第34話 出陣と出産
投稿が遅れてしまい、すみませんでした。
どうぞ、お読みください。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 国王執務室
私ことアランディア・フォン=フェニア=ノルドは、我が息子、エギル・フォン=パラン=ノルドから一ヶ月と半月前に届いた手紙を読み終えると座っていた執務机から立ち上がり、城下町が望むことが出来る窓へと向かい、景色を眺めていた。
戦時下にも関わらず首都である〔ハルマ―〕は、多くの人々でごった返していた。そのごった返している人々の活気に悲惨さを感じることはなかった。
それも国境で〔ノース・ザルド王国〕親征軍を足止めし続けている〔シテネモン要塞〕とそこに派遣されている第五方面軍と第五騎士団及び遊撃戦力の第六騎士団の努力の賜物である。
しかし私は、この膠着状態を解消し早急に和平へと持っていくべきだと考えている。すでに開戦から半年を迎えているこのまま戦い続ければ、我が国周りに在る国に横槍を入れられかねない。
そのため戦線が動かないこの時がチャンスと捉え〔スカイテール連邦王国〕前国王であるダベル叔父上に仲介を頼み和平への道を半年近くに渡って進めてきたが、ピスグリスは、全く応じることなかったのであった。
私は、窓から離れ再び執務机に戻り、机に開いた状態で置いていたエギルからの手紙を取るともう一度読み返した。
『拝啓、親愛なる父上様。 僕が王都を立って二週間が経ちました。今日僕たちは〔ノース・ザルド王国〕第三王子が暮らしているとされる北方のとある町へと着きました。ここからが本番です。まずは情報を収集し王子が本当に住んでいるかを確認します。王子が住んでいると確認されれば交渉を開始いたしますので吉報をお待ちください。そして父上にお願いがございます。僕たちが作戦を最終段階まで進めるまで父上が前線に出られると言った攻勢に関する事態を起こさないでいただきたいのです。理由は、非常に簡単です。僕たちが動きやすいからです。どうかよろしくお願い申し上げ奉ります。 敬具 エギルより』
私は、この手紙を受け取った時、攻勢を考えていた。しかし作戦の遂行状況とエギルからの頼みにより攻勢を行わないと決め、〔シテネモン要塞〕にも限定的攻勢以外の攻勢を禁じると命じ戦線を維持するよ改めて命じたのであった。
しかしそれも限界に近付きつつある。
いくら強固な要塞になった〔シテネモン要塞〕でもずっと防御をし続けるのは厳し、さらに言えば兵の士気を維持することも防御するだけでは困難である。
私は、明日にでも攻勢の決断をしようと思いエギルからの手紙を閉じ、入っていた封書に戻すと引き出しに入れた。
コンコンコン
すると執務室のドアがノックされ、「失礼いたします。」と秘書官の声が聞こえて来た。私は、「入りなさい。」と入室を許可すると、ドアが開き秘書官が入ってきた。
そしてこう私に告げたのであった。
「陛下、宰相閣下がお見えになっておられます。」
私は、その言葉を聞き何か急用が出来たのかと思い、直ぐに秘書官に命じて宰相を呼び寄せた。
執務室へと入ってきた宰相は、私に礼をするとこう言って来た。
「陛下、エギル殿下よりお手紙が参りました。」
私は、それを聞いて宰相の手に持っていた封書を受け取る。そこにはエギルの手による文字が書かれており、『父上へ』と記されていた。
私は、ペーパーナイフを取り出し封書の一部を切ると中身を取り出し、読んだ。
そこには、こう書かれていた。
『拝啓、親愛なる父上。 先の手紙から一ヶ月以上も連絡をしていなかったことをまずは、お詫び申し上げます。 さてこの度手紙をお送りいたしますのは、作戦の最終段階に到達したためであります。これより〔ノース・ザルド王国〕首都 〔ザイルシティー〕へと向かい第三王子によるクーデターを開始いたします。つきましては、父上にも〔シテネモン要塞〕への増援の派遣とそして父上による親征軍の派遣を要請いたします。これは第三王子殿下とディニール宰相閣下からの正式な依頼でもあります。何卒お願い申し上げます。敬具 エギルより 追伸 講和会議の席で再びお目にかかれることを楽しみにしています。』
私は、手紙を読み終えるとすぐに決断を下した。
「宰相、直ぐに閣僚を全員集めよ。集まり次第、合議の間で御前会議を開く。」
私が、そう言うと宰相は、こう返してきた。
「はっ、ようやくでございますな。」
「うむ、雌伏の時は終わりだ。打って出る。」
