第37話 捕縛と粛清
遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。
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〔ノース・ザルド王国〕国境地帯 〔ダガロン要塞〕包囲陣地
12月の冬のどんよりとした雲に覆われた空から一転し、珍しく快晴となり、雪が降り始めるのが少しだけ遅くなった〔ダガロン要塞〕が建っている平原では、朝からその〔ダガロン要塞〕を包囲している〔デイ・ノルド王国〕王国連合軍と〔ノース・ザルド王国〕遠征軍両陣地において何かの準備が為されていた。
「急げ、時間がないぞ。」
兵士を指揮する士官たちも声を張り上げて、作業を行い、準備を行っている。
「了解。」
そして兵士たちも己がやるべき務めをしっかりと行っていた。
「数は、合っているか? 間隔は?」
そして作戦を指揮する将軍たちも、意見を述べ合い擦り合わせ、結論を導き出していた。
そして昼食の時間が迫っている時、全ての準備が完了したと〔デイ・ノルド王国〕国王アランディアと〔ノース・ザルド王国〕新国王ハイディニルに伝えられた。
その報告を受けた二人の国王が、別々の場所で同時に言葉を発し、作戦は、開始された。
「「放て。」」
その号令が、両軍の全部隊に伝わると〔ダガロン要塞〕に向けて設営された大砲群が、火を噴いたのであった。
ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン
大砲から離れた砲弾は、〔ダガロン要塞〕の第一城壁を超え、第二城壁と第三城壁の間におちると爆発した。
ドカーン ドカーン ドカーン ドカーン ドカーン
それを確認した両軍は、各砲に自由射撃を命じたのであった。そして〔ダガロン要塞〕に対して途切れることなく砲弾が撃ち込まれることとなった。
そしてその砲撃は、休むことなく昼が過ぎても夜になっても続いたのであった。
砲撃が続く陣地から少し離れた場所に設営された天幕において〔デイ・ノルド王国〕国王、アランディアが軍務卿であるスカイトール伯爵と共に食事をしながら話していた。
「うむ、この音では、敵は眠ることも叶うまい。」
アランディアが、そう言うと、軍務卿は、こう続けた。
「はっ、更に何発かの砲弾は、第三城壁に当たっておりますから、敵も気が気ではないでしょう。」
「うむ、その通りだな。」
アランディアは、そう言うとグラスに入れられたワインを一口飲み、更にこう続けた。
「さて、いつまで耐えられるかな。お手並み拝見と行こう。」
そう言ってワインが、入ったグラスをテーブルに置いたのであった。
そして攻撃を開始して1日後、〔ダガロン要塞〕の主塔に白旗が掲げられているのが確認された。だが、降伏の受諾の会談で、両国王と会ったのは、誰もが予想していない人物だったのであった。
少し時は、遡り、〔ダガロン要塞〕内へと移る。
〔ノース・ザルド王国〕国境地帯 〔ダガロン要塞〕内部
第二次林伐戦争、最大の激戦となった〔シテネモン要塞〕国境側の平原での戦で自軍の降伏の前に戦場より離脱し〔ダガロン要塞〕へと逃亡した、ピスグリスとその支持貴族たちは、要塞内部において連日宴会を催していた。
「この要塞に立て籠もっている限り、我らは負けぬ。」
そう言って一人の貴族が、檄を飛ばす。するとそれに答えて別の貴族がこう発言した。
「な~にが、新国王だ。我らの国の王は、ピスグリス様、ただ一人。痴れ者は、排除するべきなのだ。」
その言葉に対して「そうだ、そうだ」と喝采が沸く。その喝采に答えるようにピスグリスは、立ち上がり、こう言いだした。
「皆の者、朕と共に要塞を囲む軍勢を打ち破り、王都へと向かい、痴れ者を屠り、再び栄光を取り戻すのだ。」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――――。」
そのピスグリスの威勢の良い言葉に対して、鬨の声が響く、だが、誰も行動に移すことはない、ただ現実を受け入れる事が出来ない者たちが騒いでいるだけであった。
そしてそんな宴会を開いている時、何かが聞こえて来た。
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ、ドッカーン。
