第41話 依頼と復活
再度延期をしてしまい、申し訳ありませんでした。
どうぞ、お読みください。
「ここは、もしかして僕の心の中?」
ふと意識が、鮮明になり、目を開けるとそこには、暖かな光に満ちた空間が、広がっていた。
この景色には、非常に見覚えがある。と言う事は、僕は三度創造神によって自分自身の心象世界へと連れてこられたという訳である。
「まあ、今回呼び出された原因は、容易に想像がつくけどね。」
僕は、そんな事を思いながら、「水を」と言ってコップに入れられた水を出現させると、それを飲み、一息つくと、先程の戦闘の様子を改めて思い出していた。
僕は、暗殺者と思われる襲撃者達のボスとの一騎打ちを制する為に、毒で視界が確保できていなかった左目に身体強化の魔術を使い、強制的に視界を開かせ、そして常として僕自身の身体に掛けている負荷を加える魔術を解き、そして予め準備していた、身体強化の魔法を発動した。
そして準備が整った瞬間、僕はボスが動くよりも先に動き、ボスが、僕の首を突き刺そうとしたナイフの切っ先を弾き飛ばし、そして須針師匠が、前に見せてくれた九我流応用技「閃突抜き」をイメージし、それをボスに見舞ったのであった。
しかしボスも暗殺者達のトップを務めるだけの事はあり、僕の刀に刺された瞬間に、弾き飛ばされナイフを強引に戻し、僕の左目を浅くではあるが、傷つけ、僕から左目の視界を奪い去ったのであった。
僕は、その痛みで刀の柄を離してしまい、後ろに生えていた木に激突した。そして暗殺者のボスは、ニヤリと笑いながら、大の字に仰向けに倒れ、そのまま絶命したのであった。そして僕は、気絶し、ここに居るのであった。
「我ながら、無茶しすぎたな。でも生き残るためだったし、しょうがないよ。」
と言って自分の事を正当化しようとした時、声が聞こえて来た。
「そうですか、貴方は自分の愚かさが分かっていないようですね。」
と言って僕の自己正当化をバッサリと否定したのは、創造神の女神であった。女神は、そのまま僕が腰掛けているベットまで来ると、僕の隣に座り、こちらを見て、こう言いだした。
「なんで、あんな事をしたんですか? 自分は強いと思って行動したのならば、思い上がるのも甚だしいです。よく考えて行動してください。」
あんな事とは、僕が襲撃者を捕縛しようとした事である、あの時は、咄嗟にそう判断してしまったが、よく考えれば、こんな事には、なっていなかったのである。そこは素直に反省するべき事である。
そんな事を考えていると、女神がいきなり、僕を強く抱きしめた。そして僕を抱きしめながら、目から大粒の涙を流していた。
僕も女の人に泣かれるは、非常に気まずいので、ここは素直に謝るべきだと思いこう言った。
「軽率な行動と、無鉄砲な事をして、皆に迷惑をかけて、ごめんなさい。」
それを聞いた女神は、こう言った。
「はい、よく出来ました。でも本当に危機の時には、自分の力を信じてくださいね。」
「はい、分かりました。」
僕は、そう言ったのであった。そして女神は、泣き止むと、ここに読んだ理由を話し始めた。
「コホン、それでは話していきましょうか。」
女神は、涙を流したのが恥ずかしかったのか、一旦咳払いをすると、そう言って来た。が、顔は、泣いたことの羞恥心で、真っ赤になっていた。
僕は、それは指摘せずに、「はい、お願いします。」と言って続きを促した。
「エギルは、覚えている? 貴方が、前世でやっていたゲームの中に、エギルと言う王子が、登場しないのは?」
「はい、覚えています。」
女神は、そんな事を話し始めたので、こう答えた。すると女神は、こう言って来た。
「記憶は、完全に統合された様ね。うん、話しても問題ないわね。」
その言葉に僕は、キョトンとした顔をしながら聞いていた。そして女神は、話し始めた。
そして僕は、驚愕の事実を知ることとなった。
女神の話によるとこういう事だ。僕が生まれ変わったエギルが、ゲームの中に登場しないのは、ゲーム開始時点ですでに亡くなっているためである。
その理由は、今回終結した第二次林伐戦争が原因であった。
第二次林伐戦争の本当の開戦は、大陸歴2342年の10月10日である。先制攻撃したのは、〔ノース・ザルド王国〕からではなく我が国〔デイ・ノルド王国〕からであった。
では何故、我が国から攻撃をしたのか、それは開戦時から遡る事12年前に起こったことが、一番の原因であったからだ。
それは「第一・第二王妃誘拐事件」、そう今の世界に置いて、僕が防ぎ、未遂に終わった事件が、起こっていたのである。
誘拐を支持したのは、もちろんピスグリスである。彼は、影と呼ばれる〔ノース・ザルド王国〕国王直轄隠密部隊を使い、まんまと僕たちが構築した警備網を突破、そして両王妃を攫っていたのである。
そして両王妃の行方が分からなくなってから1週間後、〔ノース・ザルド王国〕から〔デイ・ノルド王国〕へ脅迫が行われたのであった。
『両王妃を返してほしければ、領土を明け渡せ。』
と言っても普通であれば、両王妃の事を見捨ててでも、国土を割譲を阻止するのだが、この時父上は、まだ幼かった姉上と僕のために母親を取り戻すことを決意、内閣、議会、枢密院、果ては大法院からの反対を強制的にねじ伏せて、母上たちを取り戻したのであった。
