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第43話 集合と催促

どうぞ、お読みください。

 〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 領都〔マーリ〕


 僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、行動を共にしている「第二十一武装偵察小隊」の三人の隊員たちと共に、領都〔マーリ〕の近くへと移動をし、とある場所に身を潜めているのであった。

この場所で後からやってくるガル叔父上たちと合流する手筈になっている。それまで僕たちは、休息を取りながらも周囲の警戒を行っていた。


「どうやら、まだの様ですね。」


 隊員の一人が、外の様子を二階の屋根裏から見て来てそう報告した。それを受けてもう一人の隊員が、こう答えた。


「直ぐには、戻ってこられないだろうな。嫌がらせにしては、規模がでかいからな。」


「確かに、そうですね。」


 それを受けて外の様子を見て来た隊員が、同意を示したのであった。そして僕は、二人の会話を聞きながら、サンプルとして持ってきた植物を見ながら、三人目の隊員と話していた。


「そもそも、この「ネモミストリア」って、植えて大丈夫な物なの?」


 僕が、そう聞くと実家が、農家だという三人目の隊員は、こう答えてくれた。


「はい、国から免許をもらった農家であれば栽培することが、出来ます。売っていいのは繊維が取れる茎と焙煎した種だけです。され以外の部分は、次の年の作付け用の種以外は、燃やす事になっています。」


 それを聞いて僕は、その隊員にこんな事を聞いた。


「えっ、焙煎した種って言っていたけど、食べても大丈夫なの?」


 三人目の隊員は、僕の疑問に対してこう答えてくれた。


「はい、大丈夫です。焙煎した物は、そのまま食べても害は、有りません。ですから殿下も、食べたことはあるはずですよ。知らない内に。」


 僕は、それを聞いて「へぇ~、そう何だ。」と言った。そんな話をしていると外の様子を確認していた隊員が、こう言って来た。


「殿下、どうやら他の組も到着した様ですよ。」


 僕は、それを聞いてその隊員が覗いている窓に寄ると、外を確認した。すると確かにガル叔父上たちが、周囲を警戒しながら、此方にやって来ていた。

僕たちも緊急事態に対応出来るように体制を整え、叔父上たちの到着を待った。それから数分後、僕たちが、身を潜ませている建物のドアがノックされた。

それを聞いた隊員の一人が、ドアに近づいて、外にいる人物に対してこう言う問いかけをした。


「トリベルオ。」


 そう言われた外でドアの前に立った人物は、こう返してきた。


「ハールリエン。」


 それを聞いた隊員は、ドアの覗き窓を開けて、外にいる人物を確認すると、ドアの施錠を解除して、外にいる人たちを迎え入れたのであった。

その後合流した人たちと共に次の偵察項目の確認と準備を開始し、夜が訪れるのを待ったのであった。






 〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 領都〔マーリ〕 領主館


 タルドマン・フォン・ドルパースは、違法に栽培していた「ネモミストリア」が、燃やされたとの部下からの知らせを受け、現地へとチャリオットで向かい、消火の指揮と燃やされたことによって受けた損害等の確認を終えて、夜にようやく領都〔マーリ〕の領主館に帰還していた。

事態を鎮静化させ、疲れ切った体ではあったが、その後の報告を受けるために執務室へと入ると、そこには先客が存在しており、彼の到着を執務机に腰掛けながら待っていた。それを見たタルドマンは、苦虫を噛み潰した様な顔をすると、執務机に腰掛けている人物に対してこう言った。


「何の用だ? そこは私の椅子だ。」


 それを受けた人物は、座っている椅子を回転させ、タルドマンの方を向いた。そこに座っていたのは、顔を仮面で隠し、更に全身を黒いローブで覆っている、如何にも怪しい奴であった。

その黒いローブの人物は、タルドマンに対してこう返した。


「貴方の椅子? 何を言っているのですか。我らの支援がなければここまでの事を出来なかったのに、勘違いをしてもらっては困りますよ。」


 そう言い終えると椅子から立ち上がり、タルドマンの方へ進むと、こう告げた。


「支援の見返りは、きちんと用意しておいてくださいね。どれだけ損害が、大きかろうと回収させていただきますから。」


 それを聞いたタルドマンは、更に顔を歪めながら、こう返した。


「分かった。そっちの言うとおりにしよう。」


 その言葉を聞いた黒いローブの人物は、「期待していますよ。」と言って執務室のドアを開け、部屋の外へと出て行ったのであった。

それを見送ったタルドマンは、額に浮かんだ大量の汗を拭うと、執務机に向かい、部下たちが纏めた報告書を読み、その後、部下たちに後処理の指示をして、自分の部屋へと戻ると、ベットに倒れこみ、そのまま眠りに落ちたのであった。


 しかし、その眠りは長く続くことは、無かった。領主館の外の音によって覚醒させられたからであった。


「うるさい、何の騒ぎだ。」


 と言ってベットから出ると、部屋の窓から室内が、赤々と照らし出されているのを確認したのであった。

すると部屋のドアが、ノックされ部下の一人が入ってくると、こう告げたのであった。


「閣下、火事です。直ちに避難をお願いします。」


 部下の焦った顔を見たタルドマンは、「うむ。」と言って着の身着のまま、領主館から脱出した。

脱出したタルドマンは、赤々と燃える領主館をジッと見つめると踵を返して領主館の背後にある砦へと向かったのであった。


お読みいただきまして、ありがとうございました。

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