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第25話 出発と追跡

遅くなってしまい、すみませんでした。


少し短いですが、どうぞ、お読みください。

 〔デイ・ノルド王国〕中央部南側 公都〔スリオス〕 公城 スリオウシス城。


 お爺様、ガル叔父上、デオルード伯父上と僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドが、東部についての会談を行って一週間後、僕たち〔スカイテール連邦王国〕訪問の使節団一行は、〔スリオス〕を出発し、海洋都市〔アルカニス〕へと向かう準備を行っていた。


「食料は、問題ないか?」


「はい、問題ありません。ご協力、ありがとうございます、執事長。」


「何のこれしき、皆様の旅が、快適なモノとする事が、我らの務め。」


「はっ、そうですね。私も同じ思いです。」


 そう言って侍女は、荷物を馬車内に積み込み、執事長も、確認のリストを見ながら、荷造りの作業を監督していた。

そんな様子を僕は、談話室の窓から見ながら、デオルード伯父上を相手にボードゲームをやっていた。


「余所見をしておいて良いのか、エギル。時間は、待ってくれんぞ。」


 僕は、伯父上の声で、目の前に広がっている光景に再度集中しなければならなくなった。

僕たちが今やっているのは、魔導式チェスというモノである。魔導式チェスとは、ルールは、普通のチェスと同じである。しかし駒が動き、そしてリアルな戦場で戦う事が、通常のチェスとの大きな違いである。

そして今、僕の陣営は、伯父上の緻密な戦略によって半包囲の状態に置かれていた。今は、僕の手番なので打開策はないかと考えているのだけど、全くと言って解決策が思い浮かばなかった。

僕は、「ハッ~」とため息を吐いて、こう言った。


「リザイン。」


 その掛け声が掛かった瞬間、魔導チェス盤が、僕の方に『Lose』と表示し、伯父上の方には、『Win』と表示された。

それを見た伯父上が、こう言って来た。


「うむ、ちと判断が早かったな。まだ負けては居らんぞ。」


 そう言って伯父上は、自分の陣営の一部分を指していた。その場所は、半包囲している部隊の左端で、包囲を完成させる時に口を絞る役割を担う部隊であった。伯父上に促されてよく見てみると、左端の部隊が、半包囲をしている他の部隊に比べて、人数が少なかったのであった。

そこに気付く事が出来れば、ゲームに勝つことが、出来た可能性が高かったのであった。その後、伯父上の指摘を受けながら、戦いを再度検証し、もう一勝負して、その日は、明日の出発に備えて早く就寝したのであった。


 そして次の日、いつもよりも少し早く目覚めた僕は、公城の庭の一角で、何時もの鍛錬を行い、伯父上たちとの朝食を食べ終えて、旅装に着替えると、公城の正面玄関に向かった。

正面玄関で、伯父上たちの見送りを受け、馬車に乗ると、僕たちは、海洋都市〔アルカニス〕へと向けて、公都〔スリオス〕を出発したのであった。






 そんな様子を監視していた者がいた。その者は、普通の背丈で、容姿も普通、そして着ている服も普通と何もかも普通な男であった。

彼は、エギルたちが乗った馬車列が自分の前を通り抜けたのを確認すると、その後について行くように歩き出した。

馬車列から一定の距離を取り、あたかもこれから旅に向かう旅人の様に、振舞いながら、公都の門へと向かい、公都を出たのであった。

そして馬車列を見失う事が無いスピードに歩く速度を上げたのであった。

しかし、その速さになっても、往来する人々からは、全く認識されなかったのであった。


お読みいただきまして、ありがとうございました。

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