第52話 対決と捕縛
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〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 とある場所
タルドマン・フォン・ドルパースとそのパートナーの盗賊の男が、王国軍に戦いを挑むために領外へと出た後、この元〔ドルパース伯爵領〕に半仮面をつけた集団が、現れた。その集団は、領内の住民たちにこんな話をして滞在していた。
「我々は、タルドマン殿より彼がこの領に帰るまでの行政権の委任状を託された者たちです。領民皆様におかれましては、我々を信頼していただきと思います。」
住民たちも、この話を聞いて胡散臭い半仮面の連中だなと思いながらも、領主不在では、何かと不安が有ったので、この集団を受け入れたのであった。
そしてその日から、この半仮面の集団は、元〔ドルパース伯爵領〕の行政を司りだしたのであった。
そんな領内を仮面で顔をすっぽりと覆い、黒いローブを全身に纏った、半仮面の集団の中でも特に異質な人物が、領内に点在している畑へと向かっていた。
「さあ、どれくらい実っているでしょうか?」
黒いローブを纏ったその人物は、そんな事を言いながら、とある事に期待を膨らませたのであった。
そして歩きながら、こんな事を言いだした。
「あの二人を焚き付けるのは、非常に簡単な事でした。そして仲直りさせるのもね。やはり単純なもの同士、気が合うのですな。我々にとっては、非常に好都合な事ですが。」
誰かをバカにしたような独り言を述べながら、黒いローブの人物は、目的の場所へと近づいていく。
そして目的の場所が、見える丘へとやって来た時、黒いローブの人物は、丘に踏み入れた足を即座に離して、後方に飛び上がり、宙返りをしてその場所から退避した。その次の瞬間、バリバリバリと轟音を響かせて雷が、黒いローブの人物が、先程まで立っていた場所に落ちたのであった。
その落雷を確認した黒いローブの人物は、こう言った。
「これは、聊か予想外ですな、どうして我々が、この場所にいると分かったのです。大賢者リウム殿?」
そう言って黒いローブの男は、懐に隠していた杖を上空に向けて、何かの魔術を発射した。
そしてその魔術に狙われた人物は、それを易々と受け止め弾くと、予め構築しておいた別の魔法を行使した。
それを見た黒いローブの人物も、その魔法に対抗する魔法を素早く構築すると、発射された魔法に向かって発射したのであった。
その様子を見た上空に浮かんでいる人物は、黒いローブの人物に対して、こう言った。
「まさか元気に過ごしているとは、思っていませんでした。とうの昔に死んでいるはずですからね、貴方は。」
そう言われた黒いフードの人物は、こう返した。
「ええ、恥ずかしながら生き永らえました。ですが、この仮面とローブを身に着けていなければ、普通に行動することは、出来ないですが。それでも感謝していますよ、この力を得ることになったのでね。」
それを聞いた上空にいる人物は、こう問うた。
「それで、我が国に一体何をするつもりですか? 我らノグランシア一族の唯一汚点たる貴方が。」
そう言われた黒いフードの人物は、上空にいる人物に対して、こう返答した。
「ははは、母上、何をいまさら聞いているのですか? 前も申し上げました、この国を壊すと、そして貴方にも打ち勝つと。 はっ。」
そう言い終えると、杖を上空に再度向け、構築していた魔法を発射した。発射された魔術を上空にいる人物は、展開したシールドで受け止め、反らすと、また別の魔法を行使しながら、こう言った。
「そうですか。ではもう一度私の手で、冥府に送ってあげますよ、我が息子、ディス―グリア・フォン・ノグランシア。」
そう言われた黒いフードの人物は、行使された魔法を受け止めながら、こう返した。
「昔の俺と思うなよ、我が母、ガーベリウム・フォン・ノグランシア。」
そして二人が、放った別の魔法が、二人の間の中心でぶつかり強い光が、発生したのであった。
〔デイ・ノルド王国〕東部 メルソニス川 河口 河口からすぐの海上
僕こと、エギル・フォン=パラン=ノルドは、ガル叔父上とデオルード伯父上率いる海兵隊の出発を見送ると、とある集団の到着を、強襲揚陸戦闘艦「ダザルベス」の艦内で待っていた。
暫くして艦長から通信が入り、「飛行甲板へお越しください。」と案内があった。僕は、リウム先生とシルビア叔母上と共に飛行甲板に向かい、その集団を出迎えた。
「皆、ご苦労様。遠い場所からよく来てくれた。」
僕が、そう言うとその集団を統率している人物から、こう言われた。
「労いの言葉、ありがとうございます、殿下。ですが、我々は、どの様な場所でも共に向かいます。」
僕は、その人物に対してこう返した。
「ありがとう、近衛師団長。」
そう言われた近衛師団長は、敬礼をして僕に謝意を表すと、直ぐに懐に大事に閉まっていた封書を僕に渡してきた。
僕は、それを受け取り、開封して、その中に入っている父上からの手紙を読んだ。その手紙には、この一文だけが書かれていた。
「エギル・フォン=パラン=ノルドに対して近衛師団の指揮権を一時的に付与する。 フェニア=ノルド。」
僕は、それを確認し、師団長に対して、こう命じた。
「近衛師団長に命じる。我々と共に元〔ドルパース伯爵領〕へ向かい、反逆者共を残らず捕縛せよ。」
「はっ。直ちに開始いたします。」
近衛師団長は、僕の命を受けて直ぐに行動を開始した。そして僕たちもやって来た近衛師団の部隊と共に「ダザルベス」から飛竜に乗って飛び立ち、一路、元〔ドルパース伯爵領〕へと向かったのであった。
そして元〔ドルパース伯爵領〕に着いた時、リウム先生が、こう言って来た。
「殿下、私は、すこし用事がありますので、ここで別行動をとらせていただきます。よろしいでしょうか?」
僕は、「分かりました、先生」と言って了解を示した。それを受けて先生も、「ありがとうございます」と言って礼を述べると、飛行の魔法を行使して、一人でどこかへと向かったのであった。
そして僕たちは、元〔ドルパース伯爵領〕の領都〔マーリ〕に到着すると、僕は、改めて近衛の部隊に命令を下した。
「半仮面をつけている反逆者共を捕らえよ。」
僕が、そう言うと近衛たちは「おう。」と雄叫びを上げ、捕縛を開始したのであった。
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