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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第9章 旭日昇天・女直編
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1599年5月10日 活躍するガソリン

一年飛びます。

昨年、倭肯河(わこうが)までの運河を建設した秋田隊は、厳しい大陸の冬を過ごした後、倭肯河(わこうが)→スンガリ川→ネン川を通り、大慶油田までの運河建設地にたどり着いていた。既に測量部隊が運河建設経路を確定しており、大慶油田までの20㎞を発破作業していくだけである。当初はスンガリ川からフラン川に入り大慶油田まで50㎞の運河を建設する予定だったのだが、フラン川の水量が意外と少ない事が分かった為、スイフン川の上流からネン川に入り油田まで20㎞の運河建設に変更になったのだ。ネン川は漢字で嫩江と書きスイフン川最大の支流であり水量も豊富だ。


尚、大慶油田は地下深い位置にあり発破作業で油田が誘爆する危険はない事が分かっている。




近代日本は満州に傀儡政権を立てながら大慶油田を発見できなかったことから、巷ではこの油田は地下千メートル級の深い位置にあると思われているが、事実は少し違う。当時の日本はオランダが植民支配していたインドネシアの油田に注目しており、満州での油田探索には力を入れていなかったのだ。既に稼働している油田が南にあるうえ、宗主国オランダはドイツによって滅んでいるとなればそれも当然だろう。記録にある限り、広大な満州を事実上支配していた関東軍がこの地で油田探索をしたのは僅かに二か所、何れも大慶油田とは遥かに離れた地だったのだ。




但し、地下千メートルは言い過ぎにしてもこの油田が地下深くにあるのは間違いない。運河完成を待たず既に昨年から風魔の最精鋭山師部隊が油田探索を実施している。これまでの油田は地表に油が湧きだしている場所にあったが、大慶油田は地表には湧き出していないので探索が必要になる。探索法は現代でも使用されているラコスト重力計を用いた重力探査だ。重力は日常の生活では誤差の範囲で気が付かないが、地下の地質の状態で微妙に値が異なるのである。海の潮汐も影響を与える事があるが、幸いここ大慶は内陸なので今回は無視できる。


ラコスト重力計は簡単に言えばバネと重りで重力を測定する装置だ。無音銃ことエアガン以来のバネの技術研鑽がこの現代でも通用する測定器を実現させたのだ。


大将軍より凡その場所は指定されていたとは言え、昨年の調査で既に3か所程掘削候補地が見つかっており、中でも最有力とされる候補地で昨年から掘削が始まっていた。従来の掘削は”上総掘り”と呼ばれる完全手動の方法だったが、大慶油田は掘削速度を優先して、ガソリン駆動の掘削機が使用される。つまり、石油を掘る為に石油を使用するのだ。掘削機はタンデム型ヘリコプターにより持ち込まれ現地で組み立てられている。ガソリンは樺太のカタンブリ油田からアムール川→スンガリ川→ネン川を通って持ち込まれた。


尚、アムール川下流はこの時期まだ凍結している部分もあるが、砕氷に使用されたのはガソリン駆動のホバークラフトだ。水陸両用のホバークラフトは氷上を疾走し、自らの重量で砕氷していったのである。


これ程まで石油を消費して大慶油田の採掘に注力するには訳がある。それは、日ノ本からシベリアに向かう丁度中間点にこの油田が位置しているからだ。如何に大将軍・直光が船舶の構造に熟知していようとこの時代の設備で航空母艦は造れない。仮に作れたとしても流石のシベリアの大河達も航空母艦が航行できるほど広くはないのだ。事実、史実では日露戦争時のロシア・バルチック艦隊は黒海から遥々アフリカを廻って日本海までやって来たのだ。


将来、日ノ本から航空部隊が出撃するとしたら第一の給油地が大慶油田、第二の給油地がバイカル湖畔の油田、そこから、チュメニ油田を取るまではこの時代はモンゴル族が支配している筈の現代カザフスタンの油田を経由してシベリアを東征してくるロシアと当たる事になるだろう。

挿絵(By みてみん)

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