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1598年4月24日 特命秘密部隊2

さて、では相手をしてやるか!と思った所で声を掛けられた。


『お頭、お待ちを。こんな事。お頭にやらせる分けには参りません。ここは某にお任せください』


伊賀者の富野茂正だ。


「茂正か。お主一人でか?」


『お任せ下さい。大きな者を制圧するのは得意ですんで!』


「うむ。では任せるが、無理はするなよ。我らに増援はない。故に命は第一と考えよ」


『わかりました』


通訳を通して、茂正が相手をする事を伝え、相手とタイマン勝負となった。


大柄な相手が長槍を構えている。対する茂正は一見すると無手。見た目では勝負にすらならないように見えるが、相手が不用意に近づいた茂正を槍で突いた瞬間!


あっという間に槍を掻い潜り、槍の柄を掴むと相手が嫌がり槍を引く力を利用して瞬く間に近づき、脛を蹴った。所謂、弁慶の泣き所という奴である。痛がっている相手のもう一つの足の脛も蹴りつける。体重を掛けていた方の足だ。相手はひとたまりもなく倒れる。茂正はどこからともなく取り出した縄で倒れた大男をたちまち縛り上げてしまった。あまりの出来事に相手側の残る2人はあっけに取られ見守るのみだ。


通訳を通して知らせる。


「勝負あった。これが命の取り合いであれば、その男はもう死んでいる」


これで我に返ったのか、残る2人が槍を構えた。だが、


『よせ。俺の負けだ』


縛られた男がそれを制止した。どうやら彼がこの3人の長らしい。


彼が改めて言う。


『俺の負けだ。お前達の立ち入りを認めよう。だが、その前にこの縄を解いてくれないか』


彼の縄を解き、改めて会談を始める。残りの2人も素直に従った。


長の彼は”ジャバラ”と名乗った。


『お前達は小さいのに強いな。俺はこの辺りで一番強いのだ。あんな目にあったのは初めてだぞ』ジャバラはそう言って笑った。


『それで、お前達は我らと共に西から来るという蛮族と戦いたいという訳だな?』


「嫌、少し違う。奴らは人が住んでいると分かると上陸して略奪の限りを尽くし、人を攫って奴隷にしてしまうが、人がいなければ通り過ぎていく。幸いなことに其方らの住処は洞窟だ。人が住んでいる事が分からないように上手く隠せば奴らに襲われる事はないし、我らには其方らの住処を隠す術がある」


『なんだ。戦うんじゃないのか?それで、お前達には何の得があるのだ?』


「実はこの土地で探している物があるのだ。それは、ある特別な土のような石のような物だ。だが、我らはこの土地に詳しくないのでな。この土地で食料や水はどう用意しているのかとか、可能であれば案内も頼みたいのだ。とにかく広大な島だと聞いている」


『土や石も精霊の許可が無ければ採ってはならん。お前達に勝手に動かれて精霊の怒りに触れては叶わんからな。よいだろう。案内の者を付けよう。その前に食事をしよう。友になるには食事が一番だ』ジャバラはそう言って、洞窟の中に声をかけた。


洞窟の中からは女子供が何人か出て来た。皆、男達同様濃い色の肌をしている。驚いたのは子供達の髪色だ。頭領いや大将軍が好みそうな金色というか赤みがかった鮮やかな色をしてる。


女達は食事の準備を始めるようだが、一体、この者達はどんな物を食べているのだろう?と思ていると、ジャバラが『出発するぞ!』と言った。どうやら食材を取りにいくようだ。


