第49話 海兵と盗賊
遅くなってしまい、すみませんでした。
どうぞ、お読みください。
私こと、デオルード・フォン・ユーリナタスは、古巣である海兵隊に一時的に再入隊をし、こうして他の隊員たちと王弟殿下と共に揚陸艇に乗り込み、とある地点へと向かっていた。
そんな中私が、乗っている揚陸艇の中に、年若い兵士が乗り込んでいた。その兵士は、落ち着きがなく、あっちこっちと首を動かして、不安に耐えている様であった。
私は、この若者が、気に成りその場へと向かった。
「すまんが、少し道を開けてくれるか?」
私が、そう言うと、私の周りにいた兵士たちは、立ち上がるとこう言いながら道を開けてくれた。
「はっ、中将。お通りください。」
「ありがとう。」
私は、礼を言いながらその開いた場所を通っていき、先程の若者の傍へとたどり着いた。
私が、自分の所に来たことに驚いた若者は、急いで立ち上がると、敬礼をして来た。私もそれに答礼をして答えると、こう言った。
「おい、ルーキー。ガチガチではないか。戦場までは、まだある。もう少し肩の力を抜け。」
それを聞いた若者は、こう返してきた。
「はっ、自分もそうしたいのですが、何せ初めての実戦でありまして、どうしても震えてしまうのです。」
そう言った若者を私は、ジッと見つめるとこう問うた。
「君は、キャンプが終わったばっかりか?」
「はっ、そうであります。」
若者は、そう答えを返してきた。私は、そんな若者にこうアドバイスを送った。
「君は、あの地獄のキャンプで何が一番大切であるかを、学んだはずだ。それは、何だったかな?」
そう言われた若者は、「はっ。」とした表情になってこう返答してきた。
「自分は、仲間の為、仲間は、自分の為、動くであります。」
「そうだ、ルーキー。海兵なった者は、死してなおも海兵だ。周りに仲間がいる事を忘れるな。分かったか!!」
私が、教官並みの怒声で、そう言うと、若者は、こう大声で返してきた。
「サー、イエッサー。」
「よろしい。」
私が、そう言うと、若者は先ほどまで顔に浮かんでいた表情を消し、海兵が見せる表情へと変わっていたのであった。
そんな時、船の後方で船を操船している水兵が、私を呼んだ。
「ユーリナタス大将、前線で指揮の統括をしておられます、デノスタイア伯爵より通信が、入っておられます。」
私は、それを受けて、若者の背中に気合の叩きを打つと、水兵の所へと向かった。水兵から通信機を貰うと、デノスタイア伯爵に返答した。
「変わりました、伯爵。ユーリナタスです。」
すると通信機の向こうから切羽詰まった声が、聞こえて来た。
「公爵閣下、申し訳ありません。海兵隊が到着する前に、ニナルト子爵が勝手に攻め込み、尚且つ全滅の憂き目に遭ったと報告が、入りました。その為、包囲の一部が壊れ、反乱軍どもを領外へと出してしまいました。」
それを聞いた私は、こう返答した。
「分かった。伯爵は、直ちに軍を、私が今から指定する場所に他の貴族たちの軍勢と共に向かってくれ。その場所で我ら海兵隊と合流だ。」
それを聞いた伯爵は、こう返してきた。
「それでは、みすみす反乱軍どもを逃がしてしまう事になりませんか?」
「大丈夫だ、今から指定する場所に必ず現れる。そして我々の方が速く着く。」
私は、伯爵にそう言った。それを聞いた伯爵は、こう返答した。
「分かりました。直ちに他の者たちと向かいます。」
そう言い終えると通信機を切ったのであった。私は、それを水兵に返して、こう命じた。
「大尉、全船に速度を上げる様に伝えろ。」
それを聞いた水兵は、「はっ。」と言って了解を示すと、他の揚陸艇の艇長たちにも伝えたのであった。
そして揚陸艇の集団は、船足を上げ、水面を疾走しながら、目的地へと向かったのであった。
〔デイ・ノルド王国〕東部 とある場所
ドドドドドド。 ヒ、ヒィーン
と馬が地面をかける音が、響き、その後、馬の嘶きが、響いた。平原から少し離れた場所にある、森の入り口付近に、馬に乗った集団と、それに付随した兵士の集団が、その場所で足を止め、休憩を開始した様であった。
するとこんな声が、聞こえて来た。
「はあ、もう少しで着くな。」
そう言って話を始めた男は、無精ひげを生やし、目つきがいかにも悪ですと言っている男であった。
この男こそ、タルドマンのパートナーとなっている盗賊たちの元締めであった。
そしてその言葉を聞いて疲れで少しへたり込んでいる男が、タルドマン・フォン・ドルパースであった。
「ようやくか、敵をあざ抜けているといいんだがな。」
それを聞いて盗賊の男は、こう返した。
「大将、そればっかりは、時の運だ。」
「あぁ、それぐらい分かっている。ここで少しばかり休息を取ったら、再度出発するぞ。」
その言葉を受けて、タルドマンは、こう返したのであった。
そしてタルドマンと盗賊の男に率いられた反乱軍は、少しばかり休憩を終えると、運命の決戦の地に向かい、馬は駆け始め、兵士も歩き出したのであった。
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