爆発音が響き、要塞が揺れたのであった。すると宴会を開いている部屋のドアが開くと要塞の司令官が入ってきてこう告げたのであった。
「陛下、報告いたします。」
「何だ、この音は? 朕たちの宴を邪魔するこの音は。」
ピスグリスは、司令官にそう問い詰めた。その問いに司令官は、こう答えた。
「〔デイ・ノルド王国〕と逆賊どもが、共同で我らの要塞に対して砲撃を仕掛けてきています。それも絶え間なくです。」
それを聞いたピスグリスは、顔を真っ赤にさせてこう捲し立てた。
「何、生意気な事をしよって、こちらも打ち返すのだ。」
「はっ、直ちに。」
そう言って司令官は、その場を後にすると指揮所へと戻っていったのである。そしてそれを見届けたピスグリスと貴族たちは、再び宴会を続けたのであった。
そして夜になり、ピスグリスは酔いつぶれて寝たことによって宴会は、終了し、貴族たちもそれぞれに確保した部屋へと戻っていたのである。
そして深夜になった頃、砲撃音が鳴り響く要塞内のある部屋に何人もの男たちが集まっていた。
「このままでは、我々はお終いだ。」
一人の男が口火を切る。それに対して別の男が、こう続ける。
「そうだ、あのバカブタと共に死ぬなど、おぞましい限り、我々は生き延びねばならんのだ。」
その言葉に他の参加者たちも「そうだ、そうだ。」と言い同意を示した。そしてこの集まりを主導した男が、こう言った。
「では、あのブタを売り、我ら生きる糧としよう。」
その言葉に参加者は、「うむ。」と言い、手筈を整えると、各々別々に部屋から出って行ったのであった。
そして翌朝、ピスグリスが目を覚ますと、目の前に槍が突きつけられており、「何だ、貴様ら。」と言う言葉を発したが、猿轡をされ黙らされると目隠しもされ、縛り上げられたのであった。
そしてそのまま連れていかれたのであった。
その後、〔ダガロン要塞〕の主塔に降伏の白旗が翻ったのであった。
そして時は、再び元に戻る。
両国王の目の前に膝まづいているのは、拘束され動くことが出来ないピスグリスと、そのピスグリスを捕縛した、支持貴族たちであった。
ピスグリスを裏切った支持貴族たちを代表し、この企みを主導した男が、進み出て、滔々と語りだした。
その内容は、いかに自分たちが両国の平和を願っていたか、いかに自分たちは面従腹背をしていたかなどで自分たちの正当性を主張する物であった。それを聞いていた両国王は、顔をこわばらせていたが、それに気づかない支持貴族たちは、最後にこう宣ったのであった。
「我々をどうかお許しいただけないでしょうか?」
それを聞いたアランディアは、隣で同席していた、エギルに向きこう告げた。
「エギルよ、この者たちをどうするべきだと思う?」
その問いにエギルは、こう答えた。
「お許しになり、褒美を与えるべきと思います。」
その言葉を受け、アランディアは、「うむ、分かった」といい、隣に座っているハイディニルと相談し、それを終えると、両国王は、こう命じた。
「ピスグリスを連れいけ。」
それを受け両国王の両脇に控えていた兵士が、芋虫状態のピスグリスを天幕の外へと連れて行ったのであった。
そして、支持貴族たちにこう告げた。
「罪一等を減じ、褒美を取らす。」
支持貴族たちは、安堵のため息を吐き、褒美をもらう為、整列をしたのであった。そして今までの苦労をねぎらう為の盃が運ばれ、そして盃にワインが注がれ、そして両国王の唱和の元、支持貴族たちは、それを呑んだのであった。
そしてそれは、直ぐに起こった。
支持貴族たちは、ワインを飲んだ後、直ぐに喉を押さえ苦しみだしたが、言葉を発することはなかった。
そしてアランディアは、盃を掲げながらこう言ったのであった。
「貴様たちのような病毒がいる限り、世界は良くならない。世界を良くする事が、貴様たちの命の使い道だ。」
それに続いてハイディニルもこう発言した。
「貴様たちは、死さえも我が国の教訓となるのだ、これは名誉な事であり英雄的行為だ。安らかに眠れ。」
その言葉を聞いた終えた支持貴族たちは、事切れたのであった。そして天幕内にいたエギル、アランディア、ハイディニル、その他の者たちは、彼らにこう告げたのであった。
「献杯。」
そして全員、盃を飲み干し、戦後処理にかかったのであった。
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