『半蔵殿、我らは洞窟の隠避工作を行うのでここに残ります』


施設部隊・三つ者の長、日向源藤斎がそう言って来た。彼と配下10名は早速隠避作業に掛かってもらう。


「分かった。それと雨宮殿は木馬の隠し場所を見つけてくれ」


やはり三つ者の雨宮存鉄に声を掛ける。木馬ヨットは未だ沖に錨を降ろしたままだ。どこかに接岸させて隠蔽しなければならない。


『招致』雨宮は風のように消えていった。


『道中に何か見つかるかもしれないので、我らは同行させてくれ。半蔵殿』


そう言って来たのは風魔の山師、小太郎だ。最も本物の風魔小太郎ではないだろうが。


「うむ。同行頼む、小太郎殿」


こうして、伊賀者から自分と富野茂正。風魔から小太郎とその配下1人。計4名でジャバラ達に同行することにした。


三つ者達はまず木馬に残して来た配下を迎えに行かなければならない。他に木馬には伊賀十二衆も乗っているので唯一先遣隊に同行してきた十二衆の一人・布生大善も一度木馬に戻り状況説明に向かわせた。


さて、ジャバラ達と同行した我らだが、この辺りは赤茶けた岩と大地が広がっておりあまり木は生えていない。1時間程歩いただろうか?荒野に一本の大木が現れた。ジャバラが『ここだ』と言った。


彼の仲間達は地面を掘り始める。すると、地下から芋虫がゾロゾロと湧いて出るではないか!


彼らは大事そうに芋虫を籠に詰め始めた。


通訳のジャワ人は『俺達はあれを買ってたのか!』と驚いているとアチャが教えてくれた。


その後、更に一時間ほど歩くと川が見えて来た。川辺には流石に草が生い茂っていた。


ジャバラが俺達を手で制し、足音を出さないようにと指示してくる。忍びには朝飯前だし、そもそも初めから足音なぞ出していないのだが、アチャとジャワ人はちと心配だ。


結局2人にはこの場で待機してもらい、ジャバラ達と我ら4人で草地に踏み入る事になった。もう彼らと言葉は通じないが、ここには大きな獣がいるそうだ。


やがてジャバラの仲間が地面に槍を突き刺した。他の男達も追随する。ん?別の場所では小太郎殿が何かに感づいたようだ。配下と茂正の3人で囲うように追い詰める。やがて一斉に鉤縄を投げつけた。上手く獲物に絡まったようだ。ここからは忍びにはお手の物。あっという間に獲物を制圧した。それにしてもデカい。ジャバラ達が仕留めた大蜥蜴もデカいが、この大型ヤモリのなんとデカいことよ。


大物2頭と多くの芋虫を抱えて洞窟前に戻る。


雨宮が『木馬は1キロほど離れた所に洞窟があったのでその中に隠しました』と伝えてきた。


既に木馬を隠した洞窟自体の隠蔽も終えているそうだ。


ソナー員の男、介助の歩き巫女始め木馬に残っていた乗員は全員上陸している。地元の子供達はソナー員が乗っている”車椅子”に興味津々だ。柔らかい砂が多いこの地では然程便利な乗り物ではないのだが。


『それにしても鰐まで仕留めてしまうとは、お前達本当に強いのだな』


ジャバラが改めて言った。あの大型ヤモリは鰐というらしい。


『これだけあれば、俺達だけなら一月は持つところだが、新たな友も着た事だし、近々また狩りに行こう』


その日は、鰐、大蜥蜴、芋虫を焼いて酒こそないが盛大な宴となった。


大将軍曰く”ごうしゅう”というこの巨大な島は人の足で踏破するのは不可能。内陸に入りすぎると水の確保もできない地獄の地だという。島の周囲を木馬で回るにも一か月は掛かるという広大さだそうだ。それ故、拙者以下、伊賀十二衆に三つ者の精鋭、風魔小太郎まで来ているのだ。必ずやこの島の領民の日ノ本国民化と資源確保を成功させよう。幸いここの人達も自然信仰なようだから、伴天連共よりは日ノ本の神々のほうが受け入れられ易いだろう。

服部半蔵視点でした。この半蔵は小田原戦で戦った半蔵から引き継いだ次代の半蔵になります。


豪州、つまりオーストラリアの原住民は日本ではアポリジニと呼ばれていますが、この言葉は蔑視の意味を持つそうで現在では使用されていないそうです。白人が入植以降、彼らが持ち込んだ伝染病や一時はハンティングの標的にされたりしたりで大きく人口を減らした悲しい歴史があるようですね。

挿絵(By みてみん)

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