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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第8章 旭日昇天・ヌエバエスパーニャ編
245/272

1600年12月1日 日ノ本・ロスアンヘレス州

*征東部隊・先遣隊長・志賀親次*


半年前の先住民集落の訪問が半年経ち、集落に残した者達は現地の言葉を習得した。流石は歩き巫女。そして、他の3名も歩き巫女から言語習得適正アリとされていた者達だ。


今では、彼ら先住民がトングヴァ人という人達であり、広大なロスアンヘレス周辺に100近い集落が点在し交易しながら暮らしている。という事がわかっている。


彼らの住む地の西にはチュマシュ族なる人々が住んでおり、チュマシュ族は漁を行うという。集落に残して来た歩き巫女以下3名はこうした人々とも交易し、先住民に日本語を教えている。集落の者からは彼ら4名いや儂らも含めてだが”精霊”と思われているようだ。記紀に書されているカグツチ(軻遇突智)の様なものだろうか?”精霊”と呼ばれることになった理由は化け猫から助け傷を癒した母親が、”彼らは生命の恵み太陽の精霊に違いない”と言った事だという。実際、彼女は化け猫に食べられる寸前だったのだから、そう思われても仕方ないか。


儂は将軍様の命令で先月から南部利直殿と手分けして、最初の集落の者、通訳の4名の先遣隊の案内で各集落を廻っている。


「南部殿、貴殿が尋ねた集落は如何であった?」


『皆、歓迎してくれます。一度、鰐が集落に入り込んだ場面に出くわしまして、種子島で脅かして撃退したら、その集落では神のように敬われてしまいました』


若い南部殿だが、兵を束ね案内付きとはいえ未開の地の訪問を良くやっている。


「その集落でも鰐は食べんのか?」


『ええ、恐ろしいので戦わないようですね。餌をやって帰って貰うのが通常だとか』


この辺りの者達の武器は弓だ。それも日ノ本の弓と比べると粗末な品だ。矢に毒を塗って使うそうだが、あれでは鰐や化け猫(クーガーと呼ぶらしい)のような大型獣には歯が立たないだろう。


『あと、どこの集落でも火を熾せる者は限られていて、その者は上位の者とされていました』


うむ、儂等赴いた集落でも、火打石や大将軍様から賜った圧気発火具ファイアーピストンで誰でも簡単に火を熾すのを驚いていた。


「やはりか、その辺りも儂らが”精霊”と思われる由縁かもしれないの」


『そうですね。あとクーガーというあの化け猫を退治した話は何処に行っても知れ渡っていました。クーガーには女子供が襲われることがあるらしく、鰐以上に恐ろしい存在だそうです』


「そうか、ところで鷹は見つからんか?」


『いや見つかりませんな。鷲なら良く見かけますが』


且つて武家の嗜みだった鷹狩りをやりたかったのだが、鷹が見つからないのだ。


鷲は警戒心が強く全く餌付けに成功していない。こればかりは仕方がない事だ。


なので最近の兵達の余暇は角力ばかりだ。先住民の男達も時折混ざる事があるが彼らは戦い慣れていないのか概して弱い。


「儂の担当地域では日本語の学び舎も3か所できているが、南部殿の方は如何だ?」


『こちらも、皆、我らの言葉に興味津々です。後は教える者の育成だけですね』


そうなのだ。この地域の人々は全部で2千人くらいはいそうだ。彼らに日本語を教えるだけの人材がまだ揃わないのが目下の問題だ。


「”ちゅうしゃき”には慣れて来たか?」


『いや、流石に怖がる者が多くて、これは時間が掛かりそうですね』


大将軍様より、授かった品物の一つがこの”ちゅうしゃき”だ。これの中に専用の液を入れ、体内に針を刺し流し込むと疱瘡の予防になるという。


大将軍様曰く、エスパーニャやポルトガルは新しい広大な大地を手にしても、無意識に持ち込んでしまった疱瘡に先住民が大勢かかり命を落としたため働き手が足りなくなり、開拓に難儀したそうだ。


日ノ本にも疱瘡はある故、先住民に感染したら免疫のない彼らは忽ち全滅するだろうと言っておられた。それを防ぐためには”ちゅうしゃき”で先住民の体に針を刺す必要があるのだが、流石に怖がられ中々進んでいない。特に体の弱い子供達には優先して施したい所なのだが、子供達は”ちゅうしゃき”を見ただけで泣き出す始末なのだ。南部殿の言うとおり時間を掛けるしかないのかもしれん。


南部殿とそんなやり取りをしている間に賄いが夕食が出来たと呼びに来た。


現在の賄いは”ちゅうしゃ”を打った先住民の女衆で、彼女達のお陰でこの地に来た当時の芋虫、サソリ、バッタの料理から考えれば比較にならない程美味な食事にありつけている。


賄いの女衆はもう日本語も普通に話すし、牛の歩みだが、この地の日ノ本化は着々と進んでいる。


それに、この地は本当に臭水が良く湧き出る。既に臭水を満載したタンカー船が護衛艦を伴って日ノ本とを往復した。”ちゅうしゃ”を終えた先住民の男が一部油田で仕事をしている。彼ら先住民労働者への対価は今の所、クーガーや鰐等危険な野獣の駆除位しかないのが歯がゆい所だ。それでも月に一度、小さい香り袋程の袋に砂糖を入れて渡すと皆大喜びしている。目下の所、彼らへの扶持は砂糖である。

ロスアンヘレス周囲の集落と油田群

挿絵(By みてみん)

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