第2話 祭典と出会い
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〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 後宮
今日僕は、朝から非常に忙しい状態になっている。と言うのも今日からとある行事が始まりそれが二週間近く続くのである。
その行事と言うのが、『建国祭』である。
『建国祭』とは、〔デイ・ノルド王国〕初代国王陛下が、旧都において建国を宣言され、その一年後にその日に旧都にて盛大な催し物が、開催されたことが始まりとされる、我が国最大級のお祭りの一つである。
「殿下、お着替えはこちらに置いておきますので、お早めにお着替えをよろしくお願いいたします。」
「うん、分かった。」
僕は、侍女の一人が用意してくれた式典用の王族礼装に着替えをしながら、今日の予定を侍女たちに確認した。
「この服に着替えた後、父上たちと合流してどこに行くんだったけ?」
こう問うと、侍女の一人が答えてくれた。
「はい、殿下。陛下と合流された後、王城南区に向かい、王国軍と諸侯軍の合同軍事パレードをご観覧いたします。殿下は、陛下と共に観閲台と呼ばれる台に登り、兵士たちを観閲いたします。それが終わりましたら、夜から夜会が行われます。それが今日の予定でございます。」
「うん、分かった。軍事パレードの方は、パレードをしている時には、ずっと立っていなくちゃいけないってこと。」
「はい、そうでございます。」
僕は、それを聞いて少しげんなりしたが、王族の務めを投げ出すわけにはいかない。
「よ~し、頑張る。」
と、掛け声をかけて気合を入れ、礼装に指揮剣を付け、侍女たちと共に部屋を後にしたのである。
しばらく後宮の廊下を歩いていると、前方から母上たちが、同じく侍女を引き連れてやってきた。
「母上、ママ様、姉上、お待たせいたしました。」
僕は、母上たちに謝罪すると、母上は、こう言った。
「いいえ、エギル。私たちの方こそ遅れてしまって、ごめんなさい。」
謝罪した後母上は、僕に近づくと、礼服の乱れがないかを確認し、服の乱れを直すと、じっくりと僕の姿を見て、こう言った。
「とてもよく似合っていますよ、エギル。陛下のご幼少の頃と瓜二つです。」
そう言われて僕は、少し嬉しくなった、すると後ろから頭をポッンと叩く感触が伝わったので後ろを振り返ると、父上が僕の真後ろにいた。
「そうだな、良く似合っている。私には、負けるがな。」
「父上、おはようございます。」
「うむ、おはよう。」
僕は、少し皮肉を言った父上対して挨拶を返し、父上も挨拶を返してくれた。
そうしていると、王宮付きの侍女が、後宮の入り口に来ており、後宮付きの侍女に何かを言伝ると、王宮へと戻っていった。
言伝を受けた侍女が、父上の元に来ると、耳元で何かを囁いた。すると父上は、僕たちに向いてこう言った。
「支度は、出来ているな、参るぞ。」
僕たちは、その言葉に従い、僕を先頭に姉上、父上、母上たちと列を作り、王城へと行き、お爺様たちとも合流をし、馬車に乗って、観閲式の会場へと向かったのであった。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 南区 パレード会場
馬車が止まり扉が開くとザッと言う音が、聞こえて来た。その音のした方を見てみると近衛師団の儀仗制服を纏った人たちが、待機しており、僕らを待っていたのである。
僕は、父上の後に続いて馬車を降りると、父上が、今日の近衛師団儀仗隊の指揮隊長を紹介してくれた。
「エギル、紹介しよう。今日の近衛師団儀仗隊指揮隊長、カーセル・フォン・デュコック近衛中尉だ。私が、近衛にいた時の後輩だよ。」
「はじめまして、今日はよろしくお願いします。」
と言って挨拶をすると、カーセル中尉は、ひどく慌てて挨拶をしてきた。
「お初に御意を得ます、エギル殿下。カーセル・フォン・デャコックであります。本日は、王族の皆様に対する儀仗を指揮する指揮官を拝命いたしています。どうか、よろしくお願い申し上げます。」
カーセル中尉は、そう言うと、儀仗の指揮を行う為、儀仗隊が待機している所へと戻っていた。
そして、儀仗が開始された。
