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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年4月12日・この世界・時代のお金の話

館の別室で女達が恐るべき暗殺計画を練っている頃、


「へーーーーーーーくしょん!!」


誰か噂してるな。


俺は雄二からこの世の中での、通貨要はお金の事を教えてもらっていた。


というのも、醸造所や職人街に足を運び仕事を頼む際に対価の話をすると、異口同音に、


『報酬なんていらない。食料と酒を安定供給してくれれば良い。それよりも、絶対に戦に勝ってくれ!』


と言われたからだ。


現状、小田原は確かに包囲されているが、広大な城内には大きな農地があり、酒の蔵元もある、小売店も営業しているのだ、なのに何故、彼らは金銭でなく食料の直接供給を求めるのだろう?


それに対する雄二の説明はこうだ。


まず、お金だが、この世界には二種類ある。


第一は大陸から輸入して使用している硬貨。これは日ノ本の国であれば他の領主の地でもそのまま使用できる。


もう一つは、北条領内限定の北条札という紙幣。


隣国・武田家が甲州金という金貨を発行していたのを参考に、ご隠居様(氏政)が当主時代に、硬貨より軽く運搬に便利な紙を使用したお金を考案し発行したそうだ。


この紙幣は関八州およそ200万石の当主である北条本家が保証している紙幣である上、税の三割までは北条札での納税を認めていたので、領内では大変普及していたという。


がしかし、その北条札の効力を保証していた北条氏が今、小田原を包囲され滅亡の危機にあるのだ。北条札と銀や大陸銭を交換してくれる両替商は猿の小田原征伐の天下への号令の報を聞くや領内から姿を消した。


その結果、北条札はもはや紙切れ同然となり、他領に伝手のある人、資産の多くを大陸硬貨で保有していた人(主に商人)は、早々に領内を離れ、今、小田原はじめ北条の領内にいる領民は皆、他に行き場のない人々だという。


そもそも、戦に負ければ、財産などいくら持っていても敵に略奪されるに決まっているから、この、街が包囲されている状況下では皆、損得度外視で協力してくれる。


ということだった。


ところで、この北条札と両替商の説明の中で、雄二が一つ変な話をしてくれた。


両替商がいなくなった、昨年の12月初旬、河越、八王子、下田湊といった領内の街に、闇両替屋が現れたという。


この両替屋は北条札と銀を平時の半額のレートで両替に応じていた。


領民たちの多くは暴落する北条札に困り果てていたので、皆、群がるように両替をしてもらったそうだ。


が、闇両替が去り、暫くすると、彼らが両替した銀は陶器に色を塗った偽物であることが分かった。


元々価値が暴落している北条札を偽銀を作ってまで、闇両替屋はなぜ求めたのだろう?


雄二は、これはおそらく伊賀者の仕業だろうと言う。


では、伊賀者は北条札を何に使用したのか?


雄二の推測では、堺など大きな街で北条札での取引を商人に持ち掛けるのに使用したのではないかとのことだ。


暴落している北条札での取引に応じる商人はいる訳ないが、北条札をみたことがあるかどうかは相手の反応を見れば容易に判断できる。


北条札を知っているということは北条と取引がある商人ということであり、そこからは、あらゆる手段で、いつ何をどれくらい北条に卸したか調べる事が可能だろう。


先代(孝太郎が転移する前の風魔小太郎)が”堺での取引は危険”と文をよこしたのが、12月下旬だったので、時系列的にこのような推察が成り立つとのことだった。


当初はお金の話を聞くだけのつもりだったのだが、伊賀者の厄介さ狡猾さを改めて知らされ、背筋がぞっとしてしまった。


(史実での小田原陥落まで、あと85日)

北条札はもちろん創作です。日本での紙幣は江戸時代の藩札が最初ですが、日銀の貨幣博物館のHPによると中世日本には既に割符さいふという紙を使用した為替システムが存在していたとのことなので、時代を先取りして登場させてみました。


16話の後書きにも書きましたが、かねてより拝読している夾竹桃先生の『戦国小町苦労譚』にも紙幣が登場しててビックリ。その後、不採用となったとの記載があって胸を撫でおろしました。「チートが被らない」がテーマなのに早くも二つも被ってたら心折れそうでした。本作で北条札はメイン・アイテムの一つとして、今後も結構活躍するのです。


16話を投稿した時点では↑な気持ちでいたのですが、よくよく考えたら、数多ある歴史作品を全て読むこと自体無理なことなので、チートというか技術・アイテムの被りを完全に防ごうなんて不可能だなと思い当たりました。なので、今後は他の先生の作品はあまり気にせず、自分が書きたいと思った内容を書いていこうと思います。その上で少しでもオリジナリティが出せたら実質的処女作としては十二分でしょう。

というわけで、連載はまだまだ続きますので、どうぞお付き合いくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 北条札の暴落のくだりを見て、ロスチャイルドがワーテルローの戦いだったかな?で仕掛けた空売りを思い出しました。 となると今後、北条札を安価に仕入れるというのもアリかな、と。
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