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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第8章 旭日昇天・ヌエバエスパーニャ編
235/272

1598年9月20日 ガレオン貿易

評価を付けて下さった方、有難うございます。

*アカプルコ 和田惟長*


拙者は今日は歩き巫女のじんと共にアカプルコへ、これからマニラへ向かうガレオン船の見送りに来ている。


5月にここヌエバ・エスパーニャに到着以来の諸々とした事の報告を暗号化して文に記しマニラ経由で帰国する甲賀者と歩き巫女の表面上は夫婦の2人に託したのだ。


この地での人心掌握は恐ろしいほど順調だった。エスパーニャ人、インディオとかいう先住民は皆我らの事を天使に仕える高貴な人間と信じきっている。


副王だろうが、司祭だろうが、医師だろうが、我らに敬意を払わない者はいない位だ。取り分け先住民はエスパーニャ人による過酷な仕打ちから解放された事もあって、我らへの信仰心が強い。そして、頃合いと思って仕掛けた先日のグアダルーペでの聖母降臨。この話題は書面となってヌエバ・エスパーニャ全土に広がって行っているようだ。


だが、問題がないわけではない。大将軍、嫌、我らにとっては頭領である伊勢様が示したこの地の臭水は東の海に近い位置に点在しているのだ。当初の指示では臭水を採取したら船で南下し南の川を西に遡上し大きな湖まで出る。その湖からは西に平地を10キロも行けば日ノ本に繋がる大海に出られるとの事だった。その程度の距離なら地元民を動員して運河を作らせても良いと仰っていた。


がっ、その東の海にネーデルランドなる凶悪な海賊が出没しているというのである。もし運河など作ったら、海賊が日ノ本に続く大海まで出てきてしまう。そうなれば、マニラや日ノ本とを結ぶガレオン貿易にも大きな影響が出るだろう。実際、東の海では大きくて遅いガレオン船は海賊によく襲われているそうだ。


じん、頭領は何とかしてくれるかな?」


『こればかりは、私も全く分かりませんわ。ネーデルランド海賊が奴隷を連れ去っているようなら歩き巫女を忍び込ませる事も出来るのですが、連中は品物にしか興味がないそうですからね』


「うん、例え木馬を送って貰っても東の海まで運ぶのは大変だしな。相手が海賊では一隻、二隻ではどうにもならないだろうし」


『幸いエスパーニャ人が大量に持ち込んだ葡萄酒の空き樽がありますでしょ?あれに臭水を詰めて陸路でアカプルコまで運ぶしかないんじゃないかしら?エスパーニャ人は荷馬車なんて便利な物を使っているし』


「全く陸路を荷馬車で湖は船に乗せ換え、陸路はまた荷馬車へとエスパーニャ人共も手間かけて良くやりおるわ」


『まあ、その為に奴隷が必要だったのでしょうけどね。それより聞きました?先住民と言っても、今、この地にいるのはエスパーニャ人との混血が大半で純潔な先住民は殆ど生き残っていないそうですわよ?』


「エスパーニャ人のやってる事も海賊とそう変わりはないというわけだな。その所為か分からんが農場ではアフリカンの奴隷が大勢働いておるだろう。弥助殿が知ったら激怒しそうだな」


『報告にはその件も書いたのですか?』


「いや、今回は書かなかった。エンコメンデーロとかいうエスパーニャ人の農場主共には死ぬ前にもうひと働きしてもらおうと思ってな」


『農園から搾取する計画でもあるのですか?』


「いやいや、この地の農園で育てているカカオ、トウモロコシとかいう作物は日ノ本で必要か?一応、品物は送ったがな。頭領から必要と返書があれば農園の接収も考えるが、今考えているのはもっと別の事よ。歩き巫女にも働いてもらう故、そのつもりで待機しておいてくれ」


『ええ。既にこの地にも朝顔や砒素、それにマンチニールなるこの土地固有の毒植物がある事を先住民から聞き出しておりますわ。早く使ってみとう御座います』


こんな話をしている間にガレオン船は護衛艦を伴って出発して行った。順調に行けば頭領からの返書は来年5月に届く予定だ。


拙者は頭領からどのような指示が来ても良いよう、着々と仕込みをしていくのみだ。

ヌエバエスパーニャの主な油田とメヒコ湾

挿絵(By みてみん)

当初の運河計画

挿絵(By みてみん)

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