私は、宰相の言葉にこう返して執務机に向かうと残りの執務を終わらせにかかったのであった。そして宰相も御前会議の準備をするため執務室を後にしたのであった。
そしてそれから1時間後、合議の間において御前会議が開催され以下の事が決まったのであった。
一つ、国王親征軍総兵力30万 諸侯連合軍総兵力5万 合わせて35万の兵力で出陣する。
一つ、最初の攻撃目標〔シテネモン要塞〕を包囲する〔ノース・ザルド王国〕親征軍、次の攻撃目標〔ノース・ザルド王国〕〔ダガロン要塞〕
一つ、〔ノース・ザルド王国〕で新たに誕生する政権との講和及び国交の回復
以上3つの事項を決め、御前会議は、解散となった。
私は、会議が終わり妃たちと過ごすために後宮へと向かい、妃たちとアリベルにエギルからの手紙を見せ、一緒に食事をし、久しぶりに妃たちと就寝したのであった。
そして次の日から我々は進軍の準備に入り、そして1週間後、全ての準備を整え、我々国王親征軍は、全軍の集結地点である〔シテネモン要塞〕の後方支援基地としての役割を担っている国境の町、〔シテネニクス〕へと進軍を開始したのであった。
そしてその頃、エギルたち1万のクーデター軍は、〔ザイルシティー〕の要所に潜伏しその時を持つのであった。
その時とは、大陸歴2332年12月10日、第二次林伐戦争において最大の激戦と最大の変事が起きた日である。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕後宮 応接の間
私ことマリアンヌ・フォン=カルティア=ノルドは、同じく王妃であるステラ・フォン=ルドリア=ノルド、そして第一王女であるアリベル・フォン=ロアス=ノルドと共に後宮の応接の間でとある人物たちにお会いしていました。
その人物とは、私の父と母であるアルドール公爵夫妻とステラの父と母であるマルソトス伯爵夫妻、さらに先王先王妃ご夫妻です。
私たちが、この3組の御夫婦を呼んだのは、私の息子である第一王子のエギルからの手紙を見せるためと陛下から首都〔ハルマ―〕の防衛を任された事へ激励のためです。
3組ともエギルからの手紙を読み終えると口々に「心配でたまらない。」と言い出しました。
私とステラもその気持ちは同じで毎日エギルの無事を祈っています。さらにアリベルに至っては、エギルと一緒に居れないことがよほど寂しいようで、かなり元気をなくしてしまっています。
すると父上が、こんな事を聞いてきました。
「マリア陛下、お腹の子供たちはお元気ですかな?」
私は、父が話題を変えるため話を振ってくれたのを察しこう答えました。
「はい、今も二人とも元気にお腹を蹴っていますよ。」
そう言って私は、自分のお腹を撫でて双子の赤ちゃんの存在を感じていました。すると隣に座っているステラもお腹を撫でていました。
ステラのお腹にも一人赤ちゃんが居るのです。
そんな様子を見ていた母上たちがこう言ってきました。
「すっかり母親の顔をしてるわね。うらやましいわ。」
そう言って父上たちの方を見た母上たち、父上たちも母上たちの冗談だとは分かっていても居心地悪そうにしていました。
そしてしばらくおしゃべりを続けていた時です。
私は、お腹に違和感を感じました。そしてそれは徐々に強くなってきます。そして隣に座っていたステラも違和感を感じたのかお腹を押さえています。
どうやら陣痛の様です。母上たちもそれに気づいたのか父上たちの方を見てこう言いだしました。
「おなた方は、邪魔ですから出て行ってください。」
父上たちもそれは分かっていたようでアリベルを伴い隣室へと行きました。母上たちは侍女たちに指示をしながら準備を整えていきます。
そして私たちは、それぞれベットに横になるとお産に向けて準備を整えていく事に成ったのでした。
この日、〔デイ・ノルド王国〕に慶事が、もたらされた。王妃二人が産気づき数時間以上に及ぶ陣痛と産みの痛みを戦い抜き、3人の王女を出産するに至ったのである。この事は、直ぐに王都にも知らされ国民は大いに沸き立った。さらに国境の町〔シテネニクス〕に滞在している国王アランディアと親征軍にも知らされ大いに士気を高める事となった。
そして〔ノース・ザルド王国〕へと潜入している第一王子エギルにもこの事は知らされ、それを聞いたエギルは、喜びを爆発させたのであった。
決戦とクーデター決行まで後5日という日であった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




