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俺は人殺しに、JSは涅槃に


「なんかデートみたいだね。あ、明石くんは彼女とかいなかったの? 私に付き合っちゃって大丈夫だった?」

「…今はいない。もうつくる気もない」

「まじ!? えっ私知ってる人?………あ、ごめんもう聞かないから」

 コミュ力の高さなんだろうな。相手の機嫌が本当に悪いときに、それを察してすぐに引くことができる。


 俺が殺したい程恨んでいるあいつ――高梨との委細について、俺は一生誰にも話さないと決めている。思い出したくもない。

 木崎にいらんこと言ったのは、純粋に気の迷いだった。うん。

 悪いことしたな。次からのループでは気をつけよう。


「なんか悪い。あとそこ三歩下がって」

「別にいいよ。いち、に、さん。…おぉ。なんか楽しくなってくるね」


 いくつか車をやり過ごしながら進んでいく。


 そろそろ…いた。もう少し近付いてと。


「悪いちょっとトイレ行ってくる」

「あ、うん。いってらっしゃい。…あれ? 私大丈夫?」

 うん、多分死ぬぜ?


 数メートル離れて見ていたが、木崎は五分と持たずに轢かれて死んだ。


 残念ながら高梨は無事だった。


 まあ、気長に行こうか。



――――――――――――――――



 もう数百回か、もしかしたら千回を越えているかもしれないループで。


 ついに。ついにだ!



 高梨が死んだ!



 暴走車に轢かれて。木崎も合わせて十二人死傷の大事故だった。


 いやあここまで実に長かった。



 事故でも災害でも、俺と木崎が近すぎると大した規模にならない。高橋を巻き込むためには、木崎を高梨の近くへ連れて行き、さらに俺が木崎から十分な距離を取る必要がある。

 しかし木崎を目的地まで連れて行ってから慌てて離れても、距離が十分空く前に木崎は死ぬ。

 俺が離れきる時間を稼ぐため、木崎に予め指示を出しておく必要があった。


 予め指示を出す。言葉にすれば簡単なんだが。


 俺と木崎の距離によってイベントは変化する。

 つまり、木崎との距離とイベントを紐付けて把握し、そのうえで対抗策を考える必要がある。

 しかも木崎の死に様を自分の目で確認しながら進んだこれまでとは違い、人伝に状況を把握しなければならない。これが実に手間だった。


 一つのイベントの対策を練るために数ループ費やし、数十ループ費やしてなんとか複数のイベントを乗り越えた果てに、結局八方塞がりとなり一からやり直す、ということを何度も繰り返した。


 そして。ついに成し遂げた。



 やりきった顔で校門前へと赴いた俺を、あれ以来涅槃像と化した女の子が迎える。



 ん?


 …。


 ………。


 ……………。


 何で俺はここに来た?


 もう終わった。ループは必要ない。女の子に会う必要もない。直接家に帰ってしまえば良い。のに。なのに。



「お兄ちゃんは優しいんだよ」



 固まった俺に向かって、女の子は手を差し伸べた。



 俺は。


 その手を…



――――――――――――――――――




後ろ暗いところがあると、人が良くなる不思議。

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