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第1話 闇を吹き飛ばす大風

どうぞ、お読みください。

 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕 王城南区 錬武場


 僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、練武場において須針師匠と共にとある修行を行っていった。


 ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ


 カン コツン カン コツン コツン


「それまで。」


 須針師匠が、訓練の終了を告げる。その声を聴いた僕は、手に持っている木刀を腰に納刀して床へと正座して片目を覆っていた布を取り、今の訓練の結果を見回した。

僕が座っているすぐ近くに、細長い木の棒が落ちており、その棒には、赤色の染料が塗られている。そしてその染料は、僕が着ている道着にも付着していた。その数は、三つ。須針師匠が投げた木の棒は五つであったので、二つが迎撃に成功し、三つが失敗であったことが良く分かるのであった。

そして迎撃できた二本の木の棒は、僕が座っている位置からだいぶん遠い所に落ちていた。

そして同じく結果を確認した須針師匠は、「ふむ。」と言って少し考えてからこう続けた。


「短期間の内にここまで習得した者は、非常に少ない。エギルよ、これは誇ることである。しかしまだまだ遠い。しっかりと修練する事、それが自ずと結果に結びつく。よいな。」


 僕は、師匠の言葉を受け、気持ちを新たにしながら、こう返した。


「はい、しっかりと学んでいきます。」


 そう言い終えると、礼をして師匠に「ありがとうございました。」と言って今日の朝稽古を終えたのであった。

 僕は、練武場の入口へと向かうと再び師匠に向かって礼をしその場を後にし、道着から平服に着替えるため、後宮にある自室へと向かい歩き出した。

暫く歩いていると馬の嘶きが聞こえて来た。


 ヒヒィーン


 僕が、その声に釣られて顔を上げてると、そこには、後宮の後ろに広がる森で助けたベエヤードと呼ばれる種類の二頭の天馬で、その内の子供の天馬である、スニテールであった。


「えっ、スニテール。どうしてこんな所に居るの?」


 僕が、そうスニテールに問うと、スニテールは、こう返してきた。


《エギルヲ、サガシニキタ。キョウハ、ボクトトオクヘイクヤクソク。オソイカラ、サガシニキタ。》


 僕は、そう言われてこの後の予定を思い出していた。この後の予定では、朝食を食べた後、母方の祖父であるエルドミル・フォン・アルドール王国公爵と共に遠乗りに出かける事なっており、その遠乗りの際に乗る事に成っていたのが、このスニテールであった。

スニテールは、助けた時は、まだ仔馬であったが、この一年で成長し、もう成馬と同じ大きさとなっていた。

僕は、スニテールに対してこう言った。


「スニテール、少し待ってくれる。朝食を食べて、お爺様が来てから、出発するから。」


 そう言うとスニテールは、こう返してきた。


《ウン、ワカッタ。デモセッカクヤッテキタンダカラ、ボクノセニノリナヨ。》


 そう言うとスニテールは、足を屈めて低くなると、僕が背に乗っている鞍に乗りやすくなる様にしてくれた。

僕は、鐙に足を載せ、鞍の掴まるところに手を持っていき、勢いをつけて鞍の上に跨った。

そして片方の足も鐙に入れ、手綱を持つと、スニテールの腹を締めて前進を促した。スニテールは、指示通りにゆっくりとスピードを上げて行き、並足ぐらいのスピードで駆けだした。

そしてモノの十分で、王宮の正面玄関に着き、スニテールを停止させ、鞍から降りると、慌ててやってきた馬丁にスニテールを任せて、僕は朝食を食べに後宮へと向かったのであった。

 それから朝食を父上たちと共に食べて、部屋へと戻ると、乗馬の時に身に着けている服に着替えて、部屋を出て、中庭へと向かい、お爺様を待つために中庭で待機していると、後宮の扉が開いて、乗馬用の服を身に着けた、僕の母上であるマリアンヌ・フォン=カルティア=ノルドが、やってきたのであった。


「えっ、母上どうしたのですか? その恰好は?」


 と僕が、母上に質問すると、こう母上は返してきた。


「あら、お爺様から聞いていないの? 今日は私も貴方とお爺様と共に遠乗りに出かけるのですよ。」


 それを聞いた僕は、「へぇ?」と言う間抜けな声を出したのであった。僕が、少しばかり固まっていると、事情を知っている人の声が聞こえて来た。


「ハハハ。エギル、マリア、待たせたな。」


 いつも王城で会う時とは、打って変わって砕けた言葉遣いをするお爺様が、やって来ていた。

僕は、お爺様の声で再起動すると、お爺様に質問をぶつけた。


「お爺様、母上と共に遠乗りへ行くというのは、本当ですか?」


 その質問に対してのお爺様の返答は、こうであった。


「うむ、そうじゃ。王妃になったとはいえ、健康に過ごすためには、運動は欠かせん。エギルも母上には、長生きしてもらいたいじゃろう?」


 そう言われて僕も「はい。」と頷いたのであった。そしてお爺様は、こう続けた。


「マリアは、幼少の頃から儂を師として乗馬をして居った。腕前は、非常に高い。心配せずとも良い。」


 そう言って僕に言い聞かせると、母上への元へと歩いて行って、何かを話しだしたのであった。

すると後宮から、近衛師団に所属する女性騎士たちが出てきて、護衛の準備を始め、僕と母上、お爺様に二人ずつ付き、護衛を開始したのであった。


「では、出発しようかの。」


 お爺様が、そう言うと、僕たちは歩き出し、厩舎へと向かったのであった。厩舎に着くと馬丁達が、僕たちが乗る馬の準備を完了させて待っていた。

僕は、スニテールの背に再び跨り、母上は、王宮に挙がる時に持参したと言う自分の愛馬である、ルストに跨り、お爺様は、自分の愛馬であるラルゴに跨った。

近衛騎士たちも自分たちの馬に跨り、配置に着くと、出発の準備は、完了した。

そしてお爺様が、こう言った。


「では、よくぞ。ハッ。」


 そう言うとお爺様を載せたラルゴは、駆け足で駆けて行き、続いて母上の跨るルストも母上の掛け声とともに駆けだした。

ぼくもスニテールに駆け足の指示を出して二人に遅れないように付いて行ったのであった。

そしてもちろん護衛の騎士隊も同じように出発したのであった。


 僕たちは、王城から出て、そのまま城下町を駆けて行き、首都から出ると、一番先頭を護衛の女性騎士が務め二番目にお爺様、三番目に護衛の女性騎士を挟み、四番目に母上と僕、更に周りに二人ずつの騎士、そして五番目と六番目に騎士と言った隊列で、遠乗りに出かけたのであった。


 その後僕たちは、二時間ほど首都周辺を遠乗りし、王宮へと帰還したのであった。


お読みいただきまして、ありがとうございました。


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