第14話 商売と爆発
投稿再開です。
どうぞ、お読みください。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕 城下町
僕は、久しぶりに王城を出て城下を歩いていた。もちろん衛剣の二人も同行している。僕も衛剣の二人も、王子とその護衛と分からないように変装をして、町に降りてきている。
では、なぜ僕たちが、こうして城下を歩いているかと言うと、これも授業の一環であるからだ。リウム先生曰く、王族に連なるものは、自らの国の事を良く知らなければならない、その為には、実地に出て学ぶことが肝心とのお言葉により、実地学習に来ているというわけである。
そして今回の実地学習のお題は、商売もとい経済の仕組みである。これを勉強するため先生から出されたお題がある。
一 自ら買い物をしてお金を使う事、買うものは食べ物・道具・自分が必要と思う物
二 商品が自分に届くまでの過程を知ること、一で買った物で調べる。
三 店の大小に囚われることなく調べる
この三か状のお題をクリアすることにより、経済と言う巨大な歯車の一部を知ることが出来ると先生が言っていた。
そんなこんなで、城下町を歩いていると、屋台が多く立ち並ぶ一角にやって来ていた。そこかしこから、食べ物のいい匂いが漂ってきていた。その匂いに釣られてか多くの人たちがこの一角に集まって来ていた。
「すごい人だかりだね。いつもこんな感じなのかな?」
「そうですね、朝から夕方までこの一角はこんな状態ですね。」
僕の疑問にセドイスが答えてくれた。僕は、さらにセドイスにこの屋台が集まっている所で名物を聞いた。
「セドイス、ここの屋台村で一番おいしい物は何?」
「あ~、それでしたら、少し奥の方にある屋台に有りますよ。」
そう言ってセドイスが、奥の方に歩き出したので、僕とオルティシアは付いて行った。人ごみの中を掻き分けながら進んで行くと、セドイスがとある屋台の前で停止していて、僕たちを待っていてくれた。
「こっちですよ。」
セドイスは、僕たちを発見すると手招きをして呼んでいた。屋台の前に着いた僕たちの鼻に、肉が焼けるおいしい匂いが漂って来た。
「ここが、そうなの?」
「はい、私の行きつけの屋台の中で一番うまいところです。」
セドイスが、僕の疑問に自信満々に答えてくれた。そな会話をしていると、屋台の店主の人が、声をかけてきた。
「セドイスの兄ちゃん、今日もお城を抜け出して家に食べに来たのかい?」
「いや、今日は、違いますよ。」
「ホ~オ、そりゃ~珍しいな~、槍でも降るんじゃないのか?」
「おやっさん、変な事言わないでくれる。」
どうやら、セドイスと屋台の店主さんは、かなり親しい様子である。セドイスが、いつも昼食になるとこの屋台に来て食事をしていくとの事であった。そんな話を聞いているとヒヤッと寒気に襲われて周りを見てみると、僕の後ろに立っていたオルティシアが、ものすごく怖い顔で、セドイスを睨んでいた。
そして、ツカツカと歩みを進めてセドイスの後ろに詰めよっていった。
「セドイス卿、貴方は何をやっているのですか?」
ものすごく低い声を出したオルティシアにようやく気付いたのか、セドイスは、振り返って何か言い訳をしていたが、拳を頭に叩き込まれて、沈黙した。
「後で、団長に報告しておきます、覚悟していてください。」
「はい、分かりました。」
オルティシアに、そう言われてセドイスは、意気消沈となっていた。そんな空気を打ち破るように屋台の店主さんが、話しかけてきた。
「はい、お待ち。注文のホインドック出来たよ。」
そう言って店主さんが、差し出してきたお盆を受け取ると、その上には、ロールパンの真ん中を少し割って肉の腸詰と野菜を挟み、その上からチーズを乗せ、さらにサルサと呼ばれるソースをかけたものが、乗っていた。
僕は、その見た目に少し怖気づいたが、勢いよく口を開け、一口食べてみた。
