第42話 エピローグ
第二章完結です。
どうぞ、お読みください。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 謁見の間
「これより先の戦役で活躍した者たちに対して、国王陛下より勲章が授与される。」
謁見の間に儀典官の声が、響き渡る。そして儀典官に名前を呼ばれた者たちは、父上の前へと進み出て勲章を受け取り、元に位置に戻っていた。
するともう一人の儀典官が、僕の所に来て準備をするように言って来た。僕は、片方の肩に掛けている王族の身分を表すペリースを直し、身嗜みを整え、母上たちと共に立っている場所を抜け出し、謁見の間の外へと出て、廊下を少し進み、謁見の間へと続く扉の前にやって来ていた。
しばらくして、先程僕に準備するように言って来た儀典官がやって来てこう言った。
「間も無くです、殿下。」
「うん、分かった。」
僕は、そう返事すると、儀典官は、扉の両脇に立っている近衛兵たちに合図を送った。その合図を受けた近衛兵たちは、手に持っている槍の石突を大理石の床に打ち付け、こう言った。
「〔デイ・ノルド王国〕第一王子、エギル・フォン=パラン=ノルド殿下、御入来。」
その声が響くと謁見の間に続く扉が、ゆっくりと開かれ、人一人が余裕で通れる広さまで開閉された。
そして僕は、その間を通り、謁見の間へと再び入ったのであった。僕は、王族が国王に謁見する時に立ち止まる白い大理石にのラインまで進んで行った。
その間、この場に参列している貴族たちが、ヒソヒソと話をしているのが聞こえて来た。
「やはり、左目を失われたと云うのは、本当の様だ。」
「あぁ、なんと痛々しい事か。」
「醜い傷にならなければよいが。」
「その通りじゃ。」
と口々に僕の左目の事を話していた。そしてそれを聞き流しながら、白い大理石で出来た線まで来ると王族が国王に対して行う王国礼をして平伏したのであった。
そして父上からの言葉を待った。
「エギルよ、此度の戦争では、其方が献策した作戦によって我らは優位に戦いを進めることが出来た。国を代表し心より礼を述べる。」
そう言って父上は、軽くではあるが頭を下げたのであった。そしてそれに倣い貴族たちも頭を下げる。
そして頭を上げた父上は、こう尋ねて来た。
「何か、申し述べることは有るか?」
「はっ、ございます。」
僕は、そう言って下げていた頭を上げるとこう父上に言った。
「勲章の授与を辞退をさせて頂きます。」
その言葉を聞き、謁見の間にどよめきが起こるが、父上は、こう返してきた。
「何故、勲章を辞退する? 理由を申せ。」
僕は、父上の問に対してこう答えた。
「僕は、まだまだ未熟者です。その様な状態にある時に勲章を貰えば、この先増長する可能性も否定できません。その為に辞退をするのです。そしてこの先さらに研鑽を積み、再び王国への貢献が出来たのならば、授与を受けたいと思います。」
それを聞いた父上は、ニヤリとすると「ハハハハハハ。」と言って笑い出し、こう続けた。
「うむ、其方の考え誠に殊勝な事である。大いに研鑽に励むが良い。しかし、信賞必罰も王国の習い、よって勲章ではなく、其方の研鑽に用いる物を送ろう。」
父上が、そう言うと儀典官が進み出て、褒章の品となる目録を読み上げ、それを父上に渡す。僕は、それを見てから立ち上がり、玉座へと近づき、階段を少し上がり、父上から目録を受け取り、再び、元の位置へと戻ったのであった。
僕が、元の位置に戻ると儀典官が進み出て、こう発した。
「これにて、勲章授与式を終わる。陛下が退席なさる、全員、頭を垂れよ。」
ザっという音がして参加者全員が、父上に対して頭を下げると、父上は、玉座より立ち上がり、謁見の間を退室していったのであった。
そしてそれに続いて僕も退室し、後宮へと戻っていったのであった。
世界のとある場所
黒いローブを頭からすっぽりと被った人物が、何かが書かれた紙を読みこう呟いた。
「ふむ、やはり失敗したか。性急に事を運ぼうとした事が、いけなかった様だな。まあいい、どのみち十八歳までに殺せば、良いのだから。そしてそれに失敗してもいくらでも挽回できるのだからな。」
そう言うと黒いローブを纏った人物は、持っていた紙に火をつけると燃やし、それを捨て、その場所を立ち去ったのであった。
そして燃え尽きた紙は、何処からか吹いてきた風によって四散したのであった。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 中庭
僕は、勲章授与式が終わった翌日から、再び訓練を再開した。左目の視力を失ってしまったので、それを考慮した新しい訓練の開始でもある。
そしてリウム先生たちは、僕に何やら、面白い物をくれるらしく、その作業をしている。僕は、それも楽しみにしながら、道着を着て中庭へと出て、兄弟子たちと合流し、やって来た先生たちに向かって礼をし、こう言ったのであった。
「今日も、お願いします。」
僕は、元気にそう叫ぶと、いつもの様に走り込みに向かったのであった。
いつもの日常が、返ってきたと実感しながら、僕は、駆けていく、これからの未来に何が待ち受けているのかワクワクしながら、僕は、走って行ったのであった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
今後の予定に付きましては、活動報告に掲載しますので、そちらをお読みください。




