花畑に辿り着いた青年【一頁完結型童話調・T書庫シリーズ】
__幕間
ここに一冊の本がある。タイトルは掠れてしまっている。
それは、私たちにとっては物語であるかも謎らしい。
しかし、コレが残されているという事は彼は確かに存在していたのは確かだ。
そういう世界らしいからね。ココは。
さて、短いが少しばかり話に付き合って貰おうか。
弟よ。ココの書庫は蔵書がいっぱいで私はとてもわくわくしている。
どうせ少ししたら存在が曖昧になって私たちは消えてしまうらしいからね。
ちょっと位、盗み見たところで罰は当たらないだろう。
それではDr.Tの読み語りの始まり始まり。
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ある村に青年が居りました。青年は年老いた父と2人で農作の仕事をして村で過ごしていました。
ある日、村に干ばつによる飢餓がやってきました。作物は枯れ、育たなくなり。村から人が1人、また1人と居なくなりました。そして青年の父も例外ではなく。一人残された青年は何とか食料を作ろうと頑張りました。
水を引く為に枯れ木ばかりの森に入り湧き水を探す日々、村の為に頑張っていた青年はある日、村に帰ると村人から盛大な出迎えを受けました。
村人達は飢餓の全てを青年に責任を押し付けて祀り上げる事にしたのです。
彼は村人達から誹りを受け、拳を受け、動けなくなった彼を村人は枯れ木の森に捨てました。
彼は動かなくなった手足に呻き声を上げつつ這いずり水を求めました。彼はずっと探すのを止めませんでした。そして気が遠くなる程の時間が経ちました。彼は意識も既に保ててませんでした。
しかし、彼は確かに辿り着きました。湧き水が生かした花園へと。
彼は自分の顔をくすぐった何かで眼を覚ましました。彼は手も、足も、既に動かなくなってしまってました。彼は周りを見るとそこは色とりどりの花が咲いた花畑でした。
近くで水のせせらぎが聞こえ葉の擦り合う音を聞きながら彼は眠りにつきました。
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何十年が経ち、花畑は彼のお陰で綺麗な光景を保っていました。避難しに来た動物達を迎え入れ。さながら動物たちの楽園とも言える場所になっていました。
彼はアレから花畑の中心に居を構え、花畑の主となりこの光景を維持する事に注力していました。
土壌を癒し、動物たちと過ごしているある日、1人の少女が迷い込んできます。
彼は偶に来る彼女とお話しました。この花畑から出る事の無くなった彼は彼女の話が新鮮で楽しい時間でした。
「今日はね。とっても素敵な事があったの」
「ここは綺麗な場所で良い匂いで落ち着くね」
そうして日々が過ぎて行ったある日。彼女が花畑に来なくなった。
彼は待った。花畑を維持しながら。一月が経ち二月が経った。
彼女が花畑に連れてこられた。意識は無く手足を縛られた状態で。
連れて来たのは彼女と仲良くなっていた動物たち。彼の元へ彼女を運んだあとは花畑から去っていった。
彼はどうにか彼女を助けようと手を尽くした。
しかし、植物の事以外に関しては文字通り手も足も出ない。
彼は、神に頼んだ。自分はどうなっても良いから彼女を助けてくれと。
その時、天から白い光が奔った。
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彼女は眼を覚ました。手足を縛られていた状態だった筈だが縄は千切れて地面に落ちていた。
彼女は自身の身体に痛みを覚える。見ると服が大型の獣に引き裂かれた様になっている。
周りを見ると彼女の良く知っている風景だった。花畑に居た。どうしてここに居るのだろうと、不思議そうな顔をする彼女。凭れ掛かった大樹を見て彼女は驚いた様な顔をした。
そこには半分に引き裂かれた大樹があった。天辺から地面まで縦に割かれている大樹の姿に彼女は泣きそうな顔をした。
__終幕
さて、この物語の主人公の青年はどうやら。森の怒りを買ったせいで飢饉が起きたと難癖をつけられて人身御供とされてしまったようだ。
そして彼女も森に日常的に入っていたことから青年と同じ道を辿ったのでは無いかと推測される。
ここで問題になってくるのは、その青年だ。彼女を助けたのは一体……否、解る。それは奇跡だったのだろう。それだけは解る。
果たして彼は何処に消えたのか。否、この物語としては大樹が彼であったのだ。何故なら文字通り手も足も無いのだから。恐らく彼は花畑に辿り着いた最初の時点で亡くなっていたのだろう。それを大樹が意思を継いだのか。そう言えば、人の身体は植物にとっては極上の肥料となるらしい。最後に見た花園は彼の幻想で時が経つうちにその光景を彼という肥料が花畑を作ったとするのは穿ち過ぎか。
ここは素直に彼は大樹となって自分の周囲の花畑を守っていたという事にしておこう。
彼女が花畑を継いだのかは書かれてないし別の話だろう。
話が長かったか?弟よ。眠いのなら寝ても良いんだぞ?
む、タイトル?そうだな。それが良い。花畑の主。それがこの物語のタイトルだ。
シリーズと銘打ってありますが一頁完結型です。
何処からでも読めるし、ただのお話です。
気分が向いたら増やされます。