表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/129

第14話 対策と偵察

どうぞ、お読みください。

 ここで、事態を明瞭にするため、時間を一週間前へと戻す。


 〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕領都 〔マーリ〕領主館


 元〔ドルパース伯爵領〕の統治を任されている王国内務省の地方統括官と、同じく元〔ドルパース伯爵領〕の治安維持を任されている地方警備隊隊長は、北で領を接しているグーブスト伯爵の抗議と領民の不信感及び自分たちの今後を考えて手を組むと決め、一の森に潜伏していると思われる盗賊の討伐について真剣に議論を開始した。


「隊長、まずは領民の安全の徹底だ。その為にはどうすればいいと思う?」


 統括官が、こう切り出すと警備隊隊長は、こう返してきた。


「そうだな、まずは、一の森への立ち入りの禁止が、安全確保には最適だと思う。それと夜間の外出制限だな。」


「やはりそれが、妥当だな。」


 そう言って統括官は、納得したが、その弊害についてこう述べた。


「森の立ち入りや夜間の外出を制限することによる、領内の経済的損失についてはどう考える。」


 この統括官の問に対して隊長は、こう答えた。


「うん、大きいと推測する。と言う事は、何か策が有るのか?」


 その答えに満足したのか統括官が、こう切り出した。


「ああ、領内の予備費だ。これを使う。」


 それを聞いた隊長は、「なるほど。」と言って頷いたのであった。


 この統括官が言った予備費とは、何なのか? それは、ドルパース伯爵家の取り潰しの時に王国政府が接収した伯爵家の有形資産を売却した際に捻出された危機対応に使う資金の事である。

統括官は、これを使い狩人や木こりなど一の森を生活の資金源としている職業の者たちと、領都などで飲食店などを営んでいる領民たちへの補償金として充てることを考え付いたのであった。

そして統括官は、更にこんな事を隊長に話した。


「事態が、解決すれば、政府に掛け合いこの予備費の穴埋めをすれば、私たち二人の評価は上がる事に成る。そうすれば王都に大腕を振って戻ることが出来るぞ。」


 それを聞いた隊長も「うむ、そうだな。」と言ったのであった。そして二人は、領内に布告する為の書類を作成し、サインを行った。そして統括官は、部下の一人を呼び出し、布告を次の日に発する様に命じたのであった。

更に統括官は、別の部下の官僚を呼ぶと予備費で賄うべき資金は、どれ位であるかを試算する様に命じた。

そしてそれが終わり、続いて盗賊討伐の話し合いに移ったのである。


「それで隊長。盗賊たちの状況は、分かっているのか?」


 統括官が、こう問うと、隊長は、こう返してきた。


「いや、まだ完全に把握しているわけではない。ここ数日、偵察隊を編成して探らせているが、思ったほど進んでいない。」


 隊長のその言葉に、少しの焦りが含まれているのに気付いた統括官は、こう言って来た。


「何が、調査の弊害になっているのだ。」


 その問いに対して隊長は、こう告げた。


「一の森を案内してくれる案内人の不足だ。狩人たちも木こりたちも仲間たちが、死んだために案内するのにかなり消極的になっている。」


 それを聞いた統括官は、少しばかり考えるとこう切り出した。


「よし、それなら、報奨金を出そう。それなら少し調査を前に進めることが出来るだろう。」


 それを聞いた隊長も、「なるほど。」と言って賛成すると統括官は、再び別の部下の官僚を呼ぶと、報奨金の計算と募集の布告を出すように命じたのであった。

そして一通りの話し合いが終わり、隊長は、地方警備隊の詰所に戻ると、偵察隊のメンバーを呼び寄せ、この事を伝え、そしてこう告げたのであった。


「いいか、諸君。君たちに与える時間は、明日から5日だ。その間に情報を持って帰るように。以上だ。 解散。」


 そして次の日領都と領内の村落に布告が為された。そしてその布告から1時間が経った頃、領主館に案内役を買って出ると言ってやって来たのは、狩人と木こりの兄弟であった。

それを知らせを受けた警備隊は、直ちに偵察隊を招集し、この兄弟を付けて一の森へと派遣したのであった。


 偵察隊は、兄弟たちの案内の元、一の森の奥へと進み、盗賊たちに見つからない場所を探しながら盗賊たちが築いた砦を見る事の出来る場所まで到着した。

その砦を見た偵察隊の隊員たちは、その規模に圧倒されていた。そして砦の情報をさらに得ようとした一人の隊員が、砦に近づこうとすると、案内役の兄弟の内、狩人の兄が、その隊員を抑えつけた。

「何するんだ。」と憤った隊員は、狩人に食って掛かったが、狩人は、「これを、見ろ」と言って地面に触れるか触れないくらいの高さで木と木の間に張られた糸を見せて来た。そして隊員に対してこう言った。


「これを踏んだら俺たちは、偵察をする前にお陀仏だ。」


 それを聞いた隊員は、狩人に対して「すまない。」と言って謝罪すると、偵察隊の仲間に謝ったのであった。

するとちょうどよく偵察に最適な場所を探していた弟の木こりが戻ってきた。彼は、盗賊たちの警戒ラインの外に監視と偵察に適した場所を発見したと言い、そこに偵察隊を案内した。

案内された場所に到着した偵察隊は、それから4日間砦内の動きと、人数などを詳細に調べ上げ、再び兄弟の案内により、一の森を脱出し、警備隊の詰所に戻ったのであった。

 そしてその偵察結果を受けて警備隊隊長は、警備隊に全招集をかけたのであった。


 そして警備隊詰所の前に警備隊全員が、集合し、隊長が、指令を下した。


「全員、一級装備を着用。これより一の森に潜んでいる盗賊共を残らず殲滅する。」


 その指令を聞いた隊員たちは、準備を開始したのであった。


お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