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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年4月11日・闇に光る眼

箱根の峠道脇の森、ここは風魔のアジトの一つ早川沿いの弁天洞窟から1キロ程離れた場所である。


お頭から秘密作戦の説明を受けた重伍(以前、火薬製造所にいた男)は、以来、この場所で夜毎張り込みを続けていた。今夜で5日目になる。


この峠は西は猿の物流拠点となっている山中城、東は猿長の一団がいる箱根湯本へと通じている。


目的は夜間に猿共の通行があるか確認する為だ。既に張り込み二日目の夜に猿の荷駄隊の通行を確認、対処した。


重伍の傍には、風魔の狼使い10名と10頭の狼が控えている。


以前、荷駄を発見した時も荷運びの猿族を狼に襲わせ、荷駄も漁らせたのである。


相手には野生の狼に襲われたとしかわかっていない筈である。


これで、敵は今後どうしてくるか?


警護を厳重にして夜間の行軍を続けるのか?それとも、移動は昼間だけにするのか?あるいは狼狩りでも始めるか?


お頭の予想では、敵は大軍で余裕を持っている。一度二度野生の狼に襲われたとなれば、無理せず夜間の移動は取りやめるのではないか。とのことだった。


実際、昨日一昨日は日没後に猿がここを通ったことはない。


もし、敵の夜間の移動はもうないと判断すれば、鬼涌谷で”鬼煙”(孝太郎は硫化水素をこう名付けた)の採集と弁天洞窟への移送貯蔵任務を開始することになる。


今宵も敵は来ないか?と思いながら、峠道を眺めていると、西から松明の明かりが見えてきた。荷駄隊だ!しかも、今回は火縄の匂いがする。まずい、銃の発砲音は狼にはかなりの脅威だろう。敵は警護を強化して夜間の移動を敢行してきたのだ。


幸い敵の松明のおかげで、鉄砲を持つ者は良く見えた。都合四名だ。何れも火縄をくるくる回しながら、隊列を守るよう前に二名、後ろに二名配置されている。


ここで、出番となるのは、毒矢隊である。彼らは元は武田の忍びで”三つ者”と言われていたが、武田家滅亡後、風魔に身を寄せた集団である。


彼らは毒には大変詳しく、また、扱いにも慣れているのだ。


重吾が目くばせすると、彼らは音もなく周囲の木々の上に飛び乗った。


今回使用するのは、雀蜂の毒である。非致死性にするため少量を矢に塗り、吹き矢として使う。


というのも、毒殺してしまえば、人が関与したことが相手に知られてしまう。


あくまで、火縄持ちを毒で弱らせ無力化した後、狼に襲わせるのだ。


やがて、荷駄隊が近づいてきた。阿吽の呼吸のもと三つ者達が火縄持ち四名の喉元に毒矢を放つ。矢自体がとても小さいので、気づかれたとしても虫に刺された程度にしか思わないだろう。


後は部隊を尾行するだけである。雀蜂の毒は神経毒なので、やがて火縄持ち達は歩みがおかしくなるはずだ。


程なく、四名の足並みが乱れだし、千鳥足のような歩き方になってきた。


そこに、いつのまにか周囲を取り囲んでいた狼達が襲い掛かった。


暗闇からの突然の襲撃に対応できた者は誰もおらず、あっという間に一行の制圧は完了した。


前回は、狼に適当に噛ませた後、わざと相手を逃がし、狼が出ることを敵に喧伝させたが、今回は毒を使用したので念のため全員嚙み殺させた。


喉元の矢の跡は狼に嚙み千切らせ、即吐き出させた。更に荷駄も荒らさせ、最後は狼の耳を塞いで、敵が持っていた4丁の銃を明後日の方向に発砲する。


これで、日中、発見した敵達は、鉄砲で警護したにもかかわらず、狼の襲撃は防げなかったと思うことだろう。




完全犯罪完了である。

(史実での小田原陥落まで、あと86日)

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