第39話 因果と願望
少し短いですが、どうぞ、お読みください。
時間は、三か月半前へと戻る。
とある海域 海上 船上
とある海域に豪華な船が、停泊していた。だが今は夜。辺り一面暗闇に包まれている。こんな時間帯に船を浮かべているのは、非常に危険である。
理由は、海に生息している魔物は、大概夜行性であるからだ。そのためどんな酔狂な貴族や金持ちであっても、夜の海へ出ようとする者は、居ないのであった。
しかし、この船の持ち主は、そんな事を気にすることなく、この真っ暗な夜にこの海域に来ていたのである。
「船長、いつも通りに事を運ぶのだぞ。」
そう言って船の甲板に立っている黒のローブを纏った、この船の持ち主が、船長に釘を刺していた。
その言葉に船長は、こう答えた。
「お任せください。皆様が到着されたら、お呼びいたします。それまで部屋でお寛ぎ下さい。」
船長の言葉を受けて、この船の持ち主は、「うむ。」と言う言葉を残し、用意されている船室へと入って行ったである。
それから暫く時が過ぎた頃、船長は、船の持ち主が居る船室へと向かい扉をノックして部屋の中に入った。
「失礼いたします、皆様がお着きになる頃です。」
そう報告をされた船の持ち主は、部屋では脱いでいた黒のローブを身に着けると船室から甲板へと出たのであった。
するとそのタイミングに合わせて、甲板で異変が起こった。
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
甲板上に異音が響くと空間が、渦を巻きだしたのである。しかし誰も警戒をしていない、するとその渦の中から船の持ち主と同じ黒いローブを纏い顔を隠している人たちが、数人現れたのであった。
その人たちは、船の持ち主に挨拶をすると甲板の左右に並び、列を作った。
そしてまた、新たな渦が、起こり、そこからも同じ格好をした人たちが、現れ、同じように持ち主に挨拶をし、甲板に左右に分かれ、列を作っていったのであった。
それがしばらく続き、最後の人物が、甲板の左右の列の右の列に並び終えると、船の持ち主が、左右の列の丁度中間の位置に立ち、こう発言した。
「同志、諸君。全員が、欠けることなくこの場に集まったことを私は、うれしく思う。もうすぐ我らの主が来られる。皆心して、待つように。」
船の持ち主が、そう発言してから、数分が立った頃、再び、持ち主が、参加者である同志に対して発言をした。
「同志、諸君。あの方が、お見えになられる。膝まづいて、頭を垂れよ。」
その言葉に従い、参加者全員が、膝まづいて、頭を垂れたのであった。そして船の持ち主も膝まづいて、頭を垂れた時、甲板の少し上の場所に何かが収束し始めた。
そしてそれは、ドンドン大きくなり、人の形を取り、そして全てが集り、人が立っていたのであった。
その人物も同じように黒のフードを被っており、顔を確認できない状態であった。
そしてその人物は、甲板の上に降り立つと、膝まづいている船の持ち主にへと近づくと、こう言った。
「立て、わが友よ。」
その言葉に従い船の持ち主は、立ち上がると、こう言葉を発した。
「皆、揃っております。」
「うむ。よくやった。」
そう言うとその人物は、皆に聞こえる声を発し、こう言った。
「因果が、乱れておる。これでは我々の理想とする世界へと向かう計画が、破綻してしまう。」
それを聞いた周りの人達にも緊張が走る。しかしその人物は、次にこう告げた。
「因果を修正せよ。その者をこの世から消すのだ。」
そう言って何かの魔導装置を取り出し、彼の言う所の因果を乱す者が写し出された。そしてこう命じた。
「この者を殺せ。十八歳になる前に。」
そう言うと、その人物は、再び闇夜へと消えて行ったのである。そしてその場に残った者たちは、こう唱和したのであった。
「我らが求めるは、新たな女神の誕生成り。」
そう言うと、再び魔法と思われる渦が発生し、参加者を飲み込んだのであった。そして船の持ち主も、船長にこう命じた。
「船長、帰港する。」
「はっ、出航。」
船長は、命令を受諾すると、出航の号令をかけた。そして船は、錨を巻き上げる、帆を張って真っ暗な海を進んで母校へと変えていったのであった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




