第34話 同化と依頼
遅くなってしまい、すみませんでした。
本日の一本目です。
どうぞ、お読みください。
その男は、自分の特徴を知っていた。
男が、それに気付いたのは、まだ彼が、幼い時の事である。当時の彼は、両親と共に首都〔ハルマ―〕の東区に住む、少し裕福な家庭の少年であった。
両親は、東区で仲卸をする店を経営しており、少年も学校に通いながらもそれを手伝っていた。
絵にかいたような幸せな生活を送っていた少年にも一つ悩みがあった。
それは、友達が少ない事である。
少年は、なぜ自分には友達が少ないのか理由を確かめるため、周囲の人たちを観察し始めた。
彼は、学校や町で周囲に溶け込む様に佇み、周りの人たちを見つめていた。来る日来る日も同じことをして、そしてある日、少年は、自分の特徴を見つけたのであった。
その日も少年は、学校で周囲に溶け込む様に佇んでいた。しばらくそうしていると少年は、床に倒れたのであった。
床に倒れた原因は、廊下を走っていた生徒にぶつかったのであった。
「イタタタタタ、あ~痛かった。廊下を走るなよ。」
と少年が言うとぶつかった生徒は、こう反論した。
「お前こそ、いきなり現れるなよ。危ないだろうが。」
それを聞いて少年は、こう言い返した。
「はっ、僕は最初からここにいたよ。何言っているんだ。」
するとぶつかった生徒は、こう言い返してきた。
「だったら廊下の真ん中に立ってなよ。気付かないんだよ。」
それを聞いた少年は、ぶつかった生徒にこう聞き返した。
「おい、今気づかなかったって、どういうことだよ。」
そう問われた生徒は、こう言ったのであった。
「お前、存在感がなさすぎるんだよ。普通過ぎて。」
それを聞いて少年は、立ち上がると生徒に手を差し伸べて立たせるとこう言った。
「ごめん、廊下にぼーっと立ってて。」
そう言われた生徒も、同じように謝って来た。
「こっちこそ、ごめん。ぶつかってしまって。」
そうお互いに言うと、握手をしてその場から離れたのであった。そして少年は、鏡が置いてあるとある部屋へと行き、自分の容姿を確認したのであった。
その鏡に映っていたのは、何処にでもいる顔立ちと、何処にでもいる中肉中背の体格であった。
少年は、自分の容姿が途轍もない武器に成るのではないかと考えた。そこから少年は、その容姿の活かし方を模索し始めた。
いろいろな場所で、その場に溶け込み周囲を観察したり、誰かの後ろについて行ったりとあらゆることをして少年は、自分の特性を把握していったのであった。
そして彼は、少年から大人になり、両親がやっていた仲卸業を継ぎ、店を営んでいた。そして家業とは、別の仕事も始めたのであった。
「情報、助かったぜ。旦那。」
そう言った人物が、男に大量の金貨が入った袋を渡した。男は、それを受け取るとこう返した。
「役に立ったなら、良かったよ。」
そう男が、始めた仕事とは、情報屋であった。その容姿を活かして町の中のうわさ話や、個人情報などを仕入れ、それを売っていたのであった。
そんなある日、男の元に身なりのよさそうな人物が訪ねて来た。その人物は、男にこんな依頼をしたのであった。
「貴方の噂は、私たちの組織も知っています。凄腕の情報屋であると。そんな貴方に我々の依頼を遂行してもらいたいのです。」
そう言ってその人物は、依頼を書いた紙と前払いの着手金を机に置き、こう言ったのであった。
「とある集団を追跡して欲しいのです。それも随時報告をしながらです。」
そう言って依頼を頼んできた人物は、懐から小型の魔導通信機を取り出し、机の上に置いた。
それを見た男は、依頼人を胡散臭く思いながらも、藪を突いて蛇を出すべきではないと思い依頼を受けたのであった。
そして男は、エギルたち〔スカイテール連邦王国〕訪問使節団が、首都〔ハルマ―〕を出発すると同時に彼らの後を追いかけたのであった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




