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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第8章 旭日昇天・ヌエバエスパーニャ編
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1600年9月1日 土州・浦戸港

主人公、久々の登場です。

無事にテキサスに入った酒井家次からの文を読んで俺は考えこんでしまった。


先に帰国した松田定勝からメヒコ湾の海賊を一掃したことは聞いていたが、ヌエバエスパーニャから定期的に届く甲賀衆からの報告では、当初、構想していたニカラグア運河はカリブ海側で依然海賊の活動が激しく、運河など作ったら海賊の太平洋への流入を招く危険があるという。


実はメキシコにはもう一つ地峡がある。テワンテペク地峡だ。しかし、ここは幅が200㎞もある。氏規さんがアユタヤ王朝と話を付けて来て現在建設中のクラ地峡が50㎞程だから、その4倍だ。運河建設に着手しても完成まで10年以上掛かるのではないか?こんな運河を作る位ならカリブの海賊を全滅させて南米ヴェネズエラの油田まで確保し、ニカラグア運河を建設した方がまだ良いのではないか?


尤も今はカリブ海まで軍を派遣できる状況にはないが・・


酒井家次からの書状にあった土管を使用してのパイプライン構想もメキシコまでとなるとハードルは高い。何しろ間に現代でアメリカ・メキシコ国境となっている大河リオ・グランデがあるからだ。


実は現在、日ノ本は空前の造船ラッシュである。国内のドックだけでは足りずにマニラいやフィリピンにも発注している状況だ。これはマニラガレオンに使用されるガレオン船が殆どセブ島などフィリピン南部の森林地帯で建造されていることが分かった為だ。


今、盛んに建造しているのは19世紀イギリスの快速帆船カティーサークである。既にディーゼル船が実用化しているのに何故今更、帆船を?と不思議に思うだろうが、理由はずばり給油の問題だ。アカプルコにしても東南アジアにしても遠洋航海をするには目的地で給油をする必要がある。だが、国外に石油精錬施設を造るのは技術漏洩の危険が高過ぎるのだ。それに石油を運ぶのに石油から得た燃料で船を動かすのは不経済な上、そこまで急いで原油を採集したいわけではない。何しろ石油の有用性に気付いているのは世界中で日ノ本、もっとはっきり言えば俺だけなのだから。


というわけで、カティーサーク号の出番である。といっても、外見はカティーサークだが船室内はタンカーである。甕やワイン樽による輸送では流石にもう輸送力に限界が来ていたのだ。船室は鋼製にし3から4室に分け、産地ごとに原油を流し込む。船体構造はミッドデッキ構造。その他、発火防止機構など、タンカーには必須の安全装備は全て備えたカティーサーク・タンカーだ。これがもう就航開始しており、従来より効率的な原油輸送が実現できる見込みだ。


なので、とりあえず酒井には、


・確保した油田はヌエバ・エスパーニャの兵に警備して貰い、当面、採掘は不要とする。


・テキサス西部の油田の確保とヘリウム・ガス田の探索を実施せよ。


という指示を出した。


といっても、7月から9月は台風シーズンであり出港禁止期間なので指示を載せた船が出るのは10月になるのだが。


実はヌエバ・エスパーニャからの以前の報告で他にもいくつか分かった事があった。


・ヌエバ・エスパーニャは未だカリフォルニアを領有していない。


・救荒食物として現代で注目されていたラモンの木がマヤ人支配地で見つかった。


ラモンの木は苗か種子。および栽培法をマヤ人に教わり輸入するよう指示した。


カリフォルニアはテキサスと並ぶ原油の宝庫な上、後にゴールドラッシュを生む金鉱山がロッキー山脈にあるので、北条氏勝を征東将軍に指名し総大将とし、志賀親次、佐竹義宣、南部利直、相馬義胤(施設部隊)、水野勝成(ハンググライダー隊)、松平信吉(ハンググライダー隊)、本多忠朝(施設部隊)の7将からなる2千の大軍団を結成しカティーサーク5隻で出港した。内訳はタンカー2隻、護衛艦3隻だ。山師を兼ねる忍びは村雲党と鉢屋が担当。歩き巫女は10名帯同した。エスパーニャが領有していないのであれば先に占領してしまい油田の採掘から石油精錬施設まで作っても技術漏洩の心配はないだろう。既に全長200メートルの大型タンカーの試作に成功している。流石にここまで大きいと帆船での航行は無理なのでディーゼル船の出番となる。もう一つは現代の北欧で開発が進められていた大型風力発電船の実験にも着手した。


これとは別に昨年、ハワイ諸島に上陸、島民との接触に成功し、現在、ハワイには歩き巫女5名と軒猿5名が外交使節として滞在している。


「ハワイは、ハネムーンには最高の所なんだぞ、夕」


『でも、私達が行くとどんな所でも戦いが起きる予感しかしませんわ』


無事、双子の男の子を産んだ夕が苦笑気味に答えた。確かに小笠原諸島へのハネムーンは酷かったからな。因みに私事では、今はラーニャが妊娠中だ。あと、エスパーニャ人司祭の篭絡に功があったユダヤ人のマリアは正式に側室になった。ザワティは最近は伊東道場に通い埋めている。武術の魅力に取りつかれたようだ。


武術といえばアユタヤから来日したムエタイ選手の技が義浪党の冒険者の間で大流行している。このため、アユタヤから追加でムエタイ選手10名程送って貰った程だ。背が低く短足の日本人にはムエタイより着物を掴んで投げる体術の方が合ってると思うのだが、何しろ正面にいる相手の後頭部を攻撃するわけだからその鮮やかさに魅せられた冒険者が多くいた。


最後はフィリピンの話だ。ガレオン貿易の中継基地に成り下がってしまったマニラは経済的に行き詰り船の発注を持ちかけると、フィリピン総督フランシスコ・デ・テージョ・デ・グスマンが来日し、フィリピンを日ノ本に加えて欲しいと幕府に懇願したそうだ。貿易の中継基地としての役割も新に日ノ本に加えられたグアム、サイパンといったマリアナ諸島に奪われつつあり、余程切羽詰まっているらしい。流石に幕府も驚いたらしく、”国境の変更にはエスパーニャ王の認証入りの書面が必要だ”と言って帰って貰ったそうだ。


おっと、とても大事な事を忘れていた。ボルネオ島西部でダイアモンドが発見されたのだ。現在、西ボルネオでは原油の採掘を中止しダイアモンド採掘に切り替えている。因みに西ボルネオには小笠原諸島→マリアナ諸島→パラオ経由で行く方が早いのでこの航路も新設された。パラオもボーキサイトの産地であり日ノ本に加えられた。ダイアモンドだけは女性にあげる分けにはいかない。何しろこれを旋盤加工機に取り付ければあの固いチタン合金をも旋盤可能になるのだ。


ボーキサイトも順調に集まり出しアルミの生産も順調、全国の海流発電施設はフル稼働状態だ。この世界に来て10年。漸くチート技術が開花し始めた!


ただ、不可思議な事もある。俺の浅薄な日本史知識ではそろそろイギリスとオランダが日本に来るはずなのだが一向に姿を現さない。少なくとも東南アジアには来ていてもおかしくない筈なのだが、氏規さんもきょうも見た事ないという。不思議である。

風力発電船は Oceanbirdという名でスウェーデンで開発が進められています。2024年には稼働予定だそうです。

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