第51話 朝駆けと塹壕戦
遅くなってしまい、すみませんでした。
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〔デイ・ノルド王国〕東部 王家直轄領〔モールトタイス〕 森林
ピュイ――――イ
タルドマンと盗賊の男が率いる反乱軍の野営地に甲高い笛の音が、木霊した。それを聞いた反乱軍の兵士たちは、眠っていた寝袋やハンモックから起きると、素早く着替えを済ませ、用意されている食事を摂り始めた。
兵士たちは、最後の食事かもしれない朝食を食べ進めながら、談笑をして、気分を紛わせながら、気持ちを高めていった。
そしてタルドマンと盗賊の男も、兵士たちと同じ朝食を食べながら、今回の作戦について話していた。
「大将、今は俺たちの方に分がある状態だ。この朝靄のおかげでな。」
そう盗賊の男が、言うと、タルドマンも、「あぁ。」と同意を示した。そして盗賊の男は、こう言葉を続けた。
「だが、この天気も俺たちの味方である時間は、そう長くない。そこで夜の内に手下たちに相手の陣の様子を探らせておいた。」
そう言い終えると王国側の陣が、記されている紙を取り出し、テーブルに広げ、そしてある場所を指した。
「手下たちの報告によると、敵は、塹壕を掘っていて、迎撃態勢を取っていると言う事だ。そして最前列居るのが、海兵隊と言う厄介さだ。」
盗賊の男は、そう説明をすると、また別の場所を指差した。
「だから俺は、手下たちに陣に穴は開いていないかどうかも、確認させた。そしてこの場所に穴が開いている事を突き止めた。」
そして盗賊の男は、こうタルドマンに進言した。
「大将、俺が考えた作戦は、こうだ。 まず騎馬と歩兵とで一塊になる、そしてこの陣の穴をついて海兵隊をやり過ごし、後ろに控えている貴族たちの軍を突破して、王都へと向かう。どうだ?」
それを聞いたタルドマンは、「ふむ。」と言いながら少し考えると、こう返答した。
「よし、その策で、行こう。」
そう言うとタルドマンは、食事を一気に食べ終えて、コップに入っていた水を飲むと、立ち上がった。
そして自分の部下たちにこう命じた。
「皆を集合させよ、そして皆の盃にワインを、注げ。」
その命を受けたタルドマンの部下たちは、直ぐに行動を開始し、数分後、タルドマンと盗賊の男の前に、反乱軍の兵士たちが、勢揃いした。
そして集まった兵士たちに盃が手渡され、ワインが、一杯だけ注がれた。そしてタルドマンと盗賊の男にも注がれると、タルドマンは、こう言いだした。
「皆、今日が最後の戦闘になる。ここで勝利を手にする。ただそれだけだ。」
そう言うと、持っている盃を掲げ、こう言った。
「勝利を。」
その言葉を聞いた盗賊の男と兵士たちも、盃を掲げ、「勝利を。」と唱え、一斉に盃に入っていたワインを飲み、飲み終えると同時に、盃を地面に叩き落したのであった。
そしてタルドマンも、同じようにワインを飲み終えると、盃を地面に叩きつけたのであった。
それが終わるとタルドマンたちは、直ぐに行動を開始した。
「角笛を鳴らせ。」
その号令を受け、馬に騎乗している者たちが、一斉に角笛を鳴らした。そしてその音が、平原になら響いたのであった。
角笛を鳴らし終えると、タルドマンは、命を下した。
「突撃。」
その命を受け、朝靄がまだ晴れぬ、早朝の時間帯に兵士たちが、一塊となって動き出したのであった。
〔デイ・ノルド王国〕東部 王家直轄領〔モールトタイス〕 平原
反乱軍の兵士たちが、一塊になって朝駆けと呼ばれる突撃奇襲戦法をやってくる少し前、王国側の陣でも動きが、開始されていた。
昨日の内に完成していた塹壕に海兵隊員たちと貴族連合軍の兵士たちが、次々と入って行き、装備している魔銃の点検を行うと、安全装置を外して射撃体勢を取った。そして全ての塹壕で準備が整った時、平原に角笛の音が、響き渡った。
それを聞いた兵士たちは、手に持っている魔銃を握りしめて、その時がやってくるのを待った。
そして地響きと共に、騎馬と歩兵が一塊となった反乱軍が、突撃をして来た。その直後、上官から命が下された。
「放て。」
その言葉を受け、塹壕にいた兵士たちは、魔銃の引き金を引いたのであった。
そして角笛が鳴り響いた数時間後、全ての戦闘が終了したのであった。この戦いにおいて反乱軍は、奇襲突撃を行い、それによって全戦力の9割を失い、壊滅していた。反乱軍の首謀者であったタルドマン・フォン・ドルパースは、この突撃によって銃撃され死亡し、タルドマンのパートナーであった盗賊の男は、重傷を負い、王国軍に捕縛されたのであった。
そしてこの平原での戦闘をもって、後に「1ヶ月戦争」と呼ばれる王国内の反乱は、収束したのであった。
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