第15話 潜入と来国
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〔ノース・ザルド王国〕国境 国境の砦
「よし、次の人。身分証を出しなさい。」
呼ばれた俺、ロードスト・モルロは、森番長から渡された身分証を出し、〔ノース・ザルド王国〕の国境係官に提出した。
係官は、身分証を受け取ると、魔導装置に身分証の最初のページを入れ、装置の対になるガラス盤を差し出してきてこう言った。
「はい、魔力を計測するから、これに手を置いて。」
俺は、係官の指示に従い、ガラス盤に手を置いた。手を置くとガラス盤が、緑色に光った。
係官は、それを確認すると、身分証を装置から出し、身分証の次のページに判子を押すと、俺に返してきた。そして笑顔になると、こう言った。
「我が国へようこそ。来訪を歓迎いたします。」
「ありがとうございます。お勤めご苦労様です。」
俺は、そう言って係官にお礼と労いの言葉をかけると国境検問所を後にしたのであった。
俺は、〔ノース・ザルド王国〕の国境の砦から出ると、砦の近くに止まっていた、辻馬車を捕まえると、国境の一番近い街に行くように頼み、乗り込んだのであった。
しばらく馬車に揺られながら過ごしていると、それは唐突に見えて来た。
「あれが、そうか。」
俺は、そう呟いた。俺の眼に見えてきたりは、石で出来た巨大な建物の一部であった。
俺は、馬車を操っている御者に尋ねた。
「御者さん、俺が有名なダガロン要塞かい。」
俺の問に御者さんは、「そうだよ。」と言ってくれた。
馬車は、そのまま進んで行き、ダガロン要塞が迫ってきた。ダガロン要塞をよく見てみると街道を塞ぐ様に建築されており、そしてその石壁の外側には堀が張り巡らされており、その堀を渡る橋も跳ね橋に成っていた。
馬車は、そのまま橋に向かって進んで行くと、橋の手前に検問所があり兵士が立っていた。
「止まれ。」
兵士が言うと馬車は停車し、御者が御者台から降りると静止をしてきた兵士に歩み寄っていった。
兵士は、御者にいくつかの質問をしながら、もう一人の兵士に馬車を改めさせた。そしてまた別の兵士がこちらに近づいてきた。
「失礼、身分証を拝見。」
兵士は、俺の身分証の提示を求めて来た。俺は、再び身分証を出し兵士に渡すと、兵士は、身分証を開いて確認をすると「うん」と言って返してきた。
「ご協力、ありがとうございます。」
兵士は、そう言うと馬車から離れて行った。すると御者も再び馬車に戻ってきた乗り込むと、静止をした兵士が、旗をふると橋の先に見えていた門が開かれたのであった。御者は、馬たちに鞭をいれると出発し、門をくぐったのであった。
門をくぐると、街道が要塞の外側の壁と内側の壁との間の空間に続いており御者はそちらの方向に馬車を向け進みだした。
暫く要塞の中を進んで行くと再び門があり、先程と同じ検査を受け、要塞から出たのであった。
要塞から出るとそのまま街道を直進し、3時間が経過したころ、町が見えて来たのであった。
「お客さん、あれが国境の町〔ダイミル〕だよ。」
御者さんは、そう言うとそのまま馬車を進め、町の正門前に止めてくれたのであった。俺は、御者さんに料金とお礼のチップを渡し、馬車から降りると、再び身分証を取り出し町の門番に見せ、〔ダイミル〕に入ったのである。
〔ダイミル〕に入ると俺は、とある場所を目指していた。その場所とは、ホテルである。
しかし、一度も来たことがないので場所が分からない。そこでホテルの場所を教えて貰うついでに屋台で何かを食べることにした。
門から少し行ったところに屋台街が広がっており俺は、品定めをしながら歩いていると何やらいい匂いがしてくる。