その代償として、〔ノース・ザルド王国〕に対して〔シテネモン要塞〕を含む国境地帯とそれに隣接した王家直轄領を渡したのであった。
ただ幸いであったのが、母上たちが無事に我が国へと帰ってくることが出来たことだ。その理由は、母上たちが妊娠していたことである。ピスグリスは、妊娠した女性を嫌う性癖を持っていたため、連れてきてた母上たちに興味を失い、辱めなどをすることは、なかったのである。
しかし、母上たちは無事に戻っても、父上の国王として権威と王家の威信は、低下したのは事実であった。
その後、割譲された王室直轄領と国境地帯に隣接した諸侯たちの離反が相次ぎ、僕が成人する頃には、国の八分の一が、〔ノース・ザルド王国〕へと渡っていたのである。
成人を迎え、王子として国家の仕事を任されることが多くなった僕は、父上の汚名返上を強く願い、周囲の助けを借りつつ『国土奪還計画』を策定し、父上を元とした王国上層部に提案した。
王国上層部は、僕が軍を率いるならと言う条件で、この計画を了承、そして我が国の歴史が、始まって以来の初の先制攻撃を行ったのであった。
先制攻撃によって橋頭保を確保した『国土奪還遠征軍』は、橋頭保を中心に丸二年をかけ丹念に〔シテネモン要塞〕が存在する国境地帯を囲む地域を奪還していった。
そして国境地帯から、〔ノース・ザルド王国〕を追い払おうとした時に、僕は、何者かによって暗殺されてしまったのであった。
その後、この計画は、ゲームでの攻略対象の一人であり、僕の弟でもある第二王子が、成人して引継ぎ、完遂することになる。
女神は、話を終えると一息つき、そしてこう続けた。
「でも、これは本来の歴史ではないの。」
女神は、そう言うと本来の歴史を語りだした。本来の歴史では、僕は、暗殺されることなく生きており、長生きをするとの事であった。
そして女神は、こう告げて来たのであった。
「何者かが、この世界の事象に干渉して歴史を歪めている。それをゲームり世界の私は、止めようとしたけど、止めることが、出来なかった。」
そう言うと僕の方へと向いて、こう言った。
「だから、お願いします。歴史を歪めようとしている者たちから、この世界を救ってください。」
僕は、その依頼を聞いて少し考えこんだ。しかしどうやら答えは決まっているのであった。
「はい、僕で力になれるなら、お受けします。」
僕が、そう言うと、女神は、少し安心した表情になるとこう返してきた。
「ありがとう。協力に感謝します。」
その言葉を聞いた直後、僕の周りが光りだした。どうやら目覚めが近いようだ。すると女神は、ベットから立ち上がり、僕の方へと向くと最後にこう言って来た。
「では、またお会いしましょう。」
僕も「はい。」と言って女神の言葉に了承の意を示すと、心象世界から現生に向かって行ったのであった。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕後宮 エギル自室
僕は、朝の鳥の声に反応して、目を覚ました。そして最初に思ったのは、「自分の部屋の天井だ。」であった
そしてやはり左目は、視力を失っていた。左目の瞼は、開いているのが分かるのだが、右目の瞼を閉じると、暗闇が広がるのであった。
この事は、覚悟をしていたが、こうも現実に突きつけられるとショックが、大きかった。
そして体を起こそうとすると、起き上がることが出来ず、何かが僕の身体を抱きしめているのである。
見えていない左側なので、何だろうと思い顔を左に向け、右目で確認すると、そこには、母上が、僕を抱きしめた状態で寝ていたのであった。
それを見た瞬間、僕は、「生きて帰ってこられた。」と実感したのであった。そして帰還の挨拶をするために母上を起こしにかかったのであった。
「母上、朝ですよ。起きてください。」
僕の声が聞こえた母上は、「う、うう。」という声を出して動き出すと、目を開け僕を見た。
そして次の瞬間涙を流しながら、こう言って来たのであった。
「お帰りなさい、エギル。そして生きててくれてありがとう。」
そう言って僕を強く抱きしめると、チークキスの雨を降らせてきて、そしてベットの横にあるテーブルから侍女たちを呼ぶ、呼び鈴を取り上げて鳴らし、侍女たちを呼ぶと父上とママ様と姉上に僕が起きたことを伝えるように言うと、ベットを出て僕の方に回ってくると再び僕を抱きしめて、その後、拳を握ると頭にコツンと落として、こう言った。
「め、危険な事をしてはダメでしょ。」
僕は、その軽い痛みとその言葉にこう返したのであった。
「ごめんなさい。」
そう言うと母上は、ニッコリ微笑み、再び僕を抱きしめたのであった。その後、直ぐに父上たちもやって来て、同じように抱きしめられ、その後叱られ、その後僕が、謝ると言ったサイクルを繰り返して、一通りその状態が終わると、家族全員で、僕の無事を喜び合ったのであった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




