第17話 条件と内偵
本日、2話目です。
どうぞ、お読みください。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 合議の間
「では、今般の条約の締結の暁に双方が、合意する事項を提示なさい。まずは〔デイ・ノルド王国〕側から。」
ダベル〔スカイテール連邦王国〕先代国王が、発言し、〔デイ・ノルド王国〕から条件を提示することになった。
王国宰相であるカマル卿が、こう答えた。
「それでは、発言させていただきます。まず我が国が、条約締結後に行う事として二つ挙げさせていただきます。まず一つは、「原木などの輸入再開」、更にもう一つ「我々からの先制攻撃の停止」です。」
それを宰相が述べると、〔ノース・ザルド王国〕の外務長は、少し身を乗り出し、興味を示しだした。
しかし、その興味も次の言葉で打ち砕かれる。
「そして、〔ノース・ザルド王国〕に対して求めるは、次に挙げる三つであります。まず一つ「輸入品の価格安定」、二つ「不可侵協定の維持」、そして最後、三つめは、「王の退位」、これがそちら側に求める条件です。」
とカマル卿が、言い終えると〔ノース・ザルド王国〕の外務長は、顔を真っ赤にさせながらこう言い返してきた。
「我が王の退位とは、どういうことですか? 何故このような場に持ち出される。真意をお聞かせいただきたい。更に撤回を求める。」
これに対してカマル卿は、こう反論した。
「我々は、あなた方の国王陛下を信頼していない。言いがかりをつけ我が国に不当な要求をし、挙句の果てには、攻め寄せて来た。そして我が国を己が物としようとした事も捕虜の証言により得ております。何か反論は、ございますか。」
すると外務長は「ムムム」といって矛を収めたのであった。それを聞いていたダベル先王は、こう口を開いた。
「では、続いて〔ノース・ザルド王国〕側からの条件の提示をしていただこう。」
そう言われ外務長は、しぶしぶと条件を提示してきた。
「発言させていただく。まず我が国が、条約締結後に行う事として二つ挙げさせていただく、一つは、「残りの賠償金の速やかなる支払い」、二つ目は、「王国首脳部の引責辞任」です。」
それを聞いていた〔デイ・ノルド王国〕の外務卿は、少ししかめ面をしながら聞いていた。
それに対し王国公爵であるリウム卿は、無表情でこれを聞いていた。
「そして我が〔ノース・ザルド王国〕が〔デイ・ノルド王国〕に求める条件は、以下の四つである。一つ「同盟の締結」、二つ「技術交流」、三つ「定期的な相互訪問」、そして四つ目は、「人質の提供」である。」
それを聞いていたカマル卿は、机を拳で強く叩くと、立ち上がり吠えた。
「我が国をバカにするのもいい加減にしろ。何が「人質の提供」だ、ふざけているのか。」
そして更に机を壊しかねない勢いで叩いたのは、リウム卿であった。そしてリウム卿は、目を龍眼に変化させ、更に背後から龍として気配を立ち上らせながらスクっと立ち上がり普段の声とは全く違う声で吼えたのであった。
「我が国の民は、我の大切な友であり子である、その者たちを奪うというなら、我が黙っていない、貴様たちの国を亡ぼすまでである。分かったな。」
それを聞いた外務長は、震えあがり、「条件を再検討する」と言って、ダベル先王に「休憩を申し込む」と言いながらその場を後にしたのであった。
ダベル先王は、ため息をつきながらこう言いその場を後にした。
「一旦、休憩に入る。」
この言葉により一旦休会となった条約締結会議であったが、波乱の幕開けとなったのであった。
一方その頃、〔ノース・ザルド王国〕に潜入したロードスト・モルロは、如何していたかというと。
俺の名前は、ロードスト・モルロだ。だがこの場所では、偽名であるロンダ・ナムリムの名を名乗り、〔ノース・ザルド王国〕の要塞であるダガロン要塞にコックとして潜入していた。
入国した日、俺は、服装を着替えてホテルの酒場に繰り出した。あのホテルの酒場は、誰にでも解放されており、いろいろな情報などが飛び交っているのである。
俺は、その酒場でダガロン要塞のコックの総元締めをやっている料理人に会ったのであった。
俺は、その料理人と酒を飲みながら話をしていき「何故、ここに来たのか」と尋ねた。
すると料理人は、新たな人を雇う為にここに来たのだという。
そこで俺は、自分を売り込むことにした。実は俺、警衛士になる前は、高級料理店のコックやっていたのであった。そしてゆくゆくは、店を一つ任せてもらえるという所までいていたのであったが、店が貴族たちの嫌がらせで潰れてしまい警衛士になったのであった。
その為、料理は得意なのであった。
俺は、その料理人に自分の腕前を披露し、採用されこのダガロン要塞に潜入できたのであった。
「お~い、ロンダ君。少し手伝ってくれないか。」
総料理長である、料理人の男が困った顔で俺を呼んでいた。
「どうしました、総料理長。」
すると総料理長は、要塞に駐留する軍からの食材要望書を見せて来た。そこには何時もの三倍以上の食材が記されていた。しかし食材の購入費などは書かれていなかった。
これはどうゆう事だと思い総料理長の方を見ると、困ったという顔をしていたのであった。そしてこう言って来た。
「ロンダ君、これだけの量を集めて貰いたいのだ。頼んでもいいかい?」
俺は、これが我が国への侵攻を企図したものと思い、引き受けることにした。俺は、総料理長から要望書を受け取ると仕事に戻ったのであった。
そして後方攪乱の準備にも取り掛かったのである。
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