その匂いをたどっていくと、すこしこぢんまりとした屋台が現れた。俺は、この店がこの屋台街で、一番うまい店だと確信をしてその屋台に向かった。
「店主、一つおすすめをくれるか?」
俺は、そう言いながら店の前に立った。
「いらっしゃい、お客さん。おすすめだね、ちょっと待っててくれ。」
店主は、そう言って、何かの生地を取り出すと、棒で少し伸ばし、伸ばした生地を鉄板に敷いて数十秒焼くと、生地をひっくり返し、更に数十秒焼いて、鉄板から取り出して皿に置くと、その焼いた生地の上に野菜と豆を乗せ、更に刻んだ肉を乗せ、生地で包むと、俺に差し出してきた。
俺は、差し出された物を手に取り齧り付くと、口の中にいろいろなうまみが広がった。これはうまいなと思いながら、俺は、夢中で食べ腹を満たしたのであった。店主に代金を払い、どんな料理かを聞いた。
「この料理かい、トゥールズ包みって言うんだ。」
店主は、そう答えると、具材の補給などをし始めた。俺は、そんな店主に道を尋ねた。すると店主は、快く答えてくれて、さらに行き方まで丁寧に教えてくれたのであった。
店主に教えられた通りに道を進んで行くと、ホテルが見えて来た。
「〔サー・ライデス・メルカリック・ホテル〕、ここだな。」
俺は、そう言うとホテルに入った。ホテルに入るとフロントに向かい、チェックインを行い、森番長から「これを言え」と言われた合言葉を言った。
「森の中の輝きある。」
そう言うと、応対していた従業員が、「少々、お待ちください。」といって奥に引っ込むと、別の男性が奥から出てきて、俺の応対をしだした。
「ようこそ、いらっしゃいました。『輝きは、森を育つ。』ロンダ・ナムリム様。お部屋にご案内いたします。」
そう言うと授業員の男性は、俺に部屋のキーと預かっていた物を渡すとボーイを呼び、部屋への案内を伝え、頭を下げて、その場を後にしたのであった。
俺は、ボーイに案内され部屋の前に到着すると、ボーイに感謝のチップを渡し、部屋の鍵を開け中に入った。
部屋の中に入ると俺は、渡された物を取り出し、一定の手順で、開封すると、その中に仕舞われていた手紙を一読し、それを暖炉の火で燃やしたのであった。
「さぁ、これから大変だぞ。」
俺は、そう言って気合を入れると、情報を収集する為、服装を改めて、とある場所に向かうのであった。
〔デイ・ノルド王国〕海洋都市 〔アルカニス〕国際港 0番埠頭
この日、海洋都市〔アルカニス〕の港に帆船が入港していた。その帆船は、白く塗装され、煌びやかな装飾が付けられていた。
そして、その帆船のマストの頂上には、旗が翻っていた。その旗に描かれている物は、ライオンとグリフォンが背中合わせになりそれぞれが剣と盾を持ち、その下にイルカが二頭ジャンプしている、図柄であった。
するとその埠頭に〔デイ・ノルド王国〕近衛師団のマークを付けた馬車と何もマークが書かれていない馬車の一団が船のタラップに横付けされ、何もマークが書かれていない馬車から、初老の男性が下りて来た。
降りて来た初老の男性は、〔デイ・ノルド王国〕先代国王、マルトス・フォン=グロード=ノルドであった。
そして船の方からも人が姿を現した。こちらも初老の男性であった。その男性は、船のタラップを降りていき、マルトスの前に立つと抱擁し、こう言った。
「久しぶりだな、友よ。」
するとマルトスも抱擁を返すとこう言った。
「あぁー、友よ。再び会えることを楽しみにしていたよ。」
二人は、抱擁を解き合うと、何かを話しながら、マークが書かれていない方の馬車に乗り込んだ、乗り込んだのを確認すると馬車の一団は、その場を後にし、とある場所へと向かったのであった。
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