表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/129

第17話 鍛錬と発見

どうぞ、お読みください。

 ハァハァハァ


 自分の出す息遣いを聞きながら僕は、走っている。どこを走っているかと言うと、王城の内周を走っているのである。

どんなコースを走っているかと言うと、スタートは、王宮と後宮の間にある中庭からスタートし、反時計回りに走っていく、中庭を過ぎ、西宮の庭を駆けたら、〔デイ・ノルド王国〕王国政府の建物が集まっている王城西区を駆け抜け、王城南区に入る。南区には〔デイ・ノルド王国〕王国軍の本部などが集まっており、この前に魔力爆発を起こした武器庫もここに存在する。そんな南区を駆け抜け、〔デイ・ノルド王国〕王国貴族議会議事堂、〔デイ・ノルド王国〕王国枢密院庁舎が建っている王城東区を駆け抜け、東宮の庭に至る、そしてそのまま走り続けスタート地点の中庭に戻ってくると言う、内周10キメスのコースである。

 ではなぜ、このコースを走っているかと言うと、これが超基礎鍛錬の一つだからである。師匠たち曰く、「体力を養うことは、魔力や気力を高める練習になり、ひいては、自らが遭う危険から身を守ることに繋がる」との事であったので、こうして走っているのである。

 しかし、四歳の子供が10キメスの距離を一人で走破するのは、非常に危険だと言う事で、衛剣の二人も僕について走っている。


 ハァハァハァ


 喉も少し乾いてきたなと思った頃、中庭が見えてきた。すると、オルティシアがこう声をかけて来た。


「殿下、もうすぐゴールに着きますよ。後、ひと頑張りです。」


「は~い。がんばる~。」


 そんな激励に僕は、そう答えた。


 中庭に入り、走り続けていると、スタート付近に師匠たちがいて、いつもの準備をしながら、僕たちの到着を待っていた。


「ふむ、帰ってきた様じゃな。」


「今日は、始めた時より三秒早く帰ってきたわね。」


「えぇ、着実に早くなっているわね。」


 須針師匠、リウム先生、ユナ師匠が、そんな事を話しているのが、聞こえて来た。今日は、少しだけ早く帰ってくることが、出来たのを喜ぼうと思う。ただし、頑張りすぎは、厳に慎むべしとの師匠たちの言葉である。それを肝に銘じておかなければならない。そんな事を考えていたらゴール地点に到着した。


「完走。課題一つ目クリア。」


 と言いながら僕は、中庭をしばらくゆっくりと走り、息を整えると、大の字になって芝生の上に仰向けで寝転んだ。そして空を見上げながらこう言った。


「ハァ~、しんどかった。」


「殿下、お疲れさまでした。はい、どうぞ」


 オルティシアが、労いながら僕に、あるものを差し出してきた。僕は、それを起きて受け取ると、それを少しずつ飲んでいった。


「ハァ~、おいしい。」


 僕が、飲んだものは、冷たく冷やされたお水に少しの塩と蜂蜜とレモンの絞り汁を入れて作ったドリンクである。このドリンクを飲むと、元気になってくるのである。これを作ってくれているのが、オルティシアの母上なのである。


「おりがとうございます。母も大変喜んでいます。」


「オルティシアの母上には、直にお礼が言いたいな。」


「いえ、その様にしていただくのは、恐れ多いことです。母には、私から殿下のお礼のお言葉を伝えておきます。」


 と言ってオルティシアは、僕が直接お礼を伝えるのを断ってきたが、やっぱり恩人には、直接謝意を伝えたいと思い、そう言おうとすると、リウム先生から待ったが、かかった。


「お待ちください、殿下。殿下のお考えは、大変に良いことと存じます。しかし、オルティシアが、断っている以上、無理強いをするのは、良くありません。部下の心情を慮ることも帝王の道でございます。」


