第2話 祝福と招待
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〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕 王宮 中庭
僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、早朝いつもの様に、後宮の後ろに広がる森に設定された、障害物コース踏破を行っていた。
「それ、行くぞ。」
と言って僕は、木から木へと飛び移るためのワイヤーを投げる。しかしそのワイヤーは、少し手前で木に引っかからずに落ちてしまったのである。
「あ~、やっぱり片目だけじゃ距離感が分からないな。よし、もう一度やってみよ。今度はもう少し遠くに投げよう。」
そう言って僕は、巻き取ったワイヤーを再び投擲した。そして今度は、目的の枝にしっかりと架かり、少し引っ張っても抜けることが無いのを確認すると、ワイヤーに捕まって、次の木へと飛び移った。
次の木に飛び移り、目的の枝に降りたたったその時、横合いから石つぶてが飛んできた。僕はそれをギリギリで避けたが、顔に少し掠ってしまったのであった。
そしてその反動で、バランスを崩してしまい、ワイヤーを持ったまま地面に落下したのであった。
トス
落下する直前に「浮遊<フロート>」の魔術を使用して軽いショックを受ける程度で、地面に降りた僕は、再びクリアできなかったことに落ち込んでしまった。
「はっ、これで踏破失敗連続百回か。」
そうなのである。僕が左目の視力を失ってから、この障害物コースを踏破できたことは、一度もない。
片目だけであるため、どうしても反応がワンテンポ遅れてしまい、障害物を回避し損ねたり、距離感が分かりにくくなっているため、木から木へと飛んだ時に落ちてしまい、踏破不成功になるのであった。
そしてその事実が、僕自身に焦りの気持ちを芽生えさせていた。
「はあ~」
と言って大きくため息をついた僕は、立ち上がると服に付いた土を払い、師匠たちがいるコースのゴールへと歩き始めたのであった。
しばらく歩くと森の出口が見えて来た。僕は、そのまま進んで行き森を出ると師匠たちが、待っていてくれた。
「ただいま戻りました。」
僕は、そう言うと師匠は、「うむ。」と言って頷き、こう続けた。
「よし、今日の稽古は終了だ。」
そう言い終えると師匠は正座をして、僕や兄弟子たちが座るのを待った。兄弟子たちもそれに続いて正座をし、僕も急いで正座をすると、師匠に礼をしてこう言った。
「ありがとうございました。」
そう言い終えると僕は、立ち上がり、一旦気持ちを切り替えるため、「ふぅ~」と息を吐き、後宮へと歩き出した。
そして後宮に到着すると、僕付きの侍女たちが、部屋の扉の前で待ち構えてあり、こう言って来た。
「殿下、お湯浴みの時間でございます。」
僕は、少しげんなりしながら侍女たちに付添われながら浴室に向かい、侍女たちに手伝ってもらいながらお風呂に入ったのであった。
そして浴室から出て体を乾かすと、新しい服に着替え、父上たちと共に食事をするため、ダイニングルームへと向かったのであった。
父上たちと共に朝食を食べ終えると、一旦部屋へと戻り、今日行われる行事で着る服装に着替え、そして同じく着替えた父上たちと共に後宮を出ると、中庭を通って王宮へと進み、さらに王宮の正面玄関の扉を通り、外に出ると、待機していた馬車に乗り込んだ。
そして父上たちも乗り込んで、近衛騎士たちの護衛を受けながら、王城を出て、城下町にある大聖堂へと向かった。
大聖堂に行く道すがら城下町に住んでいる国民が、道の両側に出ていて僕たちが乗った馬車列が通ると、大喝采を受けた。
そしてその喝采の中を進み、大聖堂に着くと、馬車から降り、集まってくれた人々に答えながら、大聖堂の中に入っていた。
そして神々に僕が無事に七歳になったことを告げる儀式と、生まれる時に受けた簡易の洗礼ではなく、本洗礼と呼ばれる正式な洗礼が、始まった。
僕は、大神官に促されて祭壇の前に立つと、神々の絵がずらりと並ぶ前で、神前での礼を行い、七歳になった事を報告し、生まれて来た事を感謝する言葉を言った。
そしてその後、大神官による本洗礼を受ける事に成った。
そしてそれは起こった。
大神官が、神の言葉で僕を守護してくれる神は誰であるかを問うたのである。すると僕の周りが虹色に輝きだしたのであった。
それを見た大神官は、こう告げたのだ。
「オ~オ、奇跡が起きた。神々は皆、エギル殿下を祝福為されている。」
そして大神官は、虹色の光に包まれている僕に対して洗礼の言葉を述べた。すると虹色の光は、収まったのであった。
儀式の後、正式に「パラン」と刻印された印章を受け取り、僕たちは大聖堂を後にして王城へと向かい、誕生会に出席をしたのであった。
そしてその席において招待された〔スカイテール連邦王国〕の大使が、僕と父上と母上に挨拶に来た時、僕は、とある事件に巻き込まれることとなった。
しかしこの時は、そんな事に成るとは思っても居なかったのである。
「エギル殿下、お誕生日おめでとうございます。両陛下もご健勝であられることをお喜び申し上げます。」
「うん、ありがとう。」
と僕は告げ、父上は、こう告げた。
「うむ、かたじけない。」
そう言われた大使は、平伏を解き、少し顔を上げて、こう言って来たのであった。
「付きましては、我が国の建国祭にノルド王家の方々を招待したいと考えております。王家の方の我が国への派遣をお考えくだされば幸いでございます。」
そう言うと大使は、立ち上がり、礼をして挨拶の列から離れたのであった。
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