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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年4月18日・カタパルトはバリスタだ!

昨日の大筒試射に続いて、今日は新型炮烙玉の射出機の視察を行う。


といっても、まだダイナマイトはないので、使うのは石槍だ。


昨日、木地師、木工師から射出機の試作品ができたと連絡があったのだ。


4月5日に新型銃を依頼する時に、一緒にカタパルトの開発も頼んだのだが、僅か二週間で試作品が出来たという。


カタパルトの説明時に呉の資料館で見た投石器の外観をスケッチし、トレビュシェットなら重石の落下エネルギーを利用するなど、それぞれ説明を付けて渡したのだが、彼らが採用したのはバリスタだった。


それもその筈、日本には和弓という伝統ある武器があり、弓師という専門職もいるのだった。そして、バリスタは弓を横にしたような形状である。


木工師らは、俺から説明を受けた後、真っ先に弓師に協力を仰いだらしい。


『お初にお目にかかります、ニ曲輪様、手前、弓師の源三と申します。此度の投擲器を指揮設計した者です』


「二曲輪猪助だ。乏しい資料からの制作、さぞや苦労しただろう。今日はよろしくお願いする」


源三の案内で早速、試作品を見せてもらう。


資料館にあった物より一回り小さいが、俺がスケッチした形を良く再現してある。


スケッチについて余談だが、最初は毛筆で描いていたのだが、説明しながら書き加えたりするのに不便なので、最近は竹炭を縦に細く割って使用していた。


それを見ていた細工師達が細い竹炭を丸く加工し、その周りを竹で覆い上下を紐で縛った物を作ってくれた。これ、鉛筆だ。いや、炭が短くなったら、後ろから押して出せば良いから、シャープペンシルである。いやはや彼らは本当に器用である。


やがて、源三の説明が始まった、


『本器の骨格は杉を使っております。弓の部分は芯は竹ひご、外部は竹です。所謂、弓胎弓ひごゆみというやつです。弦は、頂いた鯨の腱を使用してます』


続いて、もう一台の元に行き


『本器も骨格は杉を使っております。弓の部分の芯に頂いた鯨の腱を使用してます、外部は同じく竹です。弦は従来の弓と同様の麻紐です』


『事前の試射ではどちらも400m超えの距離を出してます。では、ご覧に入れます』


試射が始まるようだ、目標は城内遥か先の農地、確かに300m以上の距離がある。事前に農地内の人払いは済ませてあるそうだ。


『発射!!』


源三の号令の下、二台のバリスタから拳大の大きさの石を付けた槍が飛び出し、


見事、農地の中に投下された。


「お見事。短い時間でよくここまで仕上げたな」


『有り難うございます。何か気が付いた点などございますか?』


「うむ。射程距離を可変できるよう調整できるか?300mから500mで都度相手の動きを確認しながら調節できれば使い勝手もよいのだが」


『それは弦の引き具合で調節できると思います。ただ距離を500mまで伸ばすとなると、しばらく検討させてください』


「うむ、よろしく頼む」


本来のバリスタとは構造が異なるが、元々のバリスタは矢を撃つ武器だった。そのため着弾時にもある程度の威力を保っていないと目標に刺さらない。


だが、今回は焙烙玉だ。射た物自体が爆発するのだから、バリスタに求められるのは、射程のみといって良い。


源三達は内容をよく理解して設計構築してくれた。


これは、まさに和製バリスタと言って良いだろう。


あとは、諄いようだったが、打ち出すのが新型炮烙玉であること。


そのため、発射に失敗した場合、現場で爆発が起き非常に危険であることを再度伝え、安定性の向上とメインテナンス要領を文書化するよう頼んで、試射は終了となった。


(史実での小田原陥落まで、あと79日)

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