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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第9章 旭日昇天・女直編
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1599年8月1日 大慶油田

掘削については全く知らないので、完全ファンタジー回とさせてください。ラコスト重力計についても超精密器具ですので、こんなに都合よく簡便に使用出来たりはしないでしょう。

昨年から掘削を始めた油田だが、グワルチャ族がガソリン運搬に協力してくれたこともあり、予定より深く掘る事ができた。極寒の冬季は作業を停止せざるを得なかったが昨年の間に深さ300メートルまで掘り進めていた。手作業の上総掘りの2倍の速さだ。


今年は4月から作業を再開して、更に400メートル、深さ700メートルまで到達した。やはり鉄筋で組んだ採掘リグにドリルの先端に金剛石、つまりダイアモンドを使用しているのが大きい。


この工事を差配しているのは風魔の山師部隊の長・二曲輪佐助だ。元は北条氏照が冗談交じりに名付けた二曲輪という姓だが、今では風魔の技術部門の中では立派な一門となっている。




*大慶油田 二曲輪佐助*


「大分、掘り進んだな。この辺りで再度ラコスト重力計で重力を図りたいな」


副官の二曲輪伊助が答える。


『そうですな。深さ700メートルですからな。値に変化があるかもしてませんね』


ラコスト重力計は重力値を教えてくれるだけで、石油があるか否かを教えてくれるわけではない。だが、その示す値によって地下の状況を示す指標になるのだ。要するに地下が岩盤か、液体層が存在するかを判断する指標になる。今回は液体層がある可能性が最も高い地を掘っているので、掘削前の値と比較することで液体層に近づいているか判断材料になるのだ。もし、値に変化がなければ石油層はまだまだ遥か下ということになり、掘削限界を超える地下にあるという事になる。


一旦、掘削ドリルを引き上げ、穴の上に鉄筋で枠を作り、ラコスト重力計を設置する。700メートル分の岩盤が取り除かれたことで、石油層が直下にあればラコスト重力計が示す値に変化が出る筈だ。


万全を期して前回同様、満月の快晴の日に測定を実施した。結果は測定値に微妙な差異が観測された。わずか700メートル掘っただけで変化があったのである。液体層まではかなり近いことが予想された。


ここからはドリル掘削は止め、従来の上総掘り掘削を行う。上総掘りとは簡単に言えば、地下を槍で突いて掘って行く掘削法である。手動の時は水車のような大きな車を用意しこれを人力で踏み、車の回転力を槍の上下運動に変換して行うが、今回はモーター回転で行う。槍の先はダイアモンドが装着されている。


何故、こんな事をするかというとドリル掘削だと回転による摩擦熱が発生し、万一油田に到達した場合、発火の危険がある為だ。


「取り敢えず、一歩前進だな。伊助」


『左様ですな。後は液体層が臭水である事を祈るのみです。万一、水や温泉だったら、今までの苦労が・・』


「ははは、それは大丈夫だろう。何しろ頭領がここに油田があると太鼓判を押していたんだから」


実際、頭領の発言は盲信し大陸の凍てつく冬を超えて作業する程の重みがある。何しろ、頭領が居なければ、ラコスト重力計もエンジンもモーターも鉄筋も存在していなかったのだから。



*明国・遼陽 総兵官・馬林*

大慶油田で二曲輪一門が奮闘している頃、明国・遼東地方の総兵官・馬林の元に密書が届けられていた。内容は昨年来の裏帳簿、つまり、税の横領の明細である。


馬林も貂皮や人参など高価な品を懐に入れていたが、この明細には自分以外の横領者のリストと品、量が書かれている。特に自分と敵対している太監たいかん高淮こうわいの横領額が突出している。明の皇帝・万歴帝の寵愛を受けている高淮こうわいだが、流石にこれだけの横領が発覚したら無事では済まないだろう。密書には明語で文が添えられていた。そこには、


1.マンジュによるフルハ族への狩猟圧力を止めさせろ。


2.貂皮は倭寇から購入せよ。


3.購入の対価は貂皮一枚に付き、明人、マンジュ人、朝鮮人の奴隷50名。


奴隷は男なら成人、女なら5歳から10歳の身よりのない人物とせよ。


と書かれていた。


『さもなくば、高淮こうわいにも同様の裏帳簿を送る』


と結んであった。


高淮こうわいの元にこれが届けば間違いなく自分を弾劾する材料に使用するだろう。それだけは止めさせなければならない。


「マンジュに奴隷を捕らえさせ、倭寇と取引させる。これしかないな」


馬林は遼東の総兵官だ。武力でマンジュを脅す事は可能なのだ。しかも、フルハを脅すより確実に貂皮を手に入れる方法があるとなれば、マンジュは容易に靡くだろう。


馬林は同じく横領のリストにあった副官達を呼び、マンジュへの密命を指示した。

挿絵(By みてみん)

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