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1593年4月27日 ポロナイ

コシャマイン:かつてのアイヌの英雄コシャマインの子孫?

ハウンテ:ヨイチコタンから来た樺太アイヌとの通訳担当

バフンケ:樺太ポロナイコタン長

ゴルゴロ:オロッコ族の長

ウクリナ:ニクブン族ヌイエ村の古老

カタングリ油田から戻ったヌイエの若者と羽黒党から報告を受けた。


無事に周囲のニクブンから桟橋と油田施設の建設に了承を貰えたそうだ。合わせて、その内、ヌイエで南の人との交易や塾が開かれることも説明してきたという。


これで、ヌイエでの用事は一通り終わったので、後は帰るだけなのだが、真田衆の一部が残りたいと申し出て来た。どうも、オハ視察の道中でニクブン女性と良い仲になった者がいる模様。忍びの結婚は本土ではなかなか大変なので、ここは祝いの言葉と共に残留を認める事にした。残るのは真田衆10名。あれ?オハに行ったのは6名だった筈。すると残りの4名は?彼らはヌイエの女性と犬の話題で盛り上がりそういう関係になったという。ニクブンでは犬の世話は女仕事なのだそうだ。


俺は餞別にと石鹸を多めに彼らに渡した。というのもオロッコもそうだがニクブンはあまり体を洗わない。衣服の洗濯もしないそうなのだ。この極地では不潔にしていても疫病の心配はなさそうだが、本州から来た人間にはやはり匂いは気になる。


慣れない樺太に定住し冬を越そうという彼らもある意味、真田十勇士である。彼らニクブンの命綱ともいえる清流を穢さぬよう、上手く石鹸を使って洗う術を見出して欲しいだ。また、夕が採用したニクブンの歩き巫女達は彼ら真田衆に預ける事にした、忍びの事なら彼らでも充分に指導できるだろう。


そんな訳で、ヌイエを後にし、ポロナイに戻って来た。バフンケとゴルゴロも程なく陸を通って帰還、彼らともここでお別れとなる。


2人はヌイエでの俺とウクリナの話を聞いていたので、ここ、ポロナイにも交易の場と塾を設置して欲しいと言ってきた。十三湊のアイヌ人で講師を務められるものがそんなにいるだろうか?コシャマインに聞いてみると、


『殿の命令なら皆喜んで志願するよ。それに樺太アイヌの人とは少し言葉が通じるし、オロッコの人も気さくな人が多いから大丈夫です』


と力強い答えが返ってきた。この旅で彼も少し成長したように感じる。


バフンケとゴルゴロには、塾の件は了解したと答える。問題は交易だ。今までポロナイとの交易ヨイチアイヌを介して行ってきたのだ。その点はハウンテの見解も聞かねばならない。やはりハウンテは、


『交易の仲介でヨイチは利ザヤを稼いでいたので、コタン長は了承しないでしょう』


とのことだった。ハウンテはバフンケとゴルゴロにも話を共有する。すると、ゴルゴロが少し待て!と合図してオロッコの若者に何事か指示している。やがて、若者が両手一杯に何かを抱えて戻って来た。


ハウンテの通訳によると、これらは黒貂くろてんの毛皮だと言う。


ヨイチのアイヌは魚しか交易してないので、これなら直接交易してもヨイチに不利益はないだろうとの事。


改めて見ると見事な毛皮である。石油から化繊を作らせているが化繊最大の弱点はウール類なのだ。俺が房総に羊、カシミア山羊、アンゴラ兎を入れ飼育をしているのもその為だ。化繊でウール系といえばアクリルがあるが、寒い時期に使用するウール衣料にアクリルは危険なのだ。寒い時期、火の側でアクリルを着ているとあまり高温になると溶けだし体に張り付いてしまう。しかも元が石油だからとても燃えやすいのである。そんな訳で毛皮は喉から手が出るほど欲しい品物である。ただ、現代人としては毛皮というのが少し気になる。確か毛皮採りは物凄い惨い殺し方をするんじゃなかったっけ?まあ、本土であまり人気が出過ぎて乱獲が始まらないよう、伊勢家で上手くコントロールすれば良いか!そう考え、ポロナイでの毛皮交易を開始することで合意した。あとはニクブンは採らないと言っていた貝類だが、オロッコや樺太アイヌは海豹がいなくならない程度なら採っても良いと言ってきた。もっともこれは缶詰が出来てからなので実際の交易は暫く先になるが、


「こちらの準備が整ったら、少量でも採集して行って欲しい」


と告げた。


黒貂の毛皮はアイヌも採るらしく、バフンケとゴルゴロから餞別に多くの毛皮を贈られた。こちらからは、米はとっくに切らしているし、大豆コーヒーを淹れて出す位しかお返しが出来ないのが情けなかった。

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