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ノストラダムスの大予言

評価を付けて下さった方、有難うございます。

時は大評定があった一年ほど前に遡る。旧首都カミから新首都タカトに移転する一行と同行していた大賢者”イデ”明智光秀が近習護衛を伴って、コンゴ王国の王都ンバンザ・コンゴ(旧名サン・サルヴァドール)に立ち寄っていた。既に65才となった大賢者”イデ”にとって年齢的にこれが最後の旅になると思われた。


王都で出迎えたのは王宮地下に隠遁していたフランス人医師にして易学者(占星術師)のノストラダムス。西方の知識人である彼に”イデ”はどうしてもあっておきたかった。二人の共通語はポルトガル語だ。


『ようこそ、おいで下さいました。セニョール”イデ”』


「お会いできて光栄です。ノストラダムス殿」


『黄金の国ジパングことジャポンの大賢者にお会いできて私も光栄です』


「ノストラダムス殿。此度はいくつか教えて頂きたい事があって参りました。貴殿は西方の易学も極められたと聞いております。ついては、我がスワ王国、並びに我らが始祖の地ジャポン、日ノ本の将来について知っている事を教えていただきたいのです」


『ジャポンの未来について知っている事は殆どありません。おそらくジャポンの事だと思えるのは、予言集第2巻91番に記した一遍くらいです。




”日出ずる国に大きな火が見られるだろう、

騒音と閃光をアクィロの方へ差し出しつつ。

球形の中で死と叫びが聞かれるだろう。

剣、火、飢餓によって居合わせた人々は死ぬ”




この”日出ずる国”とはほぼ間違いなくジャポンのことでしょう。このような恐ろしい事がいつ起きるのかは私も分かりません。』


「ノストラダムス殿は、どのように予言をされたのですか?」


『幻視です。突然私の眼前にその光景が広がってくるのです。なので、私自身もその光景がいつ、どこで起きる事なのか分からない事が多いのです。しかし、書物にして記録しておけば後世の人間であれば具体的に特定できるかもと思い、ラテン語で詩集に纏め出版したのです』


「らてんご?ですか」


『ラテン語というのはエウロパで昔使われていた言葉です。今は話者がおりません。言葉と言うのは生き物です。同じ単語であっても時代と共に意味が変わっていくのは普通にあることです。ですがラテン語のように話者がいなくなってしまった言葉は単語の意味が変節する事はありません。後世に残すのは死語であるラテン語は最適なのです』


「なるほど」


”イデ”明智光秀はノストラダムスのその深慮に感心した。


「では、我らスワ王国に関する予言は何かございますかな?」


『さっきも言ったが、私自身には何処で起こる事象の予言なのか分からない事が殆どなのです。ただ、どこで起きるのか分からないがいつ起きるのか凡そ分かってる予言があります。予言集第10巻72番の




“1607年7か月、

空から恐怖の大王が来るだろう、


アングーモワの大王を蘇らせ、

戦の前後に首尾よく支配するために”




この詩を含む書は私がフランスを脱出した後に同志が出版してくれたのです。アングーモワの大王とは且つて我がフランスを隆盛に導いたフランス国王・フランソワ1世の事です。国王はアングーモワ出身でしたから。


恐怖の大王とは、文字通りの意味です。思い出すのも恐ろしい光景が未だに私の目に焼き付いています。あんな恐ろしいのが空から来るとは、早く忘れてしまいたいものです。


7か月とは9月の事です。1582年にローマ教皇が暦を改定した為に、分かりにくくなってしまいましたが、出版当時の暦では”7か月”は9月を意味していました。いずれにしても1607年まで後14年しかありません。フランソワ1世の時代のように祖国フランスが蘇るのは嬉しいのですが、このアフリカにあんな恐ろしい物がやってこない事を祈るばかりです』


『もう一つお伝えしておいた方が良い話があります。あなた達の国の強力兵器・大砲についてです。ハプスブルグ家のウイーンの技師が、かなり昔に、砲身の内側に螺旋状の溝を施し、砲身内径よりやや大きめな弾を使用すると発射の際に弾が回転し射程距離も命中精度も向上するという発明がなされております。砲身に溝を掘ると言う制作の難しさと、砲身内径より大きい弾をどうやって装填するのか?という問題から普及には至りませんでした。ただ、スワ王国の皆さんのお力であれば上手く活用してくれるのではと思いお伝えしました。それで、あの恐怖の大王に叶うかどうかは分かりませんが、大砲の威力向上にはなる筈です。是非、研究してみて下さい』


その後、ジャムの作り方等ノストラダムスの医師としての一面を覗かせる話や他に幾つかの予言について話した後、疲れたのだろうノストラダムスはそのまま目を閉じ、沈黙してしまった。


”イデ”明智光秀は易経、陰陽道にも通じていたが、ノストラダムスをここまで恐れさす恐怖の大王とやらの正体は想像も出来なかった。


「よもや掃星か?」


と思ったが、易経の書物などアフリカには持参していないので確認のしようがない。ただ、14年後に隆起するというフランスという国と早めに誼を通じておくのが得策と判断した。


「大筒の威力向上か・・」確かに現在のスワ王国には腕の良い鋳物師、良質な鉄、砲術に詳しい者もいる。早速、研究を命じてみよう。


こうして、東西の知識人同士の会談は終わった。そして、ノストラダムスはこの会見から3か月後に天に召された。

ノストラダムスの予言集は大部分がフランス語で、一部がラテン語だったそうですが、本作では全編ラテン語ということにしました。

また、ノストラダムスは暦者として大変有名で当時から偽ノストラダムスが多くでたそうです。コンゴに隠遁していたのは本物でしょうか?それとも偽者が逃亡した姿だったのでしょうか?

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