2 魔法なんだよね?どういうこと?ー認識
ほぼほぼ説明回です。
そーいえば、お父さんの名前もまだだったなあ・・・。
今日は休日扱いなので朝食はやや遅め。日本だとは八時過ぎくらいかな。
朝食は広い晩餐室ではなく、普段使いのこじんまりとした家族用の食堂でとる。
すぐに料理が運ばれて来た。
塩味のパンケーキにプレーンオムレツ。しぼりたての山羊のミルク入り青菜のスープ、キュリスのピクルス。塩とハーブがかかったマッシュポテト。デザートにもなるベルベリーの実。
朝ご飯は、ほぼ毎日同じものが出る。季節によって果物や野菜が変わるくらい。
基本、塩味とハーブで味付け。
パンケーキは小麦がメインだが雑穀でいろいろ入っている。
歯触りが楽しい。
卵もミルクも、果物も青菜も取りたてなのだ。美味しいに決まってる!
しっかり自分の分を完食し、最後に「感謝を」と両手を合わせて言う。
ちなみに「感謝を」は、食事の最初と最後に言う。
与えられたものに感謝を。いただいたものに感謝を。
わかりやすく簡潔なお祈りである。
(やはり短いのがいいわよね!!)
とリーシアはこの言葉がお気に入りである。お腹が空いているときに長ったらしいお祈りなど、うっとおしいだけである。校長先生の長い話並みに要らないわ~。と思う。
(要点を簡潔に。大事大事。)
今現在、この体は五歳の幼女だが、精神年齢としては19才+5才で24才である。
前世が地球の日本で19才で終わっていて、その記憶もあるからだ。
(異世界に転生かあ。。。。。でも別に神様には会ってないし、召喚されたわけでもないし、ふっつうに、死んで、目が覚めたら赤ちゃんだったんだよねー。)
そして体に引きずられて心が子どもに近くなっているのは、自覚している。
(お父さまもお母さまも大好き!!)という感じで。
「リーシア、父さまと一緒に、書斎に行こう。」
先に食べ終わっていた父が手を差し伸べる。
「はーい!」
と元気よくお返事して、リーシアは父の手に自分の手を重ねた。
小さいながらもこの館は2階建てだ。それに屋根裏部屋と地下室もあるから、実質は4階層になっている。1階は公的にも使われる大きな部屋がメインで、玄関ホール、食堂、応接室、晩餐室、サロンなどがある。大きな浴室と、洗濯室、それに厨房と控室。控室はみんなの休憩室だ。賄いのご飯もここで食べられる。リーシアはたまにここでおやつをもらっていた。普段は家族用の2階の居間でもらうのだが。
父と手をつないでゆっくり階段を上る。父の書斎も家族それぞれの部屋も2階にあった。階段から一番奥が父の寝室で、その手前が父の書斎だ。書斎には小部屋がついていて、こちらは書庫になっていた。おもに領地の資料とこれまでの記録が大事に置かれている。滅多に入れない父の書斎は、もの珍しく、リーシアはキョロキョロと部屋を見まわしてしまう。
(うわあ、本棚ぎっしり!!魔法の本もあるのかな~。子ども向けの絵本はもらったけど、というか、借りているけど)
こちらでは本は貴重品で、子ども用の絵本はそのまま学習本であり家族親戚で使い回すのが当たり前だった。今、リーシアの部屋にあるのは、母と叔母が使ったという絵本で、いずれは母方の従兄弟に渡す予定になっている。その次は、今年生まれたばかりの弟に渡るのだろう。
「リーシア、ここに座って、さあ、いい子だ」
ちょこん、と執務机に相対するように置かれているソファに腰かける。その前に立って、父はポケットから先ほどの巾着を取り出し、目線を合わせるために跪いた。
袋を開ければ、中にあるコヤの実が見える。それは、採って来た時の黄色ではなく、すでに茶色になっていた。
「リーシア、先ほど、この実をわたしに見せてくれた時、何を考えたか、覚えているかい?」
「・・・うん、早く、今日にでも茶色くなればいいのに、って、思ったよ、父さま」
「・・・そうか。」
それきり、父は黙ってコヤの実を見ていた。
リーシアも、何も言わなかった。おそらく、その時の光は魔力と魔法の光で、魔法が発動したのだろう。結果を見れば時を早める類の魔法だ。それくらいは推察できるが、それがこの世界において、そしてこの家において、どんな意味を持つのか、それは今のリーシアにはわからない。
魔法がある世界なのは知っていた。実際、両親もこの家の使用人たちも、小さな魔法を良く使う。父に至っては、国公認の魔法使いで、魔法庁に勤めている上級魔導士だ。普段は王都に居て、王城に出仕している。休みの日になると、転移陣を使って領地に帰ってくる。そしてまた、出勤日になると転移陣から王都に戻るのだ。
それに、小さいころから魔法についての話は聞いていた。自分が風と水の魔法が使えるだろうことは、すでにわかっていて、それは両親から教えられていて練習も始めている。他にも火の魔法、土の魔法、植物の魔法、それに身体魔法、などがあると聞いている。しかし、時の魔法については、聞いたことがないのだ。
(あれ?でもこれは植物の魔法かな?どっちだろ?)
