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JSに慣れてもヒーローにはなれない、ならない

時々主人公のテンションが分からんくなる。

気がつくと、僕がヒーローさ! みたいなことになってたり。難しいです。


 あんなに怖かったJSだが14回目ともなると流石に慣れた。流れるような動きで手を差し出す。


「ありがとう。お兄ちゃん優しいね!」


 マストなのはこの台詞なんじゃないか。多分。



 色々と試した。女の子は何がなんでも俺に手を差し出させようとする。恐らくループの起点はこの子を助けることで間違いない。



 バンが突っ込んではいおしまい。



―――――――――――――――――



 例えば帰る時間をずらしても、校門から走って飛び出しても、俺の行動などすべて分かりきっていると言わんばかりに女の子は最適のタイミングで転ぶ。

 この通り、毎回寸分違わぬフォームで。


 女の子が転ぶ映像を切り取って、他の映像にCGで何度もコピペするように。


 現れたあとは実に生き生きと俺にけしかける。

 つまり、なんというか。

 女の子も、俺に会うところまではループの強制力にあるんじゃないかな。



 女の子を助けて、

 俺は優しいらしくて、

 クラスメイトはほっといて、

 潰れた死体を横目で流して帰路につく。

 終わり。



――――――――――――――――――



 毎回、女の子はお礼を言うと一目散に走り去っていく。

 手を差し出した後ではまともな会話はできない。

 となると必然的に。


 泣き喚くJSの隣にあぐらをかいて話しかけようとする男子高校生という絵面が出来上がる。


 …イヤホンしてないんだ。聞こえてるって。うん怪しいよね俺。どう見ても変質者なのは分かるから。通報だけは勘弁してくれ。



「えぇと…俺はどうすれば良い?」

「うわあぁぁあん! おぉかぁさあぁぁん!」


 答えてくれ! お母さんを呼ぶな! いやむしろ呼べ親の顔が見てみたい。

 しかしこうなっては仕方がない。強硬手段だ。


「…んじゃ、俺行くわ」スタンダップアンドゴー俺。

「分かるでしょ?」最初から普通に会話してくれ。

「木崎か?」毎回潰れるクラスメイトです。名前ぐらいは知ってた。

「………」いや答えろよ。


 俺も無言で手を差し出して。起き上がってお礼を言って去っていった。


 あの沈黙は果たして肯定なのか否定なのか。

 最近の若い子ってのはさっぱり分からんね。



――――――――――――――――――――



 とりあえず肯定だったとして。



 ぶっちゃけめんどくさいな。やる気出らん。



 木崎桜子はウェーイな人種だ。ギャルではないが。仲間内だけではなく誰に対しても明るく楽しく接することができる。

 言うまでもなくクラスでのカーストは最上位。


 つまり俺の苦手なタイプ。

 あまり接触したくない奴。



 友人も敵もなく、ただ変化のない日常を謳歌したいんだ俺は。あんなのに関わったら世界が青春の輝きに満ちてしまう。

 眩しくて失明しちゃう。



 だから。


 こんな風に潰れてくれてたって俺は一向に構わんのだ。


 信号が青になった。帰ろ。

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