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1598年4月24日 特命秘密部隊1

木馬ヨット2隻でマタラム王国を訪れていた一行だが、ここで1隻は大将軍の密命を受けているため別行動となった。王国で水と食料を最大限補給し壬生、鍋島らとは分かれ更に東に向けて出発する。


この一行はヨットを風魔の山師と施設部隊計30名だけで構成され操船も彼らが行う。他には盲のソナー員男性一人とその世話役のきょう配下の歩き巫女の女性、それにマタラム王国で雇った目的地近くで交易経験があるという案内役のジャワ人2名である。通訳には昨日まで鍋島らを案内していたアチャが付いてくれた。


彼らがジャワ島から別行動をすることは、北条氏規以下重臣は知っていたが、具体的に何をしに行くのかまでは知らされていない。知っているのは密命を与えた大将軍・伊勢直光と風魔、施設部隊の忍びだけだ。彼らだけでこれから凡そ二千㎞もの航海を行わなければならないのだ。この過酷な行程に耐えられるのは忍びだけである。


この海域は貿易風の強い風が吹いているので風車が良く回り時速15ノット(27㎞)程度の速度で進む、それでもこの人数では24時間航行は難しい上、案内人がいるとはいえ未知の海域の探索航海だ。唯一の情報は大将軍から与えられたこの辺りの地図だが、凡そ二千㎞もの地域を一枚の紙に描いた非常に曖昧な品だ。あとは今やこの隊に限らず全ての船に標準装備されている方位磁針が頼りだ。救いはジャワ島から目的地まで島々が点在し、沖に錨を降ろし地上で休める事だろう。それでも案内役がいたおかげか最初の目的地には凡そ10日で到達できた。


大将軍によれば、ここは、南にある非常に巨大な島の北端なのだという。


小舟を出し浜に接岸する。先遣隊は案内役のジャワ人と通訳のアチャを含め10名だ。人は見当たらない。だが、暫く進むと洞窟が見え、その前には焚火の痕など人の生活の痕跡が見える。案内役のジャワ人が


『あそこは、ここの住人の生活拠点でしょう』


と言った。ジャワ人は普段は海上で船同士で交易しており、この島に上陸したことは無いという。


「知ってる言葉で声を掛けてみてくれ」


とジャワ人に言おうとした瞬間、殺気を感知した。恐らく投擲だ。避ける事は出来るが、そうするとジャワ人やアチャに被害が出る。咄嗟に短刀を抜き投擲物を叩き落とした。


『大丈夫ですか?お頭?』


配下の者達もいきり立っている。投擲はその後も数回続いた。横に曲線軌道を描く実に厄介な投擲物だが配下と供に全部叩き落した。


漸くジャワ人に声掛けを指示する。ジャワ人が大声で叫ぶこと凡そ10分、やがて人間が姿を現した。今回の航海にも将軍に帯同している弥助殿程ではないが、肌の色の濃い大柄の男が3人いる。尚も語り掛けるジャワ人。相手は漸くこちらに敵意が無い事を理解したようで、手に持っていた槍を地面に突き立てた。以後はアチャ→ジャワ人→相手と二人の通訳を通しての会話となる。


「我らはここより北の日ノ本という国から来た者だ。諸君と友誼を結びたいと思い遥々やってきた」


『何故、我らの大地に足を踏み入れた?そこの者達とも海の上で取引を行っている。我らの精霊は余所者を受け入れぬ。直ぐに立ち去れ』


「待て。ここより西の地で我らより更に遠くから来た蛮族が暴れまわっているのだ。其方達は何も知らぬのか?」


通訳を終えたジャワ人が伝えてくる。


『儂等もバンテン王国で起きた傍若無人な略奪行為は、彼らに伝えております』


やがて、彼らから答えが返る。


『何人が襲って来ようとも、我らの大地は神と精霊に守られている。余所者など足を踏み入れる事も叶わぬわ』と不敵に笑っている。


伝聞で直接見たわけではないから危機感がないのも仕方がない。やむを得ん、少し挑発してやるか。


「既に余所者である我らが足を踏み入れているぞ。我らの友人であるジャワ人を襲ったベランダなる者達は我らの数倍は強いのだ。手を取り合わなければ叶わんぞ」


「其方らが投げて来た木は一つ残らず我らに叩き落されたではないか。あんな粗末な武器でベランダに叶うと思っているのか?」


『何だと!!』一気にいきり立った彼らだが、実際、あの武器では銃を持った者が大勢で来られたらとても太刀打ちできないだろう。


「では、某と勝負するか?先程の武器を使って構わぬぞ。なんならその槍を使って3人同時に掛かって来ても構わぬ」


小柄な者にこうまで言われ、彼らはいよいよ頭に来たようだ。中央の一人が怒鳴り散らす。


『ちび共が何をいう。お前達こそ全員纏めて掛かってこい。相手は俺一人で充分だ!』


やはり彼らは人間同士の戦いには慣れていないのだ。煽られると簡単に乗って来た。さて、では相手をしてやるか!

本話は一体誰視点なんでしょう?

挿絵(By みてみん)

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