表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/129

第31話 計略と案内

遅くなってしまい、すみませんでした。


どうぞ、お読みください。

 〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパーズ伯爵領〕領都〔マーリ〕 領主館


 元〔ドルパーズ伯爵領〕の領主館の執務室で、この領の統治を王国政府から任されている地方統括官とこの領の治安維持を任されている地方警備隊の隊長は、揃って頭を抱えていた。

一日前に行った盗賊と思われた集団に対しての鎮圧作戦は、情報漏洩と敵の策略により、失敗してしまい、警備隊の半数近くを失い、更に警備隊の一部部隊が、人質に取られると言った大敗北を喫していた。

そしてこの盗賊と思われた正体が、ここ一年の間、元〔ドルパーズ伯爵領〕周辺の〔デノスタイア伯爵領〕などの貴族領を、荒らし回っていた集団であり、そして盗賊と言うのは隠れ蓑で、王国に対する反乱軍だったのである。


 反乱軍の存在を地方統括官の報告により知らされた王国政府は、直ちに元〔ドルパーズ伯爵領〕周辺の貴族たちに動員令を布告し、元〔ドルパーズ伯爵領〕を周囲から囲み、反乱軍の越境を阻止させた。

そして地方統括官と地方警備隊隊長には、反乱軍を鎮圧する様に命じたのであった。


 そして反乱軍鎮圧のために二人で会議を開いているのだが、重要な問題が、横たわっているため、頭を抱えているのであった。

その問題とは、人員不足である。

現在、領内の警備を担っているのは、元々領内の警備を行っている部隊であり、今回壊滅もしくは、人質になってしまった部隊は、緊急時の実働部隊であり、警備を担当している部隊とは、特性が違っていたのである。

そして領内の警備を行っている部隊を鎮圧に使うと、領内の治安を悪化させてしまう為、使う事が、出来ないのであった。

その為、二人は、頭を抱えているのであった。


 そしてしばらく頭を抱えながら唸っていると地方統括官が、「あっ」と言う声を発して顔を上げると、警備隊隊長にこう言って来た。


「隊長、反乱軍に囚われている部隊を救出しよう。」


 それを聞いた警備隊長は、その言葉にこう返した。


「何を言っている、我が国は、テロリストとは、交渉しない。それが、国是であり法だ。それを破るのか?」


 そう言われた統括官は、こう返してきた。


「いや、交渉をするフリをして内部に入り、人質の奪還と共に反乱軍のトップである、タルドマン・フォン・ドルパースを捕縛する。どうだ?」


 それを聞いた警備隊隊長は、「フム。」と言って少し考えると、こう返答してきた。


「それしかない状況だな。しかし交渉は、誰がやるんだ? 言っとくが、私は交渉官としては不向きだぞ。」


 それを聞いた統括官は、こう返した。


「交渉は、私がやる。隊長、貴方には、護衛を頼みたい。」


 そう頼まれた隊長は、「うむ、分かった。」と言って護衛の依頼を引き受け、その後人員の手配を、冒険者レギオンに頼むことを決定し、準備に入った。

そして反乱軍が、潜伏している一の森へ交渉をする用意があるとの矢文を打ち込み、返事を待ったのであった。

そして次の日、一の森の出口にて矢文が、発見され、統括官と隊長の所に持ち込まれたのであった。

そして手紙には、こう書かれていた。


『賢明な判断だ。私も貴様たちに会えることを楽しみにしている。対価は、会って伝える。そして会う日にちだが、そちらも準備があるであろう、その為、1週間後とさせて頂く。では、よい1日を。』


 それを読んだ統括官と隊長は、策が、成功するとの期待を持ったのであった。そして諸々の準備を整えて、1週間後、一の森の入口へ来たのであった。


 〔デイ・ノルド王国〕東部 元〔ドルパース伯爵領〕 一の森


 一の森にやって来た地方統括官と地方警備隊隊長は、反乱軍側の案内人を待っていた。しばらくして、一の森の入り口に、身なりが良い男が現れた。男は、統括官と警備隊隊長の元に近づき、こう言って来た。


「遅くなってしまい、申し訳ありません。主人よりお二人を連れてくるように命じられた者でございます。どうぞ、お見知りおきよ。」


 そう言って頭を下げて来た。警備隊隊長は、その男が、危険物を持っていないかどうかを確認する為に近づき、チェックを行った。

そして一通りのチェックを終え、危険物が無い事を確認し、それを統括官に報告した。それを受けて統括官が、案内人に行った。


「では、案内を頼みます。」


 それを受けて案内人は、「かしこまりました。」と言ってクルリと半回転して統括官たちに背を見せると一の森へと歩き出した。

そしてそれを見た統括官たちも、案内人の背を追って、一の森へと入って行った。


 一の森の中を案内人に導かれて統括官たちは、進んで行くと、森のどこかにある開けた場所に建てられていた砦へとたどり着いた。

案内人は、開けた場所に設置されている砦の門で、警備をしていた門番に、門を開ける様に言うと、門番は、直ぐに行動を起こして、門を、開けたのであった。

再び案内人が、歩き出すと、統括官たちも歩き出し、門をくぐったのであった。そのすぐ後門は、閉じられたのであった。

案内人に案内されるまま砦の中を、進んで行くと、一際大きな天幕が、立っていた。案内人は、そこで立ち止まり、統括官たちに入る様に促した。

統括官たちは、警戒をしながら入ると、中には、椅子が三脚と、テーブルが、用意されており、交渉の準備が、整っていたのであった。

そして案内人が、入ってくると、こう言って来た。


「間も無く、主人が参りますので、どうぞお掛けになってお待ちください。」


 そう言って案内人は、恭しくお辞儀をすると天幕から出て行き、統括官と警備隊隊長だけが、残されたのであった。

 そしてそれから数分後、天幕の帳が開き、メイドを伴った男が、入って来た。男は、メイドにお茶の用意を言いつけると、統括官たちの座っている椅子の反対側の椅子に腰掛けて、こう言って来た。


「よくぞ、お越し下さった。私が、タルドマン・フォン・ドルパースだ。さて私の土地を返してもらおうかな?」


 それを聞いた統括官たちは、改めて気合を入れ直したのであった。


お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