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1598年8月8日 七夕

久しぶりに主人公登場です。

今日は七夕である。最もこの時代には短冊も花火大会もない。あくまで宮中、つまりあのお白い爺共の習わしだったのだ。ただ、一昨年の維新以降は庶民の行事として広めようと全国の代官所や冒険者義浪党等でこの日に笹を飾ったり、織姫・彦星の伝承の紙芝居の上演を始めており、次第に広まって行く事だろう。


さて、俺は現在もかつての本拠地佐倉にいる。軍務省からは垪和康忠が大臣代理として都に常駐している。当初は征北将軍・伊達政宗らと共に俺もシベリアに行くつもりだったのだが、思っていた以上に国内でやる事があった為だ。無論、任せて心配ない位に政宗や幸村を信頼しているという理由もある。佐世保軍港の建設は高炉製鉄所、炭鉱探査始め港の整備など俺が関わる事は無いので安心だ。




問題となるのが、氏規さんにお願いした南方の資源探査の受け皿だ。


東南アジアの油田やボーキサイトは呉にあった旧日本軍の資料を元に地図作成したから、山師が直ぐに見つけてくれるだろう。となると、日ノ本に持って帰って来てくれた後、アルミ精錬工場が必要となる。アルミの精錬には大電力が必要になるので、太平洋岸の主だった平地を借り上げ海流発電所の設置を急いだ。設置したのは、三河・渥美半島、伊豆半島、現代で鹿島灘と呼ばれる常州の海岸線、釜石がある三陸海岸、そして下北半島の計5か所だ。アルミの精錬とは乱暴に言えば電気分解であり大電力さえ用意できれば、実現可能となる。


もう一つは原油の貯蔵だ。一口に原油と言っても産出地によって特徴がある。原油のまま混ぜてしまうのは厳禁だ。一般にスマトラ島等の原油は質が良いとされている。このため、産地を明記し、三河湾、江戸湾、陸奥湾内に貯蔵する事にした。現代のような大規模石油貯蔵庫は無理なので筏を作りその上にブリキ缶を固定して保管する。何とも心もとないが現状ではこれが精いっぱいなのだ。何れも海流発電所から近い上津波の避難湾であるので、この湾内に石油精錬所を建設する計画だ。




懸案だった資部省の軍務省の傘下入りは大評定であっさり認められ軍務施設庁となった。というのも氏照さん、氏光さんが賛成してくれたからだ。氏照さんの北陸地区には南長岡ガス田が、氏光さんの東海地区には静岡ガス田があり、これらを軍務省非管轄の完全民需用のガス田として活用する事を提案したからだ。つまりこれらは化学肥料工場として稼働していく事になる。もし資部省が独立した省であれば間違いなく資部省管轄の施設になるが、資部省が軍務省傘下となれば民需は管轄外だから、そこにあらたな商業機会が生まれるのである。施設の建設は軍務省の施設部隊が造営省に出向して行うが、完成後は内務省の管轄とするもよし、宇野家など商人に金を出させ民間施設として整備するもよし、詳細は幕府が決めるが氏照さん、氏光さんら探題も口を挟むことが可能になるので二人とも乗り気なのだ。


氏照さん、氏光さんばかり良い思いをさせては他の探題が気の毒なので、中国探題・毛利輝元には竹島、関東探題・北条氏忠には南鳥島でそれぞれリン鉱石が豊富に採れる事を教えた。因みに現代では韓国と領土問題となっている竹島だがこの時代は朝鮮の船は影も形もないという。九州探題・北条氏隆はすでに佐世保軍港の整備の恩恵に預かっているし、奥羽探題・最上義光、蝦夷探題・九戸実親は広大な担当地域の差配に手一杯である上、そもそも彼らの担当地区は十三湊、釜石製鉄、樺太・石狩油田、択捉国後のチタン砂鉄と軍務省関連の事業の恩恵を既に十二分に得ているので軍務省の担当分野拡大には賛成だった。




そして今、俺が最も注力しているのは航空機開発だ。ティルトローター機を製造した経験はやはり大きく、様々なタイプのヘリコプターが試作されたが、やはりレシプロエンジンの限界かシングルローターでは浮上がやっとでとても航行には至らなかった。一般的なシングルローター・ヘリにはテイルローターが必要だが、この時代の技術では一つのエンジンで大きさの異なる二つのローターを廻すのは難しかった。やはりトランスミッション等シャフト系の技術向上を待たねばならない。そこでツインローター型の試作を始めた。


一つはタンデムローター型だ。機体の前後にローターがあるタイプで現代では軍用の輸送ヘリとして有名なやつである。各ローターにエンジンを備えている。ヘリコプターはローターが回す羽根ブレードがある程度長さがないと充分浮力を得られないのでタンデム型はどうしても前後に長い機体にならざるを得ない。中身や大きさはともかく見た目は現代の軍用輸送ヘリにソックリだ。


もう一つのタイプは交差反転式ローター型だ。これは一つのエンジンでトランスミッションにより二つのローターを各々逆方向に回転させることでテイルローターを不要にしている機体だ。


ツインローターではあるが、同じ大きさのローターを至近距離で回すのでトランスミッション構造としては単純なので実現できた。タンデムローターより遥かに小型なのも長所だ。”飛竜”と名付けシベリアに派遣したのはこのタイプである。欠点は小さいが故に荷物積載量が少なく爆弾など攻撃能力は低いことだ。しかし、河川の蛇行状況など上空からの偵察には十二分に効果を発揮するだろうと考えて投入した。


俺がこれほどヘリコプターに拘っているのは言うまでもなく通常の飛行機と違い滑走路が不要だからである。日ノ本なら滑走路も給油施設も建設できるが、現在の所、日本から出撃できる位置に上空から爆撃する程の強敵はいないのだ。いつかシベリアでロシアと激突するのは間違いないが、シベリア最大のチュメニ油田はウラル山脈の麓、シベリアの西端にあるのだ。そこにロシアより先着し、更に滑走路や製油所、給油所を整備するのは正直難しいと考えている。 それに、通常の飛行機には降着装置が必要となる。盲様ゴムは有能だが、未だタイヤの需要がないので離着陸時の摩擦熱にどこまで耐えられるか未知数なのだ。

従って、ヘリコプターの次は飛行艇開発が主力になる。そして、ヘリコプターの開発で技術を磨けば飛行艇開発の礎に繋がる。大陸には飛行艇が離発着可能な大河がいくらでもある。まずはそれら河川に安全に給油可能な施設を整備することが肝要であり、その為にはまずヘリコプターが必要なのだ。

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