僕らの両端、西東。
これまた独特。どうぞ、暇な時にでも。
ただ、春が少しだけ、遅かっただけなんだよね。ねえ、君。少しだけ、僕が弱かっただけなんだよね。
「それはありえない。」
そう君は言った。僕は、深く息を出した。タイミングは今しかない、と思ったんだ。今じゃなきゃって、思ったんだ。告白なんて、生まれて初めてだったから。君さえ良ければ、それはもう、確信した答えで。その答えが、君の都合が悪かっただけの話。おそらく、僕の顔は、上手くなかったな。
「アンタと付き合うなら、死んだほうがマシ。」
それは困る。君に死なれちゃ困る。ここ何年も、君を暖かく、そりゃあ暖かく見守ってきたんだ。くるくると、長い髪を指に絡ませて、鬱陶しそうに、下を向く。その指になりたい。そんな欲求を抑えて、僕は走った。
君に死なれるのを恐れた僕の、とっておきのアイディア。僕の右手は西を、左手は東を。両手を合わせれば、僕はここに居る。
がたん、がたん。と、僕は線路の上。嗚呼、お母さん。莫大なお金は許して。近所の目も、気にしないでね。迷惑は承知の上だよ。君は大きく手招きして、どうしたの。今更、僕に戻ってきてほしいのかな。でも、これじゃあ格好が付かない。最後まで見ていて。
一度、本で読んだ事があるんだけど、電車に突っ込むのが、一番血が出る死に方らしい。君にまで、届くといいなあ。今、遮断機の向こう側にいる君に。
「ありがとう、僕と喋ってくれて。」
君の記憶に残れば本望なんだ。別にこれしか手段が無い訳じゃないけど。手っ取り早い。
振り向けば、遠くのほうから、鉄製の殺戮マシン。多くの人を乗せて、一人の上を通り過ぎようとしている。ライトで僕の目が眩んだ。前を向けば、君は膝立ち。春風で、一度だけ、ひらり君のパンツが見えた。かわいい。最後まで可愛いよ、君。
存分に後悔してよ、僕を振った君が悪いんだ。そう、見せ付けるように、僕は笑った。
読んでいただき、ありがとうございます。少しでも、暇つぶしになれば。