 僕は、そう言われて、オルティシアに迷惑をかけたことに気付いたのであった。


「うん、分かりました、先生。ごめんね、オルティシア。」


 僕は、オルティシアに謝った。するとオルティシアは、こう言って来た。


「はい、謝罪を受け入れます。ですが殿下、無闇に謝ることが良いと言うわけではございません。その事を心の中に留め置いてください。」


「うん、分かった。」


 そう言って、話は終了した。


 少し休憩を挟んだ後、僕は、師匠たちと鍛錬を再開した。今からやっていくのは、外の魔力や氣を感じてそれを体内に取り込み増幅させるというものである。

 この技術は、九我流と魔導の共通した唯一技術で、これが出来なければ次に進むことが出来ない関門である。

 ユナ師匠が、いつもの準備を終えると、詠唱を開始した。


「界と界を繋げる門よ、今ここに、現れて、我らを、導け、転移門。」


 すると、ユナ師匠の立っている場所から少し離れた場所に魔法陣が展開し、その魔法陣の上にとある所と繋がるゲートが、出現した。

僕たちは、そのゲートに入りとある場所に転移していったのである。


 転移を終えると、そこには、巨大な滝が現れていた。何故滝に来たかと言うと、滝行の鍛錬をするためである。

 外の魔力や氣を感じてそれを体内で増幅するという技術は、四つの段階から出来ている。


 一番目は、自分の中にある魔力や氣を感じる事

 二番目は、自分の周りにある魔力や氣を感じる事

 三番目は、その周りの魔力や氣を自分に取り込むこと

 四番目は、取り込んだ魔力や氣を、自分の魔力や氣と混ぜて、増幅する

この四つから出来ている技術なのである。

 では、なぜ滝行に来たのかと言うと、一番目と二番目の訓練のためである。滝行を行う事により精神の統一を行うことにより、自分の中を感じることも周りの世界も感じることが出るためである。


 僕が、この滝行初めてからもう三か月が経とうとしていた。滝行により雑音が消され、精神を統一することが出来、自分の内に有る魔力と氣を感じる所までは至っているのだが、その後の周りの魔力と氣を感じることが、なかなか出来ないのであった。

そんな事を考えながら滝行の準備をして、滝に入ろうとした時、須針師匠がこんな事を言って来た。


「エギルよ、焦ってはならぬ。焦れば周りは見えなくなる、焦らずゆっくりと自分を周りに溶け込ましていけ、そうすれば見えてくる。」


「自分を周りに溶け込ます?」


「そうじゃ、自分も周りも同じものと思うと良いぞ、やってみよ。」


「はい、師匠。」


 僕は、滝行を開始した。まずは精神統一をし心をフラットな状態にする、その状態から自らの内に向かって意識を向けていく、すると体の内に魔力と氣を感じることが出来た。問題は、この次である。

 僕は、再び意識を表層に持っていき精神をフラットな状態にした。そして師匠のアドバイスに従い、自分は周りと同じ存在と思っていくと、自分の周りにキラキラとした物が漂っていることに気付いたのであった。これは、何だろうと思っているとホーンが鳴った。


「殿下、終了でございます。」


 そう言ってセドイスが、僕の所に来ていて声をかけてくれた。僕は、セドイスに立たせてもらい滝つぼを出て、師匠たちの元に戻った。

すると師匠たちが、こんな事を聞いてきた。


「見えたか?」


 僕は、こう答えた。


「見えました。」


 それを聞いた師匠たちは、満足げに笑うと、こう言って来た。


「休憩が、終わったらもう一度するぞ。今度はちゃんと見てこい。」


「はい。」


 そう言って休憩に入り、しばらく休んだ後、再び滝行を行い先ほどのやり方をしてみると、またあのキラキラとした物が見え、さらにそれを見ていくと、キラキラとした物はこの滝全体を形作ていることに気が付いたのである。

 再びホーンが鳴り、滝行を終えると、僕は、その事を師匠たちに伝えると、こう言って来た。


「合格じゃ。次の段階に移るぞ。」


 そう言って合格を宣言して、今日の滝行は終了したのであった。


 次の日、昨日と同じルートを衛剣の二人と、走っていると、とある違和感を感じたのであった。その違和感は、王城南区の魔力爆発を起こした武器庫の跡地から感じられた。僕は、二人と共にその跡地に向かい、その違和感の正体を探した。

すると、爆発の中心から少し離れた場所に有る瓦礫の下に何かが在ると分かり、瓦礫を衛剣の二人と協力して退けると、そこには何かの装置の残骸が転がっていたのである。


「これは、何だ?」


僕は、その何かの装置の残骸を持ち帰ることにし、その場を後にし、師匠たちが待つ中庭へと駆けて行った。


お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