「リーシア。」
おもむろに父が顔を上げて、至極まじめな顔で、リーシアをじっと見つめた。
「はい、父さま。」
何ですか?と聞く代わりに首を傾げて見せる。
「君が使ったのは、時の魔法だ。おそらく、君は時空間魔法が使えるんだろう。」
固い声で父が言った。
「時、空間、魔法?」
「そうだ。父さまが使えるのは、亜空間魔法だ。これは、割と広く知られている魔法で、そうだな、魔法使いの内、100人に1人くらいは、使える者がいる。」
(えーーーと?それはそれでレアだよね?100人に1人。魔法使いの内の、100人に1人、だよね?)
魔法の適性がある者は、約10人に1人。マッチくらいの火をつけるとか、豆電球くらいの光の玉を作るとかができる者。そして、職業として魔法使いになれるだけの魔力と魔法適性がある者は、その中の100人に1人、さらにその魔法使いの中の100人に1人、とくれば、立派にレアな才能である。単純計算で、10万人に1人の才能である。
「時空間魔法は、亜空間と時間の両方を使える、かなり特殊な魔法だ。滅多に使える者はおらず、父さまが知っているのは、父さまのご先祖様に当たる方、ただお一人だ。それも何代も前の方で、生きている人には会ったことがない。それくらい、珍しくて貴重な魔法なんだ。」
「・・・えーと、ほんとに?植物の魔法じゃなくて?」
さらに首を傾げて、リーシアは確認を取る。
「植物の魔法なら、植物そのものが光る。でも、さっきのは、リーシアの手が光って、、そこから生まれた光が、この実に吸収されただろう?」
「・・・うん。よくわからなかったけど・・・」
よしよしと頭を撫でられた。
「そうか、よくわからなかったか。・・・だが、わたしの目にはそう見えたし、実際、魔力と魔法の追跡をしてみれば、そうだったことがよくわかったよ。植物から発生したのではなく、リーシアから発生している。」
通常、植物の魔法は、魔法使いの魔法が引き金になって植物の中の魔力を引き出していくものだ。
だが、先ほどの魔法は、リーシアの魔力が植物そのものに影響を与え、変えてしまった。
「リーシア、今日のお出かけは中止だ。父さまは連絡もあるから、一応、、顔出しはしてくるが、挨拶だけで帰ってくるから。リーシアはお家で留守番していなさい。」
「え!?どうして!!」
「言ったろう?時空間魔法は、とても貴重な魔法だと。リーシアがその使い手だと知られたら、大変なことになる。この家で、父さまと母さまと一緒に暮らしていたいなら、今日のお出かけは諦めなさい。」
至極、真剣な顔で宣告された。
(あうう。。。。。すっごく楽しみにしてたのに・・・。それに、そんなにオオゴトなの?これって。親から引き離されちゃうくらいに?)
「よくわかんないけど、父さまと母さまと一緒にいたいから、お留守番してる・・・」
泣きべそになってしまった。だって、この一カ月、ずっと楽しみにしてきたのだ。それが当日になってダメになってしまうなんて。それも自分がやったことが原因で。
ぐずぐずと鼻を鳴らしている娘を見て、父親もさすがに可哀想だと思ったらしい。
「たぶん、お土産はもらえるだろう。楽しみに待ってなさい。」
「・・・はい・・・」
そうして、リーシアは父が転移陣から出かけるのを、母と一緒に見送った。
転移陣の説明はまた後程。
次回はお母さんとのお話かなー。




