第16話 果物と公都
どうぞ、お読みください。
〔デイ・ノルド王国〕中央部 公都 〔スリオス〕近郊 平原
僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、先王と先王妃であり、僕の父方の祖父祖母であるマルトス・フォン=グロード=ノルド、ユキコ・フォン=クウ―ルス=ノルド及び叔父夫妻であるガルベル・フォン=マイスト=ノルド、シルビア・フォン=トリーネ=ノルドと共に三台の馬車に揺られながら、一週間をかけて今、公都〔スリオス〕が見える平原へとやって来ていた。
そして今、僕は、お爺様たちが乗る馬車に同乗しながら、窓の外に広がる景色を見ていた。
「エギル。はいおやつよ。」
と言ってお婆様が話しかけて来た。僕は、外の景色から視線を外してお婆様の方に向き直ると、お婆様の手に何やら皮が向かれたオレンジ色の物体が載っていた。
僕は、初めて見るその物体に「何これ?」と思いながらお婆様の手から持ち上げると、鼻に近づけて匂いを嗅いだ。
すると鼻に少し酸っぱい感じとかなりの甘みを感じた僕は、お婆様に何なのかを尋ねた。
「お婆様、これは何ですか?」
するとお婆様はニコリとしてこう教えてくれた。
「これは、ミカンという果物よ。私の故国で栽培されている果物の一つよ。」
そう言ってお婆様は、椅子の横に置いていたバスケットからミカンを取り出すと、皮を剥き、お爺様に差し出した。
お爺様は、読んでいた本を閉じるとミカンを受け取り、お婆様に「ありがとう。」と言ってミカンの実を半分に割り、それから一つずつ割りながら食べて行った。そしてお婆様も新しいミカンを取り出し、皮を剥いてお爺様と同じ食べ方をしだした。
僕も二人に倣い見せてくれた方法でミカンの実を割り、割った片方から実を一つ剥がして口に運んだ。
口に入れて一回噛むと口の中に甘みと酸味を同時に感じ、そして口の名が爽やかになった。
ふっとそれに気付いた時には完食しており、口の中には、ミカンの良い匂いが残っていた。
僕は、お婆様の故郷の果物なのに何故王国に有るのかと疑問に思い、お婆様にその事を聞いた。
するとお婆様ではなく、お爺様が、こう答えてくれた。
「なに、婆様と結婚した時、その時の贈り物にミカンが、含まれておってな。余りのうまさに気に入ってしまって、曽爺様に無理を言ってミカンの木を輸入してもらい、作る人も派遣してもらって、後宮の森を一部切り開いてミカン畑にしたのよ。そこから我が国でもミカンを栽培するようになったという訳だ。」
僕は、「へぇ~、そうなんだ。」と言って相槌を打ったのであった。ちょうどその時護衛をしている近衛騎士が載っている馬を寄せてきてこう言って来た。
「先王陛下、御歓談の所失礼します。」
お爺様は、それを受けて馬車の窓を開けると近づいてきた近衛騎士にこう言った。
「どうした?」
この問いに近衛騎士は、こう返答した。
「はっ、この先の場所で休憩をするべきと愚考いたしますが、いかがいたしましょう?」
それを聞いたお爺様は、「うむ。」と言って少し考えこむと、こう問い返した。
「〔スリオス〕までどのくらいだ?」
そう問われた近衛騎士は、こう答えた。
「はっ、後二時間で到着すると思われます。」
それを聞いたお爺様は、また少し考えると、近衛騎士にこう伝えた。
「そうだな。朝から走り通しで馬たちも疲れてきておる。事故を起こさぬためにもこの先の休憩ポイントで休むのがよかろう。皆にそう伝えるように。」
お爺様の言葉を受けた近衛騎士は、「はっ。」といって馬車から離れると休憩を伝達する為、馬を走らせた。
そしてそれから十五分後、休憩ポイントに到着した僕たちは、馬車から降りて休憩を始めたのであった。
そして僕は、侍女たちが、簡単な軽食を作ってくれるのを待つ間、リウム先生に聞きたい事が出来たので、それを聞くために自分の馬車へと戻ったのであった。
自分の馬車に向かうと、丁度リウム先生が扉を開けて降りてくるところであった。僕は、さっそく先生に駆け寄るとこう言った。
「リウム先生、お疲れ様です。」
これを聞いたリウム先生は、こう返してきた。
「はい、殿下もお疲れ様です。」
そして僕は、早速疑問に思っている事を質問した。
「先生、公爵家は六家あるのに何で公都は四つだけなんですか?」
それを聞いた先生は、こう言って来た。
「では、休憩が終わり出発した後にお教えしましょう。少し長くなりますから。」
と言うと先生は、侍女たちが待っている場所へと向かったのであった。
僕も先生の後を追いかけて侍女たちが、待っている場所に到着すると、お爺様たちとガル叔父上たちが、待っており、僕も用意された席に着いた。
そして出された軽食を食べながら、どんなお話が聞けるのかをワクワクしながら出発を待ったのであった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