「うっ、おいしー。」
僕は、この味が気に入り夢中で食べてしまった、それを見た店主さんは、ゲラゲラと笑いながら、こう言って来た。
「坊主、うまいか?」
「うん、おいしいよ。もう一個頂戴。」
そう言って、僕は店主さんに代金を渡した。
「毎度あり。」
店主さんは、お金を受け取るとそう言って再びドックを作り、僕に渡してきた。それを再び食べて僕は、店主さんにこのドックが出来るまでの過程を質問した。店主さんは、「社会勉強か?」と言いながら、説明をしてくれた。
店主さんが、説明してくれたことをノートに書きこみ、教えてくれた店主さんにお礼を言いその場を後にした。
その後、パン屋さん、お肉屋さん、と回り、最後に立ち寄った中央市場を見学して、今日は、終わりにすることにし、王城に帰っていると、ふと気になるお店を発見したのであった。
僕は、そのお店が、とても気になり覗いていく事にした。
僕たちは、そのお店にお邪魔すると、小さな店であり、その店の中には商品が一つも置かれていなかったのだ。そんな店の奥の方からひょろりと背の高い男性が出てきた。
「いらしゃいませ。どうぞごゆっくりしていってください。」
そう言って来たこの店の店主と思しき男性に、僕は、ある違和感を感じていた。この人をどこかで見たことがあると思いながら。
僕は、その違和感を抱えながら、店主に質問をした。
「すみません、このお店は、何を取り扱っているのでしょうか。」
すると店主は、こう返してきた。
「お客様が望むものを取り扱っています、何かございますか?」
僕は、この言葉にも聞き覚えがある違和感を感じながら、さらにこう続けて質問した。
「なんでも、取り寄せることが、出来ますか?」
そう質問すると、店主はこう返してきた。
「はい、人の命以外なら何でもお任せください。」
僕は、この言葉を聞いて、頭の中にある記憶の封印が一つ解除されるのを感じた。そしてその記憶の通りであるなら目の前の人物は、途轍もなくこの世界の経済をまわしていく事になる人物であったのだ。
僕は、店主に対してある注文をした。
「なんでも、揃えられると言うので、注文したいのですが、構いませんか?」
「はい、構いません。ご注文をどうぞ。」
店主は、ニヤリと笑い、注文を聞いてきた。僕は、とある物を注文した。それを聞いた店主は、さらに笑みを深くして問題なくお渡しするといい、契約書をしたためて、名前をサインした。
そこには、こう記されていた。
ワーグスト・ラエンドル
僕は、その名前を確認すると、目の前に立っている男が、この世界の経済の大部分を牛耳ることになる世界最大の商会を作り上げる人物だと改めて再確認することが出来た。
ラエンドル商会、それはゲーム〔咲く花〕・〔咲く華〕シリーズに登場する商会の名前である。その規模は、全世界を股に駆ける多国籍企業で、モットーは【お客様が望まれたものは、人の命以外なら全て揃えてお渡しをする】と言うもので、そのモットーの通り人の命以外を取り扱っているのである。
さらに主人公を支えるスポンサーになるなど、物語にも大きく関わってくる存在である。その創設者にして経営トップに君臨するのがこのワーグストなのである。
ワーグストは、自分のサインを書き終えると、僕に契約書を差し出してきた。僕はそれにサインをし、契約を完了させた。ワーグストは、僕のサインを見ると一瞬驚いた顔をしたが、特に言及することもなく、代わりにこう言って来た。
「では、期日にご自宅にお届けに参ります。」
「よろしくお願いします。」
僕もそう言って、セドイス・オルティシアを伴い店を後にした。そのまま王城に向かって歩いていると、突然激しい揺れと轟音が響いたのであった。
ドッガーーン
あまりにも激しい揺れだったため地面に倒れてしまった僕が、揺れが収まり顔を上げた時に見た物は、高々と上がる黒い煙であった。
お読みいただき、ありがとうございました。




