第42話 調査と爆破
遅くなってしまい、すみませんでした。
どうぞ、お読みください。
〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 メルソニス川 夜中
ザ ザザー
元〔ドルパーズ伯爵領〕を北から南に流れるメルソニス川のとある川岸に二艘の小型ボートが接岸した。
その二艘のボートから黒い服で姿をカモフラージュさせた十数人の集団が、降りてきて、乗って来たボートを川岸から陸地に挙げて、近くに生い茂っていた茂みにそれを隠したのであった。
上陸したことを隠ぺいしたその集団は、四人一組となってその場を後にし、夜の闇の中に消えて行った。
〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 領都〔マーリ〕 領主館
王国に対して反乱を起こしたタルドマン・フォン・ドルパースと、彼が率いている軍隊によって領都〔マーリ〕に残っていた警備隊と内政を司っていた官僚たちが撃破され占領されてから二週間が経っていた。
その二週間の間、元〔ドルパース伯爵領〕の住民たちは、王国を助けたと云う罪によって、とある植物を育てるという、強制労働に駆り出されていた。
そんな人通りが、消えた領都〔マーリ〕の道を全速力で領主館へと向かっている男が、居た。
男は、乱暴に領主館の正面玄関を開けると自分の主である、タルドマンの居る部屋へと駆けて行き、その扉を乱暴にノックした。
すると部屋の中から気だるげな声で、「入れ。」と言う声が、聞こえて来た。
男は、その返事を受けて部屋に入ると、領主の机で、ふんぞり返っているだけのタルドマンに報告を行った。
「タルドマン閣下、大変な事になりました。」
血相を変えて入って来た部下の言葉に、タルドマンは、「どうした?」と全く危機感のない答えで、報告の続きを促した。
それを受けた部下が、こう発言した。
「畑が、燃やされました。」
しかしそれを聞いてもタルドマンは、どういうことか分かっておらず、「何のことだ?」と返したのであった。
これでは埒が明かないと判断した部下は、タルドマンが座っている机の前に行くと、こう告げた。
「例の植物を育てている畑が、燃やされました。それも半分以上が焼かれました。」
その報告を聞いたタルドマンは、事態の深刻さをようやく認識したのか、こう部下に行った。
「私も、出る。チャリオットを用意せよ。」
それを聞いた部下の男は、「はっ。」と言って部屋を後にすると、チャリオットの準備に取り掛かったのであった。
そしてしばらくして領主館からチャリオットに乗ったタルドマンと、彼の親衛隊が、領主館を出発していったのであった。
そして畑が、ある場所に着いたタルドマンの目に赤々と燃える炎が、写ったのであった。それを見たタルドマンは、こう呟いた。
「私の商品が、私の計画が、終わってしまう。誰が、こんな事をやったのだ?」
その答えは、数日前に遡る。
〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 領内のとある場所
僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、ガル叔父上夫妻と「第二十一武装偵察小隊」の十数人と共に、夜中、メルソニス川から上陸して、ボートを隠し、四人一組となってこの場所にやって来ていた。
僕が居る組が、到着すると先についていた小隊長の組が、姿を現した。そしてそれと時を同じくしてガル叔父上の居る組が、到着したのであった。
それからしばらくしてシルビア叔母上が居る組も到着し、そのすぐ後に最後の組も到着すると、集合した場所に簡易拠点を建て、威力偵察の段取りと目標の確認を行い、次の日の行動開始に備え、ハンモックを準備して就寝したのであった。
次の日僕たちは、朝食を食べ終えて、再び四人一組になると、元〔ドルパース伯爵領〕の領内で、偵察を開始した。
そして僕が居る組が、とある場所に広がっている畑に何かの作物が、育てられているのを見つけたのは、偵察を開始して1時間後の事だった。
僕は、誰もいないことを確認し、畑の中に入り、植わっている植物の中から、一本を抜き出すと、仲間たちの元、戻ったのであった。
「これ何の植物だろう?」
僕が、それを他の3人に見せながら聞くと、一人の隊員が、こう言って来た。
「エギル殿下、俺それを見たことあります。」
「えっ、何か知っているの?」
そう僕が、問い直すと、彼は、「はい。」と言ってこう言いだした。
「この植物は、「ネモミストリア」と呼ばれる植物で、麻薬「ミストルスク」の原料になる植物です。正確に言えば、葉っぱからその麻薬を作ることが、出来ます。」
それを聞いて僕は、何故元〔ドルパース伯爵領〕でそんな物騒な植物が、作られているのかとその隊員に聞いた。
すると隊員は、こう答えてくれた。
「多分、反乱を継続させるための資金源として育てていると思います。これを欲しがる人は、たくさん居ますから。」
僕は、それを聞いて資金源を断つためにも、この植物をこの領内から一掃すべきと考え、隊員の一人が、持っている魔導通信機を起動して、他の組にこの事を伝えたのであった。
そして後方攪乱も兼ねてこの植物の畑を全て焼却し、資金源を断つことにしたのであった。
その後、僕たちを含む偵察隊は、領内でこの麻薬の原料となる「ネモミストリア」を育てている畑を虱潰しに探して、その位置を記録し、何本かのサンプルを確保すると、全ての畑に爆弾と油を仕掛けたのであった。
そして住民の作業が終わった畑から順番に爆破していったのであった。
その爆破された様子を見に来たタルドマン・フォン・ドルパースの姿を、確認した僕たちは、次の一手の為にその場を後にしたのであった。
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