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1598年4月22日 アユタヤ

評価を付けて下さった方、有難うございます。

*征南将軍・北条氏規*


ジョホール王国で私達は隊を三つに分ける事にした。というのは、目的地が余りにも広範に広がっており、一隊で向かうには非効率だったからだ。ブルネイのスルタンから各地のスルタン宛ての紹介状を貰っており、”ベランダ”なる未知の国の艦隊は不安ではあるが倭寇船が護衛に付くので分割しても問題ないと判断した。




第一隊・マタラム王国使節団


総大将:壬生義雄、副将:鍋島直茂、水軍長:村上元吉、護衛の倭寇船は王直ワンジーが率いる。木馬ヨット2隻に風魔の山師と三つ者率いる施設部隊50名が乗り込む。水軍兵以外の兵は壬生、鍋島の側近合わせて50名程しかいないが、マタラム出身の女性アイシャも同行するので問題は無いだろう。




第二隊:パレンバン使節団


総大将:那須資晴、副将:大友義乗、水軍長:村上景親、護衛の倭寇船はキヨヤスが率いる。木馬ヨット2隻に風魔の山師と三つ者率いる施設部隊50名が乗り込む。パレンバンのスルタンはブルネイのスルタンと一際親しい間柄だそうで、交流にまず問題は無いだろう。パレンバンのスルタンからは油田採掘の許可を得るだけでなく、スマトラ島北中部のペカンバルという集落の情報も得たい所だ。直光によればその集落の近隣にも油田があるのだそうだ。また、副将の大友は九州の名族の出だが21歳の俊英だ。この抜擢で大きく成長してもらいたい。




第三隊:アユタヤ王朝使節団


総大将:私・北条氏規、水軍長:来島長親、護衛の倭寇船はきょうが率いる。水軍長の長親は若干16歳ながら因島村上水軍の血を引いており航行に不安はない。また、この隊には山師や施設部隊は同行しない。アユタヤ王国はムスリムの国ではなくブルネイのスルタンも良く知らないそうだ。きょうはアユタヤの南部や隣のパタン王国では略奪を働いているが、王都アユタヤ周辺では対等な交易をしているので海賊とバレなければ大丈夫と言った。




そして、一月近い航海の末、王都アユタヤに到着した。アユタヤは内陸の地にあったが大河チャオプラヤーが流れており、大きなガレオン船でも乗り入れる事が出来た。日ノ本の川では絶対に不可能な事だ。


突然の大型船の登場に王都は混乱に陥ったようで、大慌てで軍船が出港し、陸では軍団が組織されこちらに向かってくる。この国にも大砲はあるようで、以前、直光が都に連れて来た”象”という鼻の長い大型獣が砲を牽引してやって来る。彼らと言葉が通じるのはきょう一味だけだ。こちらの大砲は全て収納してあるが窓を開ければいつでも発砲できる状態だ。雷矢も同様である。果たして友好使節として認めてもらえるだろうか?


きょうは略奪する時と交易する時で船を使い分けているという、勿論今回乗っているのは交易用の船だ。『アユタヤには顔なじみの商人もいるし大丈夫』と楽観的に話していたが・・


前に出たきょうら交易用倭寇船団が樹皮を丸めた拡声器で相手の言葉で語りかけている。


どれくらい時間が経過しただろうか?日ノ本では外交役として適地に赴いた経験が豊富な私も異国での経験はないので不安だったが、どうやら友好使節と認めて貰えたようだ。軍船も象も帰って行く。残ったのは陸の軍団だが、隊長らしき人物ときょうが何やら話している。暫くすると、相手側にも商人風の男が現れ笑顔も見える。


やがて、隊長らしき男、そして商人風の男がきょうの船に乗り込みこちらに向かってくる。私は直ぐに乗船を許可した。万一に備え、水軍兵には大砲と雷矢の用意はしたまま待機するよう指示する。この大型船なら火薬の匂い等、感じさせないように客を上階に導く経路はいくらでもある。案内したのは甲板上に用意した”ぱらそる”なる大きな日傘とその下の机と椅子の異国人用の簡易客間だ。挨拶を交した後、彼らを椅子に誘い、抹茶と干菓子で持て成す。最近は直光が齎した砂糖のお陰で菓子の種類も増え、日持ちの良い干菓子も沢山船に積んである。今回出したのは落雁らくがんだ。紅花で染めた鮮やかな紅い菓子だ。


暫し歓談が始まる。先ずは商人風の男から


『日ノ本からいらした皆様とお会いできて大変嬉しいです。何しろ、皆様は、私共の最大のお得意様ですから。いつも、猫、鶏に象までお買い上げいただいて有難うございます』


猫に鶏?私の記憶にはないが、きっと直光だな。続いて隊長風の男が


『日ノ本から来た傭兵達は大変な活躍でいつも頼もしく思っておりました。此度は日ノ本本国からの”サムライ”の使節の皆さんにお目に掛かれ大変光栄です。我が国は東西に敵を抱えておりまして、今後とも傭兵団の派遣をお願いしたいと思っております』


と丁寧に頭を下げた。


傭兵団?なんのことか分からない。と思っているときょう


『日ノ本からの奴隷の事です。腕に覚えのある者は刀を持たせ傭兵としてアユタヤに売っていたのです』と教えてくれた。


「小田原戦の後は大量に奴隷を売ったが、最近は泰平の世になって奴隷などいないのではないか?どうやって調達しているのだ?」


『伊勢様によると、犯罪者だそうです。一時期は犯罪者は鉱山奴隷に廻していましたが最近は日ノ本内の鉱山をあまり掘らなくなったので、また売る事にしたのだそうです。象相手にも怯まず向かっていく豪の者が多いです。彼らには戦がある国の方が生きやすいのでしょう』


そういえば、資源保護とかで鉱山採掘は大幅に制限されたんだったな。不要になった犯罪者を売ってるのか直光め、いや今は資部省の前田利長か、上手いことやりよる。


結局、歓談は友好的に進み、明日、アユタヤ王に会う事が決まった。王との会談を即決とは、あの男ただの隊長ではないな。相当上位の地位の者なのだろう。


征南使節艦隊航路図

挿絵(By みてみん)

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