を派遣しているホイファ首長バインダリが挨拶する。


そうなのだ、日ノ本側の中央に鎮座しているのは征西将軍・伊勢直雷ではなく、甲斐姫なのである。理由は勿論、彼ら女直の女神信仰を利用する為である。




*ウェジ 甲斐姫*


「うむ、我も其方らに会えて嬉しいぞ。統治する者がなく我の民衆が苦しんでいたワルカの地を平らげたそうだな。誠に大義であった」


『はは、有難きお言葉でございます』


「我が地上に降り立ったのは、我の民達が余りにも苦境に立たされ飢えに苦しんでいたからだ。其方らも互いに相争っていたそうだな。今後はフルンとして一体となって励むように。そうでなけれな文殊マンジュ等と言う妖の信仰に狂った者共に滅ぼされてしまうぞ」


マンジュと聞いて3首長は一様に動揺を見せた。やはり3人とも急拡大するマンジュは脅威なのだろう。


『異教に染まり女神様に弓を引く逆賊マンジュは必ずや我らが討伐いたします。その為にも女神様の御助力を賜りたく…』やはりマンジュに対抗するには3部だけでは不安なようだ。


『フルンの残る1部ハダの首長もマンジュから逃れ首長に復帰いたしました。私より説明し大至急女神様にご挨拶に来させます』


イェヘの首長が補足する。


ハダが一度滅んだのはこのイェヘ首長ナリムブルの策略が切っ掛けだった筈だが良く言えたものだ。「ふむ、フルン4部が一つに我の元に一つに纏まる事、それが我が其方らを支援する大条件だ。それは分かっておるな」


『『『勿論でございます』』』3人は声を揃えて即答した。


「我が降臨したのはこの地より海を越えた東にある日ノ本という日出国である。其方らが一つに纏まりマンジュに対峙する事が明らかになれば、日出国より援軍も来よう。先ずは其方らの決意の程を見せてみよ。ホイファの者よ。其方は以前来た時、首長の座を明け渡しても良いとまで言ったそうだな。他の2人は如何か?」


これは、ウラもイェヘも知らなかったのだろう。二人は明らかに動揺している。「2人はそこまでの覚悟はないか?それは不安だの。では、ホイファ首長バインダリよ。人間の長の地位は人間が相応しい故、其方は今後ともホイファ首長に留まれ。但し、ウラとイェヘが当てに出来ないとなれば不安も残ろう。よって、我の側近、この大地の女神バナムハハをホイファに遣わす。春になり日出国より援軍が来るまで耐えて見せよ。さすれば勝利はホイファの上に舞い落ちるだろう」


私はそう言って通訳を務める歩き巫女を手で示した。彼女には女神役としてフルンの地に赴くよう予め伝えてある。


ここまで聞いてウラとイェヘも慌てだした。


『お、お、お待ちください。某も首長の地位に拘泥している訳ではございません。首長など女神様の僕の地位に比べたら遥かに小さき事でございます。何卒、我がウラにも温情を賜りますようお願い申し上げます』


ウラ首長ブジャンタイは一時期マンジュの捕虜になった時期があると聞いている。そこで、どんな目にあわされていたかは不明だが、女神に見捨てられるのは絶対に避けたいようだ。


『我がイェヘも同様に御座います。どうか我らも女神様の僕の地位に留まる事をお許しください。その為なら、首長の座であろうが何であろうが女神様に献上いたします』


イェヘも必死だ。女神の役なんて最初は面倒くさいと思っていたが、段々楽しくなってきてしまった。


「ならば、二人とも行動で示してみよ。我への献上は暖かくなってからでよい。冬の間に民を慈しみ飢えさせることなく過ごさせよ。民は戦の際には兵士となる者達だ。くれぐれも飢えさせることがないようにな。各地を侵し人を連れ帰っていると言うマンジュにはそのような真似は急には出来ぬ筈だ。人は連れていけても食料はそうは増えんし、マンジュの地で産する食料が急に増える筈はないからな」


そう聞いて、皆、納得したらしく


『『『女神様のおっしゃる通りに御座います』』』


と声を揃えた。


「では、バナムハハはホイファに行くが其方らの地全てを見ている。その事、努々、忘れる出ないぞ」


これは脅しでもなんでもない。実際、歩き巫女はウラにもイェヘにももう入り込んでいるのだ。バナムハハはフルン全土を見通すことが可能なのである。


会見を終えたあたしは思った。


「神様役がこんなに楽しいだなんて。癖になりそう。マリアちゃんもこんな気分だったのかしら?」

ヌルハチがマンジュ国を名乗ったのは事実ですが、マンジュ=文殊菩薩説は、清朝成立後の後講釈というのが有力なようです。


書いてみる物ですね。応援ポイント付けるのお願いしたら、日刊ランク10位になりました。

過去最高順位です^^

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