第23話 狩猟と情報
投稿再開いたします。
どうぞ、お読みください。
〔ノース・ザルド王国〕国境付近 とある森
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ~ァ。捲いたかな。」
俺ことロードスト・モルロは、森の中のとある一本の大木に寄りかかり休憩をしながら周囲を確認していた。
「フゥ~、敵はいないな。」
そう俺は、安堵すると地面にいては悟られるので、隠れるため木の上へと飛びあがったのであった。そして飛び上がり木の上に着くと、もう一回跳躍し別の木へと移動したのであった。
俺は、枝の上に腰を下ろし本格的な休憩をするため装備入れを背中から外し中に仕舞っている特殊な被り物を取り出し頭から足まですっぽりと覆い、その中で一緒に出した食料を食べだした。
食料を食べながら俺は、次の行動を練りだした。
「まずは、体力の回復からだ。食べ終わったら夜まで仮眠を取ろう。そして夜になったら国境まで進み、次の夜まで越境を待ち、様子を見よう。」
俺は、行動方針を決めると警戒の為のとある物を設置し食事を終え、木の幹にもたれ掛かり被り物をさらに深くかぶると仮眠を取るために目を閉じたのであった。
それから数時間が流れ、行動を起こそうと眠りから目を覚ますと当時に警戒の為の装置が反応したのであった。
俺は、直ちに周りに意識を集中させると森の中に何人かの人間の気配を感じそれか俺がいる木からそんなに離れていないところに存在していたのである。
俺は、急いで出立の準備を行うと、音を発てない様に跳躍し木から木へと移動を開始したのであった。
俺が、移動を開始ししばらくが経った。後ろに感じる気配は、その人数を増やしながらじりじりと俺の方に迫ってきている。正に獲物追う狩人のやり方である。国境まであと少しだが、この後ろにいる連中を王国内に入れる訳にはいかない。
俺は、ここで出来るだけ数を減らしさらに、王国への侵入を防ぐため戦う事に決めた。ただし敵の情報も伝えなければならない為、その情報を森番の情報伝達手段を用いて森番長へと届ける準備も開始したのであった。
しばらく動きを止め追手に俺の気配を悟られなくすると、手紙を特殊な暗号で書き、装備入れに入れていた、黒い紙を取り出しそれを手早く折ると鳥の形を完成させこう唱えた。
「黒き鳥の姿に成りて運ぶもの成り。」
すると鳥の形をした黒い紙が、みるみるうちに本物の鳥に変わり俺の腕に止まってきた。その鳥に森番長宛ての手紙と今までに撮った魔導写真の情報が入った装置を括り付けると、頭を押さえ俺のイメージを送り込み夜空に飛ばしたのであった。
飛ばし終え、その姿が見えなくなるのを確認した俺は、装備入れから短弓と矢を取り出すと、立ち上がり弓に矢を番えると真っ黒な景色に向かって放ったのであった。
しかし何故、こんな事態になったのかと言うとそれは、二日前に遡る。
〔ノース・ザルド王国〕 国境地帯 〔ダガロン要塞〕内部
俺は、今〔ダガロン要塞〕の司令官の部屋へと来ている。理由は、士官たちが集まり司令官の部屋で話し合いをしながら夕食を食べる事に成ったので、その準備を監督する為である。
「失礼します、司令官。」
俺は、会食の準備を整えたことを報告するために司令官の執務室へと入った。すると仕事が一段落したのであろう司令官が、顔を上げ、こう言って来た。
「お~、副料理長。すまないな、急にこんな事を頼んでしまって。」
「いえ、そこまでの大変さではありませんので、お気になさらず。」
俺は、そう言うと司令官は、また別の事を聞いてきた。
「ところで、副料理長。頼んでいた件は、どういう具合だ。」
俺は、その問いにこう答えた。
「はい、司令官から頂いた資金により順調に集まりつつあります。あと数ヶ月で目標の数に届くと思われます。」
それを聞いた司令官は、「そうか。」と言って安堵の表情を見せた。
実は、この司令官は、数か月前に新たに赴任してきた人である。この人の前の司令官であった人物は、かなり横柄な人物であり、食料などを民からの徴発で賄おうとし、その代わり食料などの調達の為の資金を横領し贅沢三昧をしていたのを軍上層部に知られたことにより更迭させられた。
しかし、国境地帯を守るこの要塞の司令官を一瞬でも空位にするわけにはいかない、そこで、この国の宰相の特命を受け、今俺の目の前にいる人物が着任したのであった。
俺と司令官は、しばらく雑談などをしていると扉がノックされ、兵士が一人入ってきた。
「失礼いたします、司令官。士官の方々、お揃いです。」
兵士が、そう言うと司令官は、「うむ」と言って俺の方に向くとこう言って来た。
「では、副料理長の自慢の一品いただきましょうか。」
俺は、「はい。」と答えると司令官の後に続いて執務室を後にし、料理を説明する為、そして司令官と士官たちの会話を録音する為、会食の準備をした部屋へと戻ったのであった。
会食が終わり、後片付けをして、厨房に戻り、総料理長に「先に上がります。」というと俺は、与えられている一人部屋へと戻った。
部屋の中に入ると入念に部屋を調べ魔道具の類がないかを調べ、そして今日の会食で士官たちが話していたことを聞き、報告書に纏めると、丁度良く窓を叩く音が聞こえてた。俺は、窓に近づくとそこには、黒い鳥が止まっており、その足には、手紙が巻き付けられていた。
俺は、窓を開け鳥を部屋の中に入れると、足の手紙を外し、その代わりに先ほどまとめた報告書が入った筒を足に括り付け、鳥の頭を押さえ、俺のイメージを送り、窓から放ったのであった。
そして括られていた手紙を開くとそこには、『撤退』という二文字が綴られていた。俺は、直ぐに手紙を燃やすと、支度を済ませ、最後にある所へと向かった。
その場所とは、司令官の執務室であった。俺は、特殊な方法で執務室に入ると、隠し金庫を開け金庫の中に仕舞っている部隊編成の資料を取り出すと魔導写真機で撮影し、資料を戻し、金庫を閉めた。その瞬間、何らかの魔導装置が発動し要塞中に警報が鳴り響いた。俺は、急いで執務室から屋根へと出ると、国境地帯の森へと向かったのであった。
そしてどうやらこの時の逃走時に〔ノース・ザルド王国〕の暗部を司る者たちに見つかり追撃を受ける事に成ったのである。
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