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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年4月17日・ライフリング(竜掘り)の効果は?

細工師達から大筒への竜掘りが完了したと連絡があったので、試射をすることになった。果たしてどれ程効果があるかやってみるまで俺もわからない。


この時代の大筒はフランキ砲といい、青銅の分厚い砲身に対して砲腔はわずか10cm程しかない。何とも頼りない大砲なのだ。


しかし、このフランキ砲の良いところは、火縄銃のような先込め式の砲ではないといところ。


砲の後部に砲弾を火薬を詰めた着脱式のカートリッジをセットし使用する。


つまり、カートリッジさえ予め大量に準備しておけば、連射も可能ということだ。

連射といっても、青銅の砲身が過熱して壊れない範囲ではあるが・・


呉の資料館で読んだ資料によれば、射程も300m程はあった筈。


つまり攻城戦では、砲腔の頼りなさとは裏腹に、そこそこ重宝する武器なのである。


但し、砲全体はやはり重い。その為、守勢の籠城側は数を揃えているが、遠路はるばるやってきた攻城側は大軍の割に大筒はあまり持ってきてはいない、敵の大筒の主力は水軍の安宅船である。


ところでこの時期は、日が落ちるとお互いに松明を焚いて、鉄砲の応酬が夜通し続くのが決まりとなっていた。お互いに相手を眠らせないという戦術なのだろうか?小田原周辺は松明の灯りと発砲音で夜も日中のような賑わいである。


そんな中での試射である。場所は城下西の早川側に向けて行うことになった。


試射だから敵に本意を悟られたくないので、当初は、より遠方に陣を敷いている東が良いかと思ったのだが、雄二によると、東は狸の陣で伊賀者がいる。こちらの狙いを悟られるかもしれないとの事で、西で実施することにした。


さて、試射の開始である。先ずは竜掘りしていない従来型を発砲する。


距離およそ300m、弾は早川に着水した。


続いて、お待ちかね新型の登場だ。さて、どうなるかな?


距離は同じく300m、やはり早川に着水した。


鉄砲を打ち合っていた敵兵は、突然の大筒の登場に驚いたようだが、射程外だとわかると、また、川岸までやって射撃を再開した。


さて、試射の結果だが、弾の飛距離は変わらなかった物の、飛んで行った先には違いがあった。従来砲は射出されたあとどこに飛んでいくか分からないって感じだった。サッカーでいう無回転のブレ玉だね。


一方、竜掘りを施した砲は弾に回転がかかるので、かなり正確に正面300mに着弾した。野球のストレート(放物線軌道だからカーブ?)というところか。


因みに、本来のライフリングとは、砲腔より若干大きな弾丸を使用し、発射エネルギーの内、砲腔内の螺旋状の溝を通った力が弾に回転をもたらすものだという。


だが、今回は砲腔より大きな砲弾など用意していない。というのは砲身が柔い青銅だからだ。万一の砲身破裂を恐れたのである。


なので、よく回転したな!というのが正直な感想である。


推測だが、フランキ砲はカートリッジと砲身の間の僅かな隙間を始め、色々とエネルギーロスの激しい大砲である。


なので、従来ならロスするだけだった砲身内を通る力がライフリングの溝により回転エネルギーと化し、弾を回転させたのでは?


いささか強引だが、このように理解することにした。


ともあれ、今回の結果から、弾の形状を丸球ではなく流線形の先の尖った形にすれば射程も伸びるだろう。


相手が想定していない射程外からの精度の上がった砲撃を加えられたら、かなり効果を上げるに違いない。


現在、鋳物師はまだガラス蒸留器製造に奮闘しているが、終わり次第、砲弾の形状変更に着手してもらおう。


今回の試射は事前にご隠居様、親方様に連絡してあったので二人とも城内から見ていたらしく、俺の結果報告と砲弾の改良案は快諾して貰え、他の大筒にも竜掘りの許可をもらうことができた。


(史実での小田原陥落まで、あと80日)

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