〔デイ・ノルド王国〕においての儀仗は全部で五つの種類に分けられる。一つは、ノルド王族に対しての儀仗で、これがこの国で最も栄誉ある儀仗である。そして二つ目が、外国の王族や賓客などに行われる栄誉礼である。三つめが、勲章を授与されたものに対する栄誉礼。四つ目が、ノルド王国政府高官に対する栄誉礼。そして最後の五つ目は、貴族に対する栄誉礼である。
今回行われたのは、ノルド王族に対する栄誉礼であった。栄誉礼が、無事に済み、カーセル中尉の案内により、観閲台へと向かった。
観閲台に到着し、父上、僕、お爺様、伯父上たちの順番に座り、軍事パレードの開始を待った。
王族が全員揃ったことにより、建国祭軍事パレードが、開始された。僕は、父上たちと同じように立ち上がり、胸に手を斜めに当てて、敬礼を行った。
パレードの先頭を飾るのが、首都を守る王国軍第一騎士団である、それに続いてい王国軍第一師団の順に行進を行っていく。そして軍事パレードの大トリを務める、近衛師団が行進を終えると、父上のお言葉が、始まる。
「建国の祭りに祝いの華を添えるパレードが開催できたことを余は、うれしく思う。王国を守護する防人達と諸侯が鍛えし精兵が、ここに相集いことにより、我が王国の盤石さを世に知らしめるものになるであろう。余は、其方たちに深い敬意を表す、其方たちがいてこそ我が王国は、存在するのである。だが、驕りを持ってはならない、民を傷つけることは許されない、民の規範となり、民の盾とならんことを余は、強く望むものである。皆の更なる奮励努力に期待する。以上だ。」
父上の言葉が、終わり会場から、割れんばかりの拍手と喝采が巻き起こった。そんな中僕たちは、観閲台を降り、各部隊の挨拶などを行い、その場を後にしたのであった。
その夜、王城にて建国を祝う夜会が催され、大いに盛り上がった。しかし僕は、明日に備えて早く寝たのであった。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕城下町
僕は、城下を一人で闊歩している。もちろん衛剣の二人も護衛をしてくれているが、近くにいる訳ではない、では何のために一人で城下を散策しているかと言うと、これも学習と訓練の一つだからである。
城下で、買い物をし経済について学ぶことと、魔力や気に多く触れることが、目的なのである。
城下で、買い物や人々の観察などを行って歩いていると、とある裏路地の方から誰かが、諍いをしている声が聞こえて来た。
僕は、それを確認する為、その裏路地へと入った。しばらくその裏路地を進んで行くと、広場が見えて来た。
その広場に何人かの僕よりも少し年上の少年たちが、集まっており、その身なりは非常に整っている者であった、どうやらどこかの貴族の子息たちであった。
そんな彼らに対しているのは、少し身なりは汚れているが、顔は整ってあり、眼には力強い意志を称えた僕と同い年ぐらいの男の子であった。
どうやら、貴族の子息たちが、弱い者いじめをしている現場に来てしまったようである。
そんな状況を隠れながら観察していると、僕と同い年位の少年が、貴族の子息たちのリーダー格の少年に対して、こう言い放った。
「俺は、お前たちの遊びに付き合わせられる理由はない、うんざりだ。とっとと失せやがれ。」
「ホ~、僕たちに逆らうのか、父親がどうなってもいいんだな。」
リーダー格の少年は、そう答えた。しかし、僕と同い年の少年は、毅然として、こう答えた。
「そんな脅しには、屈しない。お前らは、単なる卑怯者だ。」
すると、その言葉が気に入らなかったのか、リーダー格の少年は、激高し、部下の少年たちと共に僕と同い年の少年を殴りだした。
僕は、それを確認すると、服のポケットに忍ばせていたとある魔法石を貴族の子息たちに向かって投げつけた。
投げられた魔石から、強烈な光とものすごい音を発生し貴族の子息たちの動きを止めた。その隙に僕は、躍り出るとリーダー格の少年の膝を思いっきり蹴ったのである。
「イテ――、誰だ。」
「僕の友達に何してくれてる、ぶっ飛ばすぞ。」
僕は、彼らの間に割って入りそう言ったのであった。
これが後に僕の親友となる男との出会いになるとは、その時は知る由もなかったのであった。
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